概要
60歳手前のリタイヤ間際のオヤジが、ITコーディネーター資格に飽きたらず、どうして更なる難関資格である中小企業診断士の取得に取り組むことにしたのか。勉強の効果を上げるためにどんな工夫をしたのか、またモチベーションを保つために何をしたのか等など、私が経験した試行錯誤の連続を飾らずに、つたない文章ですが書かせていただきます。皆様にとって何か一つでも参考になることがあれば幸いです。
◆試験を受けるとしたら
結構大変な試験ですが、それでも、受験してみようと思われた方のために、考慮すると得することや、注意したほうが良いこと、心構えなど、私の経験を中心に、独断と偏見で書かせていただきます。受験しようと思わない方も、雰囲気など感じて頂ければ、ありがたいです。
1次試験
・科目免除
数年前から1次試験は、他の高度な資格を有していれば、科目免除(例えば、会計士や税理士資格を持っていれば「財務・会計」が免除。システムアナリストや技術士(情報)などの資格を持っていれば「経営情報システム」が免除など)が認められるようになりました。
免除と言われると、ラッキーと思われる方も居られるかも知れませんね。しかし、私は免除しないで受験した方が良いと思っています。その理由ですが、得意な科目は“得点源”になるからです。得意な科目で得点を稼げれば、平均点を押上げられますので、合格の可能性が高くなります。
私の場合ですと、「経営情報システム」を得点源と考えていました。今まで自分で実践してきた領域ですし、問題集や過去問の出来具合からも、受験前から80点以上を期待していました。結果は、ほぼ期待通り得点でき、他の科目の補填になりました。
因みに、1次試験の合格条件は、『7科目の平均が60点以上で、 40点未満の科目がないこと』(各科目の満点は100点)です。
・広い出題範囲
1次試験も2次試験も、合格ラインが60点と聞くと、そんなに高くないと思われる方も、居られるのではないでしょうか。やる前は私もそう思っていましたが、実際に自分で勉強を始めてみて、すぐに変わりました。平均60点というのは、高いハードルだと言えます。
1次試験の勉強をしてみての感想としては、出題範囲が”とに角広い”ということです。出題範囲は、中小診断協会のホームページや試験の案内書などで、公開されています。が、各科目の最後に「その他○○に関する事項」の一文があって、関連するもの(と出題者が判断すれば)なら何でも出題できるような記述になっています。実質的には”何でもあり”だと思っています。
事実、過去問などでも(類似のものを)見たことも無いような問題(難問)が、毎年必ずと言っていいほど出ています。
それに加えて、わざと難解な言い回しをしている問題、引っ掛けのような問題なども、毎年出ています。昨年(2008年)も幾つも出題されました。
1次試験(2次の記述試験も)は、“落とすための試験” と言われています。今後も、難問やイヤラシイ問題が出ると覚悟しておけば、出ても慌てる気持ちが、少なくなります。
(学校に行ってないので、推測ですが)診断士資格専門の各学校では、過去問や出題者の分析などから、受験対策として必要十分な範囲、つまりある程度絞って、出題される可能性が高い所を中心に、効率的に教えているようです(これが各学校のノウハウなのでしょう)。逆説的な言い方をすれば、いくら学校に行って勉強しても、出題範囲の全ては、学習できないとも言えます。
因みに、私は独学でしたが、1次用として、5校から発行されている市販の教材(テキストや問題集)を使っていました。学校によって、取り上げているポイントや深さが結構違います。複数の教材を使ったことで、勉強時間は余分に掛かったですが、より広い範囲の理解も深まり、自分としては良かったと思っています。それでも私の感覚としては、勉強できたのは、出題範囲の8割から9割程度ではないでしょうか。
・難易度
個人的な意見ですが、近年は少し難易度が高くなっているように感じます。
加えて、昨年(2008年)の試験では、それ以前と比べて、7科目全ての問題数が2割ほど増えました。問題数の増加は、インパクトが大きいです。時間配分が変わります。各科目の試験が始まり、問題・解答用紙が配られて、問題数が多いと分かった時は、少し焦る気持ちも出てきました。問題数が増えることは、まったくの想定外でした。
それでも、深呼吸をして「焦るな、落ち着け。問題を速く正確に読むこと、回答をキチンと書くことだけに集中しろ」と、何度も自分に言い聞かせました。何とか全科目こなせましたが、60分科目で、見直す余裕が少なくなりました。特に、財務・会計は、計算問題も増えたので、時間が一杯一杯でキツかったです。
今後については、昨年並の問題数(増加)となるかは不明ですが、多い問題数で時間配分をして、回答訓練をしたほうが良いでしょう。また、問題数が増える事を、大変だと考えるのではなく、知っている問題が出る可能性も増えると考えると、気持ちが楽になります。得点結果への影響は、どちらとも言えないのではないでしょうか。
・受験の心構え
受験の心構えとしては、『難問や、変な問題も出る。平均60点以上取れれば良い』と、開き直っておけば、見たこともない問題が出ても焦らずに済みます。
勉強した範囲(出題範囲の8割程度)の、その中で取れる問題を、どれだけ確実に得点できるかが、合否の分岐点になると思っています。60点以上を取るには、出題範囲の8割の80%を、正解する必要があるということです。
そのための必須条件は、緊張の中で集中し普段通りの力を出すことですが、これが一番な難しい事でもあります。試験は何度やっても緊張しますが、緊張するのは当たり前、他の受験者も緊張していると思っておけば、少しは気が楽になります。
1次試験は、試験の数日後に「中小企業診断協会のホームページ」上に、各問題の正解と点数割りが公表されます。
試験の問題用紙は持ち帰って良いので、自分でも合否が正式発表前に確認できます(問題用紙上で選んだ回答と、マークシートに書いた回答が同じ前提ですが)。
また、数日すると各学校からも、模範解答や解説が公開されます。
2次試験(記述試験)
2次試験は記述式です。4科目あり、それぞれの問題は、与件文と設問から構成されています。与件文や設問で、対象企業の背景や状況などが説明され、この企業の抱える問題点や原因の指摘、適切な解決策の提示などを、回答として求めるパターンが多かったです。勿論、財務・会計では、計算問題もあります。
80分という限られた時間内で、当該企業の置かれている状況などを、与件文や設問から読み取り、自分なりに理解し、全体ストーリーを組み立てて、科目全体を通して整合性のある解答として、まとめる力、文書化する力が問われます。
・厄介な2次試験
私は診断士試験の中で、この試験が一番厄介だと思っています。何が厄介かと言うと、まず問題、つまり与件文や設問が曖昧だということです。与件文は長文(設問が長文のものもあり)で、どうとでも解釈できるような記述で、何を解答して良いのか迷うところです。
また、解答のヒントや根拠、前提となりそうな重要な記述が、与件文や設問の端に、チョコッと書いてあったりします。全体を注意して読まないと回答を誤ります。意地悪です。
更に厄介にしているのは、殆んどの設問で字数制限(20字から200字程度)があるという事です。時間を意識しながら、科目全体と個別の設問に即した回答を、字数を意識しながら、論理立てて分かり易くまとめて、解答用紙に見やすい字で記述するのは、相当の訓練が必要です。一朝一夕には出来ません。
解答は
マス枠
に書かせるのが多いです。マス目はB5原稿用紙のマスの大きさ程度で、横20文字のマス枠です。100字だと5行(20×5)だということです。マスに1字ずつ見やすい字を意識して、それなりのスピードで書くのは、慣れないと余計な力が入ってしまって書きにくいです。
書きたいことが整理し切れないなどで、字数が多いと、字数制限内で収まりきらず、文章が完結しなくなります。そうなると未完の回答として、大きく減点されます。
反対に、文字数が少なく空白が多いと、これも減点になるそうです。
指定字数の90~95%以上
埋めないと、減点の対象になると言われています。その他にも、独特の制約・約束事が幾つもあります。
試験対策として、一番重要なことは、自分に合った時間配分を身に着けることです。私の時間配分は、①問題の理解(与件、設問の読み込み)15分、②全体ストーリー、設問間の関連の検討5~10分、③各設問への解答記述45~50分を目安にしていました。何度もやっている内に、この時間配分に落ち着いたという事です。自然に出来るまで、徹底的に繰返しました。
設問の数や与件の長さなどで、何時もこの通りに行くとは限りませんが、自分の標準的なパターンを、身につけておくことは大事です。
問題の読み方も重要です。私は、設問1回→与件2回→設問1回の順番で読みました。設問(求められていること)を先に読むほうが、与件から関連する部分を、ピックアップしやすいと思ったからです。与件の読み方は、1回目はザーッと全体を理解し、2回目は設問との関連を意識しながら、注意深く読みます。その次の設問の読みで、与件との関連(回答の根拠など)が、ほぼ掴めて来ます。与件を先に読む方法もやりましたが、このやり方に落ち着きました。
・書く力
2次の記述試験で大事なことは、当たり前のことですが、((肉体的な)手の書く力が必要だと言うことです。普段パソコンで文字を書いている私達にとっては、手で文字を書くと言うのは、思いのほか大変です。普段書いていないので、手の力が足りません。
近年は、少し回答の字数が減っていますが、それでも1科目600-800字程度、4科目で3,000字近く、書く必要があります。マス枠に1字ずつ読み易い字を書くというのは、想像以上に手が疲れます。勉強(訓練)を始めた当初は、書いている途中で手が動かなくなりました。1ヶ月くらいで、腱鞘炎になりかけました。
更に、困ったことは漢字が書けないという事です。読めるけど書けないことは、ある程度は覚悟していましたが、思ってた以上に漢字を忘れています。
何度も何度も繰返し、練習問題や過去問題をやっている内に、自分なりの回答の書き方や、使う文字(漢字)の範囲が段々と決まってきます。自分流の思考過程やまとめ方、書き方など、パターンが決まるまで、徹底的に書いて書いて、書きまくりました。1日やると、肉体(手、腕)も脳ミソも、へとへとになりますが、トコトンやりました。
2次の記述試験も
、“落とすための試験”と言われています。乱雑で読みにくい字では、採点者(出題者)に読んで貰えないそうです。読み易い字(読んで貰える字)で書くことが、内容と同じくらい重要になります。
・出題範囲
出題範囲は、組織(人事を含む)、マーケティング・流通、生産・技術、財務・会計、情報システムが中心となっています。ですが、昨年(2008年)は”法律”絡みの設問もありました。今後とも意表をつかれる問題が出るかも知れません。
財務・会計は、解答・計算根拠の記述が曖昧など、イヤラシイ科目です。近年特に、この傾向が見られます。今後も続くのではないでしょうか。
財務・会計は、2次試験でも、受験者によって点数の開きが大きい科目で、合格を左右する科目と言われています。経営分析などでの計算で余分な時間を取られないよう、十分に計算問題の訓練と、電卓の訓練をする必要があります。
・合格基準
公表されている合格基準は、『4科目の平均が60点以上で、40点未満の科目がないこと』だけで、その他の審査基準などは、一切公表されていません。
各科目とも問題数が少なく(大きな設問で4,5問)、1次試験と違って1問の重みが違います。配点の大きな設問を1,2問落とすと、致命傷になりかねません。内容以外でも書き方や、文字数など、細かな所で減点されるそうで、60点を取るのは並大抵ではありません。
また2次試験の結果は、1次試験と違って、中小企業診断協会からは
正解が公表されません
。12月上旬に、協会のホームページ上で、合格者が発表されるまで、事前の合否確認ができません。
不合格の場合
は、科目ごとの得点が通知されます。ただし、点数ではなくA~Dで表現されて来ます。”A”は60点以上、”B”は50点以上、”C”は40点以上、”D”は40点未満です。平均点が60点に満たない場合(点数ではないので正確には分からない)と、”D”が1つでもあれば、不合格ということになります。
合格した場合
は、合格の通知だけで、各科目の得点は通知されません。合格した瞬間は大喜びでしたが、自分の点数が通知されないので、少し変な落着かない気持ちでした。各科目で何点くらい取れたか、教えてほしかったと言うのが、正直なところです。
・正解は幾つもある?
2次試験の問題用紙も持ち帰れます。数週間すると各学校から、模範解答(参考解答と言っている学校が多いようです)や解説が公開されます。さすがに1次と違って、各学校での問題の解釈、模範回答を、何人もの講師で検討、作成するそうですが、時間が掛かるようです。
この模範解答ですが、学校によって結構バラバラです。まったく異なる解答で、その結論を導き出した根拠や思考過程も違うということも珍しくありません。
殆んどの学校で、財務・会計は、毎年イヤラシイ(意地悪)と言われています。私の経験でも、計算根拠が分からない設問があり、パニックになりかけました。学校の模範解答でも、与件や設問の理解、根拠の解釈などで、講師間でも相違があるのか、条件付きで回答を複数列記する学校もあります。
あくまでも推測ですが、どうも正解は1種類ではなく複数あるようです。多くの学校でも言われていますが、私の受験体験からもそう思います。まったく反対の解答でも、合格している人がいるのは、珍しくないそうです。
ですから、学校の模範解答が自分とまったく違っていても、ガックリする必要はありません。昨年(2008年)の私の回答も、幾つもの学校の模範解答と、違っている所が何箇所もあり、ダメかとも思いましたが、それでも合格しました。
大事なのは、各設問にバラバラに解答するのではなく、科目全体で整合性の取れた解答が大事だと、どの学校でも言われています。
・2次の筆記試験が終わったら
2次の筆記試験(10月中旬)から合格発表(12月上旬)までは、1ヵ月半ほど期間があります。試験が終わった後は、(結果はともあれ)心底から開放感を味わえます。
開放感に浸っていると(最初の年の私がそうでした)、あっという間に、試験中に考えたことや自分の解答を忘れてしまいます。試験中は解答用紙に、解答を書くだけで精一杯で、自分の解答を殆んどメモ出来なかったです。問題用紙に書いたのは、思考過程のキーワード程度でした。
やっと終わった試験をもう一度やるというのは、自分の不出来を見つける事にもなるので大変苦痛です。ですが、出来ればなるべく早く、記憶が鮮明なうちに筆記試験の再現解答を、作成しておくことをお勧めします。
試験当時の思考過程や回答を、再現することだけでなく、冷静になった今との問題の捉え方や思考の違いなどを、書き留めておくと、問題をより深く理解できます。面接の時にも参考になると思います。
2次試験(面接試験)
2次の記述試験の合否発表の1週間後に、面接試験が行われます。面接試験は一人10分程度で、記述試験の問題をベースに面接官から質問があり、それに答えるという形式です。
・結構きつい質問
記述試験の問題がベースとなっていますが、素直な質問ばかりではありません。何でもありと言っても過言ではないほど、色々な質問が来ます。
記述試験の与件や設問から、更に突っ込んだ質問や、記述試験とは別の見方の質問、ほとんど関係のない(業界などの)質問、診断士としての見解や意見を求められる事もあります。
臨機応変・即応能力が必要になりますが、緊張の中での、このような質問は結構きついです。
面接官も、資料(質問表か)を持っていて、幾つかの質問のパターンを、用意しているようでした。優しい面接をする人、強面の人など、面接官によっても、質問の仕方はかなり違うようです。
私の場合では、3名の面接官(優しそうでした)の内、2名が2つの科目から質問をし、1名は何かメモを取っていました(私の評価かもしれません)。標準的には、2つの科目から5、6問くらい質問があるようです(私は5問でした)。
想定範囲内の質問が幾つか続いた後に、予想外の質問が来て一瞬焦りました。とに角何か答えよう、黙らないようにしよう、と心掛けていましたので、質問に関連しそうな事を、捻り出して答えました。
面接試験は、解答の内容は二の次で、顧客とどう会話できるかを見るもの、コンサルとしての資質を問うものと言われています。黙り込むのは絶対ダメで、最悪の場合、不合格になる事もあるというのが、各学校の共通した認識のようです(ごく稀ですが、落ちている人もいます)。
10分間というのは、実際にやってみると結構長いです。回答が短くて時間が余ると、追加の質問が来ると言われていましたので、なるべく時間を使うように心掛けました。回答はポイントだけでなく、そう考えた理由なども含めて、丁寧にゆっくりと長く話すようにしました。1問につき1.5分くらい喋ることを目安にしました。
面接試験
は、1次試験、2次記述試験と違って、基本的には“落とす試験ではない”と言われていますが、それでもプレッシャーはかなりのものです。
・面接の準備
記述試験の合格発表から面接試験までは、1週間しかありません。合格発表を待っていては、面接試験の準備が間に合いません。合格したつもりで、早めに
面接の勉強・準備
を開始したほうが良いです。
先にも書きましたが、面接では、記述試験の問題をベースに、関連する質問がされますので、可能な限り即答できるようにしておく必要があります。
各学校から、面接試験の想定問答集(殆んど無料)などが出ますので、できる限り幾つも入手して、なるべく早く着手したほうが良いです。
私は、殆んど独学でしたが、模擬面接は、是非とも受けたいと思っていました。やってくれる学校を探して受けました(勿論有償です)。やってくれる学校は幾つかありますが、その学校の受講生が優先ですので、早めに空きを確認して申し込む必要があります。
本番と同等の環境(面接官3名、面接官と受験者の位置、時間など)で行われ、きつい質問もされます。面接後は面接官から評価やアドバイスがあります。面接の雰囲気に慣れるのと、受けたということで少しは気が楽になります。模擬面接は是非とも受けたほうが良いと思います。
余談ですが、私の面接試験は午後でした。午後の面接のほうが少し有利かもしれません。
と言うのは、ある学校では、本番の面接試験の待合場所で、午前中の受験者に面接の質問をメモに書かせて、待合場所で午後の受験者に公開しています。私は、その学校の受講生ではなかったですが、その学校の模擬面接を受けた時に、このことを聞いていたので、メモを見させてもらいました。お蔭で、面接での質問の傾向が分かりましたし、参考になった質問もありました。
次回は、勉強は独学で出来るか、学校は必要?と題して書かせていただく予定です。
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