ITシステム運用 サービスレベルの動向
昨今、ITシステム運用の中で、サービス品質の維持・向上の必要性が重要視されてきており、情報サービスの提供が、その利用者に対して適切に行われているのかどうかを客観的に捉える評価指標として、サービスレベルを取り入れる機運が高まっています。
日本国内においても、経済産業省が「情報システムに係る政府調達へのSLA導入ガイドライン」を、総務省が「公共ITにおけるアウトソーシングに関するガイドライン」を公表しています。
また、2004年10月には(社)電子情報技術産業協会(JEITA)から、「民間向けITシステムのSLAガイドライン」が公表され、同協会の内部にSLA/SLM専門委員会が設立されています。
情報システムの運用管理基準となっています、ITIL(IT Infrastructure Library)の普及促進を目的として活動している非営利団体であるitSMF JAPANでも、SLAに関する分科会活動が行われており、更にはJEITAと連携することにより、SLAガイドラインの整備および普及活動が促進されるものと思われます。
「民間向けITシステムのSLAガイドライン」策定の背景には、ITの役割・位置づけが、単なる効率化の道具から、ビジネス遂行上に必要不可欠な存在として捉え、ITサービスは「商品」であると考えています。ITサービスにおける品質や成果を定量的に把握、評価することが、ITサービス利用者と提供者の双方間で行えていないことからSLAガイドラインの策定に至っています。
SLAガイドラインの中では、サービスの利用者、提供者それぞれに以下のような現状であるとしています。
●サービス利用者の現状
現状の自己状況分析不足
期待と目標はあるが現実解がわからない
現状の技術レベルが不明
業界でのサービスレベルが分からない
●サービス提供者の現状
サービス提供者が乱立
多種多様なサービス形態が存在
サービス規模や能力/性能がバラバラ
混乱するサービス品質
ITシステム運用 SLA導入における期待効果
SLAの導入において、サービス提供者と提供者の間でITサービスの内容、範囲、提供状況を測定・分析可能な単位で明確に規定することで、目指すべき目標や守るべき期待値の達成状況を管理することが重要となります。これによりSLAは、コスト及びリスクとサービスレベルとのバランスを最適化するための道具として機能しますが、この最適化のポイントはSLAの継続的な改善(すなわちSLM:サービスレベル管理)の取り組みによって達成するもので、最初から最適解が明確になっている訳ではありません。
また、何をもって最適化とするかは、各企業の事業戦略や業務特性等によって異なりますが、SLAを導入することにより、例えばリスク回避が最重要であればコスト負担が大きくなっても、より高品質なサービスを利用するなど、コスト及びリスクとサービスレベルをコントロールすることが可能となります。
サービスレベルを最適化するにあたっては、評価指標として以下のような視点に立って、サービスレベルを考えていく必要があります。
サービス利用者に合ったサービス項目の設定になっているか
サービス項目ごとにサービスレベルが設定されているか
サービスの内容、品質に応じた適正コストでの提供になっているか
サービス利用者とサービス提供者間での信頼関係の構築になっているか
以上のように、SLA導入におけるサービスレベル設定ではコスト及びリスクを意識し、また企業の事業戦略や業務特性等によって異なることを充分に理解しておくことが必要です。
次回は、SLAの考え方について、以下の項目を整理します。
SLAに対する認識
SLA導入の目的
SLA導入
連載一覧
筆者紹介
株式会社ビーエスピーソリューションズ
ITサービスマネージメントグループ
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