- 目次
- オープンソースを活用する
- オープンソースの多くは無保証
- オープンソースで基幹業務のコストを削減
- オープンソースで基幹業務のリスクを削減
- ベンダーにロックされない自由なカスタマイズ
- オープンソースによるシステム監視
- 今後の展望について
近年、日本においてオープンソースツールの基幹業務への導入、または導入を検討している企業が増えています。オープンソースツールを利用する上でユーザが最も期待する効果は、ライセンス費用がかからない「コストダウン」といえますが、どのようなオープンソースツールを、どう組み合わせれば、安心かつ安全にコストダウンを実現できるのでしょうか。
オープンソースを活用する
昨今、Webアプリケーションサーバ、データベース、開発フレームワーク、PDF生成、帳票ツール、グラフ生成、Excel生成など、様々な開発ツールがオープンソースで提供されています。オープンソースの活用により、世界中の優れた技術者の成果をベースにアプリケーション開発をスタートさせることができ、多くのオープンソースソフトウェアを組み合わせたり再利用したりすることで、ソフトウェア開発の生産性を高めることにもつながります。ベンダーが提供するソフトウェアに比べ、意見やアイディアを交換したり、拡張を試したりするなど、自由で柔軟なソフトウェア開発が活発に行われています。
オープンソースの多くは無保証
オープンソースは、ベンダーが提供するプロプラエタリ(※ソフトウェアの使用、改変、複製を制限しているもの)なソフトウェアと異なり、無保証であり、サポートサービスは提供されていません。
このため、ドキュメントやトラブル解決策をインターネット上で検索したり、他のユーザからのボランティア的なアドバイスを頼りにしなければなりません。オープンソースは、海外で開発されているケースがほとんどのため、英語ドキュメントへの取り組みは必要不可欠です。また、技術力次第では、提供されているソースコードを独自に解析し、トラブルの解決を図る手段も考えられます。
■オープンソース活用のメリット
・世界中の技術者が開発した数多くのソフトウェア資産を利用できる
・ソースコードが提供されており、技術力次第ではソフトウェアの改良が可能
・使用料が比較的安く、無償のソフトウェアも多い
・多くの人に利用されているソフトウェアについては、インターネット上に多くの情報が存在している
■オープンソース活用のメリット
・ソフトウェア自体無保証である
・一般的には、メーカーや提供者によるサポートサービスがない(一部の企業が特定のオープンソースに対し有料によるサポートサービスを提供している場合もあり)
・利用した場合、トラブル解決を自己責任において解決する必要がある
・海外で開発されているソフトウェアの場合、日本語による情報が少ない(英語のみケースがほとんど)
オープンソースで基幹業務のコストを削減
近年、基幹業務に対してもコスト削減への関心が高まってきています。その理由としては、クラウド活用を含めてITシステム構築の選択肢が広がってきたことや、特定のベンダーにロックインされているITシステムのライフサイクル視点での維持コスト、移行コストの高さが指摘されるようになってきたことが挙げられます。例えば、情報系システムから進んだクラウド化は、昨今では基幹業務システムへの導入と活用事例も見かけるようになりました。大量のデータ処理やバッチ処理をクラウドに負荷分散させることにより高速化し、基幹業務処理を効率化していく流れは、今後加速していくと考えられます(図1参照)。
市場シェアが高いITシステムやITサービスであっても、標準化対応がされていない場合や、データ入出力インタフェースやAPI(アプリケーションインタフェース)が公開されていない場合、プロダクトやサービスの開発ベンダーに依存してしまう状態になります。このような状態においては製品選択の余地がなくなるため、高価なプロダクトやITサービスであっても継続的に導入せざるを得なくなり、一層ベンダーへの依存度が高くなるという負のスパイラルが発生していくことになります。情報系、基幹系問わずITシステムに対するライフサイクル視点でのコストとリスクの見直しが行われ、問題を解決する手段として注目を集めているのが、オープンソース技術の活用です。
オープンソースで基幹業務のリスクを削減
オープンソースを活用する目的は、「ライセンス料が無償であることでコスト削減につながる」と捉えがちですが、オープンソースの利用自体は無償であっても、オープンソースを利用したシステムの開発には当然開発コストが発生し、その後のシステムのメンテナンスや、オープンソースをサポートするベンダーの支援が必要となります。
オープンソース活用によるコスト削減は、導入、維持、移行などITシステムのライフサイクル全体において実現します。昨今では、オープンソースによる様々なITシステム製品が普及しているので、ITシステム全体を高価なスイートプロダクトやERP製品で構築するのではなく、オープンソースシステムを部分的に適用することによって、ITシステム全体の機能を損なうことなく総コストを削減することができます。
オープンソースは、多くの開発者がシステム構築で培った知識やノウハウをWebを通じて共有しており、新たな機能向上や障害対応にかかる時間を大幅に短縮することができることも特長となります(図2参照)。
ベンダーにロックされない自由なカスタマイズ
さらにオープンソースのメリットとして、ユーザが自らの需要に沿った自由なカスタマイズを行うことができるという点があります。不要な機能の追加やバージョンアップによる仕様の変更、突然のサポート中止などといったベンダーの都合に振り回されることなくソフトウェアを使用できることは、システム管理者にとって大きなメリットであり、リスクヘッジになります。自社カスタマイズといえども、1から開発するシステムとは異なり、多くの開発者による実績のフィードバックや利用に基づく信頼性があるため、堅牢さと柔軟さを併せ持っているといえます。
ただし、オープンソースの活用にあたっては、オープンソースの仕様を正しく理解している技術者や継続的に改版されるドキュメントのフォロー、問題、トラブルに速やかに対応できる人員の育成も重要です。また、システム全体から細部まで正確に把握、理解している管理者の存在も不可欠です。
オープンソースによるシステム監視
ITシステム運用の領域において、特にオープンソースの利用が進んでいるのは、サーバやネットワークなどのシステム監視の分野です。システム監視用のオープンソースツールは、個別のカスタマイズを加えなくても十分な監視業務が行えるレベルのものが多くあります。死活監視や性能監視、プロセス(サービス)監視といった一般的な機能がオープンソースで実現可能なため、国内の企業でも導入・利用を積極的に行う企業が増えています。
著名なものとしてNagiosやZabbixがあり、特にZabbixは、既に日本語化されていて、画面から各種設定を行うことができるなど扱いやすく、データの収集はもちろん、アラートの送信、監視データの保存やグラフ化など基本的な機能を網羅しており、企業での採用検討も多く聞かれるなど、注目を集めています。
今後の展望について
現在、ユーザは、機能が豊富であることやスイート製品のように選択が容易となることだけでなく、投資効果から勘案したコストシステムのライフサイクルといった長期視点に着眼して製品採用を行う傾向が強くなりました。また、ユーザ部門のITリテラシーが高まっていることから、メーカーやSIerへの一括発注ではなく、サブシステムやアプリケーションなどのシステム単位の最適コストでの組み合わせ(ベスト・オブ・ブリード)により製品採用を行う傾向も増えています。
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