ITシステム運用コンサルタント
沢田典夫氏
今年も残すところわずかとなり、早くも忘年会の話題を聞く時期になってきましたが、皆様、いかがお過ごしでしょうか?
日々運用作業に追われているとこういったイベントが、本音として煩わしくも感じる昨今です。特にIT部門にとってのゴールデンウィークや年末年始などは、システムや環境などの切り替えのタイミングなどとも重なり、出勤する方も多く、むしろ恒例で休めない時期だと諦めさえも感じられます。
さて、本題に戻りますが、第一回は運用方針、第二回は問題点を探るための現状ヒアリング事項に焦点を当てて話をしてきました。
第三回では、現状を把握した結果で問題点を明らかにし、洗い出した問題点より改善事項を整理するプロセスについて触れてみたいと思います。(当初予定していた「運用設計」は次回以降に掲載いたします)
問題点の把握
第二回で述べたように、現状の運用状況を把握したり問題点を探るためのヒアリングの分類としては以下のようなキーワードがあげられます。
大別すると人の作業やルール、標準化、ツール、環境、仕組み、媒体類などに分けることができます。
<ヒアリングの分類>
- 体制、役割
- 管理/作業
- 手続き/手順
- 引継ぎ
- ドキュメント、マニュアル、申請書式
- 標準化(開発/運用)
- ツール
- 仕組み
- システム
- トラブル
- 入力
- 処理
- 出力
- 媒体
- 帳票
- 設備
- 方針、方向性
- 感じる問題点
- 作業負荷の高い作業
- 改善したいこと
- 運用情報
- 運用設計
- バックアップ
- オペレーション
- ハード/ソフト環境
- 運用環境
- 業務環境
- 運用方式
- スキル、教育 など
運用部門の作業は,上記のような項目がいくつにも組み合わされ、長年の中で蓄積・改善されながら遂行されてきました。
運用部門は、トラブルを引き起こさないためにきちんと作業を実施するという意識が強く、またそれが責務であると認識しています。また、運用作業でトラブルを出さないように過去から取り決められたことを忘れることなく、環境が変化しても必死に守り続けてきました。
問題はこの運用作業に潜んでおり、環境やシステムが変わるたびに運用作業全体のバランスの見直しをすれば別ですが、多くは変わった部分だけに焦点が当てられ、それ以外の点についてはそのままのケースが多々見受けられます。
焦点が当たらない部分については置き去りにされるため、
- 日がたてばその作業がなんでやらなければならないのかがわからなくなる
- やる意味ややると決めた理由や目的すらわからない
- 結果的には過去からそうだったからを継承してきた
といった話になってしまいます。
これが、今日の運用作業の増加や問題点を潜在化させる原因になっています。
問題点を把握するために必要となる情報としては、ヒアリングするときに以下の情報(運用情報)と一緒に分析することでより問題点が明確になります。
<分析に必要な情報>
- 作業チェックシート
- 作業指示書
- トラブル報告
- 運用ルール/規定
- 運用タイムチャート
- 運用情報(時間帯別や日別、月別での稼動状況、帳票情報、媒体情報、I/O使用状況、リソース状況など)
- 運用マニュアルや管理ドキュメント など
-
見えない運用が一番の問題
運用業務を自動化やシステム化すればするほど動きがブラックボックス化され、長年の運用で内在・蓄積されてきます。
確かに人が介入することでミスを引き起こす要因は増えますが、かといって、全く人が介入しないでよい「コテコテ」の自動化の仕組みにしてしまうと、動きが全く分からなくなり、何か変える時には影響も関連もわからないまま手を加えるために、逆に大きなトラブルを生み出す原因にもなります。
システムは作られたものです。生き物です。
日々のデータ量やその時の処理の組み合わせやタイミングなどにより、様々な動きや変化、場合によってはトラブルにつながったりもします。
長年維持していくためにも、運用の仕組みや方式は「コテコテ」なものではなく、シンプルでわかりやすくすべきです。
また、継承していくためにも人がやるべきことと、システムで対応すべきことを明確に区分けすることが重要です。
そのためには、日別、月別、時間帯別、年間などでの稼動状況、帳票情報、媒体情報、I/O使用状況、リソース状況などを運用情報として日々管理(収集・蓄積・分析)することで、「見える運用」にしておくことをお勧めいたします。
それらの変化や動きを日々運用情報から読み取ることで、現状の把握、改善のポイント、予防保守、業務などの運用設計に必ず役立ちます。
運用情報を管理されてないお客様も多いのが現状ですが、そうしたお客様はきっとそれなりに問題点も多いはずです。
問題点の洗い出し
これらの情報や状態、また作業や操作などをヒアリングしながら以下のような視点で見ることによって問題が浮き上がってきます。
この洗い出しには特に専門知識や洗い出しのテクニックなどは必要ありません。
ただ、注意する点は、日常の作業として淡々とこなしている中で,なかなか内部の担当者では問題と気づいてはいないのケースがほとんどです。
問題点の洗い出し・分析のフェースででは第三者が行う方が客観的に指摘することができます。
浮き彫りにされた、あるいは指摘された問題点の多くは、きっと作業されてる方の大半が普段から以下のようなことを感じられているはずです。それが問題点であり、それを一部分だけでなく広範囲にどれだけ洗い出しできるかが改善実施効果の大小にもつながります。
<問題点の観点>
- 多い
- 必要性の有無
- 負荷
- 面倒、大変
- 時間がかかる
- 手間がかかる
- ミスやトラブルを発生しやす
- 曖昧
- 矛盾
- 非統一
- 属人化
- 判断・確認
- 頭での作業
- スキル継承方法
- 過去からそうだった など
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問題点と課題の整理
問題点を洗い出したり、その対策を考えることは、日ごろ改善を繰り返してきた皆さんなら簡単なことだと思います。しかし、改善しても効果がなかなか出ないとか、二度手間の対策をたてたり、別な問題にぶち当たったりした経験はないでしょうか?
問題点に対して一つの対策だけで済むような1:1ならいいのですが、運用での問題点は1:n(一つの問題に複数の対策が必要)やn:1(複数の問題に一つの対策で実施可能)、n:n(複数の問題と複数の対策が必要)などと、必要な対策が複雑になるケースがよくあります。
改善を繰り返してきたのに、改善効果がなかなか出ないとか、二度手間、他の同様な問題にぶち当たったりするのは、多くは複数の組み合わせのケースに起きます。
以下に整理の際のポイントをまとめます。
<整理のポイント>
- 問題点は局所的な洗い出しではなく、広範囲で
- 問題点に対して、整理しやすいように分類化
- 問題点に対して、その重要度、優先度、効果度補足
- 問題点に対してその課題を一つずつ検討
- 課題も整理しやすいように分類化
- 課題に対しては内容を大(改善テーマ)、中(対応策)、小(具体策)とする
- 課題に対して、工数、手間などを補足
- 各問題点と必要な課題をリンク付け
-
文章だけでは表現しにくくて分かりにくいかも知れませんが、大切なことは、洗い出した全ての問題点に対して、関連する必要な課題や対応策がどれだけ考えられ、問題と課題がリンクできるのかは経験力です。1:n、あるいはn:1、また、n:nなどの関連性もはっきりとし、後は優先度の高い問題に関連する課題より着手するだけです。
この問題と課題のまとめがしっかりできれば、改善効果も出せ、二度手間の対策もせず、同様な問題も必ず消去できるはずです。
サンプルとして、「問題点と課題の分析ワークシート」 を添付いたします。
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