知ってて損をしないIT業界の契約

第7回 使用許諾契約締結の確認点

概要

ITという言葉が使われるようになったのはここ10年来でしょうか。ITに関わる法整備は遅れているのが現実です。現在のITに関わる契約の現場からの情報提供 いたします。

前回までは、プログラムの契約面での特性や傾向を述べさせていただきました。
今回は、パッケージプロダクトの使用許諾契約書に記載される事項の締結にあたっての確認点を記載いたします。

前回までのおさらいになりますが、パッケージプロダクトは、不特定多数のユーザのために作られており、汎用性のあるものです。従いまして、その使用許諾契約書においても、多くは使用許諾者側の立場で条件が設定されます。これは、ソフトウェアの性格上、契約条件も汎用的に、不特定多数のユーザに同一条件で設定しなければならないからです。

以下、パッケージプロダクトの使用許諾に関する確認点と注意事項を示します。

<使用許諾契約書における確認点>

ソフトウェアの使用できる範囲(国内外、業務範囲等)
保守契約の有無
新バージョンへの対応
著作権侵害等知的財産の侵害
保証責任の範囲
機密保持関連

確認点のうち、1、2は、ユーザの使用目的において注意すれば問題ないかと思います。
3に関しては、以下のような考え方がありますので使用目的にあわせて選定するべきでしょう。

バージョンフィックス(俗に言う「売り切り」)
新バージョンのリリース時に提供
バグフィックス版のみ提供
b、cは、2の保守契約で規定されることが多くなっています。
4の知的財産権については、使用許諾契約書で著作権を侵害していないことは殆どの場合、保証されていますが、保証特許権等の工業所有権の侵害がないことの保証は、まだ十分にされていないのが現実です。これは工業所有権は国別に申請が必要であり、権利を侵害していないことを保証するためには調査にベンダーに大きな負担が発生するからです。
5の保証責任の範囲は、ベンダ側の会社規模やパッケージプロダクトの種類にもより様々です。しかしながら、大部分のベンダでパッケージプロダクトの性格から、パッケージプロダクトの使用にあたって、ユーザの使用目的に合致する(目的適合性)とは限らないことを規定しているのが殆どです。これは、パッケージプロダクトを選定する段階で認識している必要があるでしょう。
6の秘密保持関連は、昨今の個人情報保護法施行等で、話題になっておりますので殆どのベンダで詳しく規定しております。ユーザ側のコンプライアンスプログラムとの比較を必ず実施することをお勧めいたします。

以上のように、確認点を挙げましたが、現実に締結する際には自社のコンプライアンスプログラムとよく照らし合わせるとともに、パッケージプロダクトという性格をよく理解して契約することをお勧めいたします。
システム開発やカスタマイズの請負契約における確認点は次回に述べさせていただきます。

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筆者紹介

株式会社ビーエスピーソリューションズ

総務部 西別府好美

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