概要
本連載では、IT部門の視点で「環境問題」を考えると題し、
① 環境問題の背景
② 環境問題とグリーンIT概要
③ グリーンITの取り組み事例
④ IT部門としての環境問題解決の重要ポイント
⑤ 設備環境管理の推進
を順次掲載する。
- 目次
- グリーンITでIT部門がなすべきことは?
- グリーンITの推進者は?
- 設備担当とIT担当の壁
- 設備環境管理をIT部門が担う
グリーンITでIT部門がなすべきことは?
前章までグリーンITの意義・必要性について事例を挙げて説明してきました。それを受けて、グリーンITを推進するために今IT部門がなすべきことは何なのでしょう。今回からはIT部門が実践すべきグリーンITの具体策について述べていきます。
グリーンITの推進者は?
“グリーンIT”と聞くと、仮想化技術によるサーバ統合・ストレージ統合などによる”電力消費の効率化”をイメージしがちですが、電力消費量削減に関して多くの人が見逃しているポイントは、実はサーバ以上に空調や電源系の設備が電力を消費しているという点なのです。
図表1. 某データセンターの消費電力例
環境省発表資料にもある通り、我が国に於ける温室効果ガスのほとんどを占めるCO2の排出増加率が最も高いのは「業務その他部門」、すなわち企業のオフィスです。
図表2. 部門別CO2排出量の推移(電力配分後)
原因がコンピュータ消費電力の増加であることは周知の事実でしょう。これはサーバルームやデータセンターだけでなく、もちろんPCを含んでいます。PCやサーバの普及と飛躍的な高性能化により、消費電力は増加の一途をたどっているのです。
図表3. サーバ高密度化の例
一方、本連載の第2回目でも挙げたように、改正省エネ法などにより企業の省エネ義務が厳しくなりつつあります。経営トップはECOの観点から、総務や営繕等に対策を指示するでしょう。しかし、総務・営繕が上記のようなITに係わる設備環境を適切な状態に管理できるのでしょうか?
設備担当とIT担当の壁
総務・営繕は設備について知っているかもしれませんがITについては詳しくないため、設備に対するIT部門の要求仕様はわかりません。そこで、IT部門へ依頼してきます。IT部門はPCやサーバのことはわかっても、電気・空調等は詳しくないため、実際、ITの要求仕様は総務・営繕からするとオーバースペックになりがちです。また、その根拠を総務・営繕に上手く説明できないため、よくトラブルの種となります。総務・営繕にITの要求仕様を理解して設備設計や管理をするよう依頼しても、ITは専門用語を駆使する業界であり、考え方も設備側とは異なるためなかなか受け入れられないのです。 設備は電気・空調等個々の専門分野に分かれています。これら設備の各分野は、当然、ITと用語・常識・運用方法等が異なる専門的な知識・技術があり、設備とITは互いに専門外なのです。そのため、両者の間の壁を乗り越え、設備を適切に管理するのは大変困難で、しばしば「自分の仕事ではない」と放置してしまいがちです。
設備環境管理をIT部門が担う
IT部門において、開発担当が「電気や空調は適切に管理されていて当たり前」という感覚を持っていても仕方ないですが、運用担当が同じではいけません。運用担当はオフィス内PCだけでなく、それ以上に重要なサーバルームの設備を守るという重要な責務を果たさなくてはならないからです。運用部門にはシステムを安定稼働させる任務があり、そのためにはITシステムの稼働環境、つまり設備環境をしっかり管理する義務があるのです。 全てを運用部門が担うのは負担が大きすぎます。運用部門は「ポイントを押さえれば良い」のであって、細かなことは設備担当や外注に依頼して構いません。重要なのは「何を、いつ、どのように」管理すべきかを知ることです。できればITに関わる設備は運用部門で要件定義し企画設計するべきですし、もし管理作業の主体が総務・営繕であっても、随時管理データを受け取って記録や管理方法が適切か評価・判断ができることが望ましいでしょう。システムと同様、設備も故障や陳腐化が起きます。そうならないために、設備環境管理をPDCAサイクルで上手に運用・カイゼンしていかなくてはならないのです。 また、システムをデータセンターに預けている場合も、何かあった時に「任せてありますから」では済みません。定期的に預け先の環境や管理状況を確認・評価することが必要です。
次回は設備環境管理についてご説明いたします。
株式会社ビーエスピーソリューションズ
「IT部門の環境管理」検討グループ
笠井 麻衣
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