前回までは、ベテランと呼ばれる人達が(定年)再雇用や転籍などで、私と同じような不安定な気持ちになる方が多いようでしたので、私の体験したことを書かせて頂きました。今回あたりからオヤジ奮闘記らしい内容になってくると思います。
資格取得の勉強をしようと決めたときに最初に考えたのは、どうすれば続けられるかでした。気持ちが高揚しているうちは良いですが、自分の気持ちが逃げないように(心に)フックを架けて置かないと、この意気込みも早晩萎む恐れがあります。かなりの期間続ける必要がありますので、背水の陣というのは大袈裟かもしれませんが、かなりの覚悟がいると思います。
自分の決心の固さ(覚悟)とともに、やり遂げるためには、明確な目的・目標を定めておく事も重要になります。「70歳まで働く。社会にお返しする」という目的(思い)の第一ステップとして、今回は「半年後に資格を取る」という短期的な目標を掲げました。さらに始める前に家族に「勉強して資格を取る」と宣言することにしました。家族との約束はそう簡単には破れません。
また、続けるための条件ですが、ある程度のお金は必要です。次に勉強時間の確保が必要ですので仕事と自分の時間のバランスを取ることも大事です。しかし、一番大事なのは、家族の協力です。家族サービスだけでなく、静かな環境など、家族の生活が制約される場合や協力が必要になりますので、家族の理解は必須です。
気持ちが高まっているうちに、勉強の準備に取り掛かることにしました。事前の調査で、ITコーディネーター協会のホームページに色々な情報があるのが分かっていました。教材や教育機関、教育カリキュラムなどが紹介されています。
まず始めに、教育機関(資格取得の学校)を中心に調べることにしました。それは学校に行く方が、確立されたカリキュラムで資格が取れる確率が高くなるでしょうし、勉強の仕方も教えてもらえるという期待もあったからです。しかし、いくつも教育機関(カリキュラム)が紹介されていますが、教育機関によって得意分野があるようで、一貫したカリキュラムを提供する学校は無かったです。一通りカリキュラムを受講しようとすると結構な金額になりました。
カリキュラムの繋がりが良くなかったこと、費用が高かったことが第一ですが、調べている内に(変な言い方ですが)自分がどれだけ頑張れるのか見てみたいという変な気持ちも出てきて、独学でやることにしました(結果的には難しい方の道を選んだかもしれません)。
教材は、ITコーディネーター協会のホームページに、一覧表とテキストの概要など記載されていますが、自分に合いそうなものが中々絞り込めませんでした。そうした時、ある会合でITコーディネーター(ITC)として独立されている方にお会いする機会があり、ITCのことや教材など色々話を聞けました。
そのITCの方の”お勧め教材”と、市販の資格取得の解説本「めざせ!ITコーディネーター」の中の”推薦教材”を勘案して、最初に8冊セットのテキストや参考書(経営などの入門書レベル)を購入しました。少し経ってから追加で(詳細なテキスト)16冊セットを購入しました。
最初のテキスト(8冊セット)や参考書では10数cm程度でしたが、追加分(16冊セット)も重ねると30cmを超えるものになりました。テキストは、ITCの経営戦略、IT戦略策定、IT資源調達、IT導入、ITサービス活用のプロセス(最新バージョンの名称で記述しています)と、プロジェクトマネージメント(PM)、コミュニケーション、モニタリングの計8つのカリキュラムに沿ったものです。
8冊セットだけでも、ぱらぱら見ても何が書いてあるのか理解しにくい内容で、「こんなの、出来るのか」と少し弱気の虫も出てきました。しかし、家族に「勉強をして資格を取る」と宣言した手前、簡単に引き下がるわけには行かなかったというのが正直なところです。
結果的には、最初に8冊セットだけ購入して始めたのが良かったようです。8冊セットは、イラストや表などが多く内容が簡潔に纏められていて、まず全体像や概略がそれなりに掴めたことが良かったと思っています。それでも当時の私にとっては、半年でモノにするのは大変なことでした。最初から(16冊セットも)全部購入していたら、未知の20数冊・30cm超の教材のボリュームに圧倒されて挫折していたかもしれません。
こんな経緯でしたが、半年後に受験するという予定で、勉強を始めることにしました。
どんな教材、どんなスケジュールでやったの
ITCの勉強で使った教材は以下のようなものです。
- めざせ!ITコーディネーター(資格取得の解説本)(日本能率協会) ITCとは、ITC資格とは、資格取得の手順、試験範囲などが初心者にも解るように解説されていて、 テキストや参考書の紹介などもあります。
- よくわかる経営戦略(西村克己/日本実業出版社) ミッション・ビジョンとは、なぜ必要か、から始まり企業(事業)ドメイン、経営戦略の重要性などを解りやすく説明した入門書。
- 絵で見る ランチェスター経営戦略入門(ランチェスターシステムズ) 戦闘法則であるランチェスター理論を、戦略経営に関する考え方を図入りで分かりやすく解説した入門書。 戦略とランチェスター法則、戦略の原点=弱者の戦略、差別化戦略と地域戦略、市場参入戦略とジャンケンポン理論、シェア戦略とABC戦略など。
- ビジュアル解説 ITコーディネーターテキスト【8冊セット】(日本経済新聞社) ITC協会の専門知識カリキュラムに完全準拠。重要な内容をコンパクトにまとめた図表を多用したテキスト。 今回、原稿を書くので見直しましたが、ビジュアル化の工夫がされ、エッセンスを要領よくまとめられていて良い教材だと思います。
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- ITコーディネーター概要 ITCの役割、ITCの全体像、ITCのサービスに必要な専門知識、ITCプロセスの全体フローなど。
- 経営戦略策定(最新バージョンでは、経営戦略と標記。以下同じ)フェーズ 経営戦略策定の概要、必要な専門知識、共通知識など。
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- 専門知識:ミッション・ビジョン、ABC、経営環境分析、SWOT分析、ファンクション分析、成熟度モデル、ビジネスモデル、事業ドメイン、CSF/KPI/KGI、BPR、DCF法、ROE/ROI/ROA,キャッシュフロー,損益分岐点など。
- プロセス:企業理念・使命→外部環境情報収集/内部環境情報収集→経営環境分析とあるべき姿の構築→リスク評価→経営戦略策定→経営戦略展開→経営戦略実行。
- 戦略情報化企画(IT戦略策定)フェーズ 戦略情報化企画の概要、必要な専門知識、共通知識など。
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- 専門知識:CSF抽出、コントロール目標、BSC、上位ビジネスモデル、ITガバナンス、情報リテラシー、DMM、DFD、情報モデル、情報化企画など。
- プロセス:IT領域内部環境分析/IT領域外部環境分析→目標ビジネスプロセスモデル策定→IT戦略策定→IT戦略展開。
- 情報化資源調達(IT資源調達)フェーズ 情報化資源調達の概要、必要な専門知識、共通知識など。
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- 専門知識:RFI/RFP作成、ITベンダー提案評価基準作成、ITベンダー選定、開発契約(運用委託契約)、情報化実行計画書作成、開発・テスト・導入の全体計画、運用に関する計画など。
- プロセス:IT資源調達計画→RFPの発行→調達先の選定・契約→IT導入計画策定。
- 情報システム開発・テスト・導入(IT導入)フェーズ 情報システム開発・テスト・導入の概要、必要な専門知識、共通知識など。
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- 専門知識:外部設計(実行メソッドごとの詳細計画、インターフェイス、新システム統合計画)、開発・運用に関するモニタリング項目の決定、開発プロジェクトのモニタリング項目と問題対応、受入テスト、本番移行、ユーザー教育、運用支援、パイロット稼動。
- プロセス:IT導入実行計画策定→新業務プロセスの詳細化と業務移行準備→IT導入とマネージメント/総合テスト・システム移行の計画策定と準備/マニュアルの作成と教育・訓練の実施→総合テストの実施とITサービス活用への移行。
- 運用サービス・デリバリー(ITサービス活用)フェーズ 運用サービス・デリバリーの概要、必要な専門知識、共通知識など
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- 専門知識:SLA、システム運用の評価・改善,評価体制,問題対応,モニタリング報告書、システム保守の評価・改善,問題対応、業務の評価・改善計画。
- プロセス:SLMの仕組みの具体化→ITサービス活用/ITサービス提供/SLMの実施→IT戦略達成度の評価→定期的なIT化の総費用対効果→継続的なIT改善と業務プロセス改革の提言。
- 共通知識とリファレンス
- プロジェクトマネージメント: PMBOKそのもの(主要マネージメント、ITCプロセスのプロジェクトマネージメント概要など)。最新バージョンでは、プロセスマネージメントが追加されています。
- コミュニケーション:ITCコミュニケーション・プロセス。
- メタフレーム:全体プランニング→リレーションの計画と形成→アグリーメント→関係のメンテナンス。
- モニタリング:プロセスごとのモニタリングとコントロール、モニタリングとITCの役割など。
- プロセス:目標明確化と周知徹底→状況把握→差異分析→リスクに対する対応策・防止策の立案及び報告。
- リファレンス
- 経営のリファレンス: 日本経営品質賞、経営の成熟度、簡易アセスメント、ビジネスエクセレンスモデル、APQCビジネスプロセスモデル、COBIT、SPA、CMM、コントロール目標とバランススコアカード、ジェネリックビジネスモデル、ジェネリック情報モデル、ジェネリックデータモデル。
- 情報のリファレンス: 情報化の成熟度、ビジネスプロセスモデル、コントロールの概念、情報モデル、データモデル。
- 中堅・中小企業の経営改革 経営改革論、経営改革立上げ・計画プロセス・警衛改革の実行・モニタリングと完了報告、経営改革プロセス、BPR、ベンチマーク手法、BSCなど。
- ITコーディネーター資格試験模擬問題集(ASCII) 当時は問題集の数が少なく、これ1冊しか見つかりませんでした。
- ITコーディネーター専門知識教材【16冊セット】 ITC協会の専門知識カリキュラムに完全準拠。ITCプロセスやリファレンスなどがかなり詳細に記述されています。今なら特に苦痛もなく読めますが、知識が足りない当時の私にとっては、内容やボリュームに圧倒されそうでした。専ら参考書として活用しました。
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- ITC全体像と活動原則(㈱日本コンサルタントグループ)
- ITCプロセスフロー(横川電気㈱)
- 経営の成熟度((財)社会経済生産性本部)
- 情報化の成熟度((財)社会経済生産性本部)
- プロジェクトマネージメント(㈱プロシード)
- コミュニケーション(㈱富士ゼロックス総合教育研究所)
- モニタリングとコントロール(NECソフト㈱)
- 経営戦略策定プロセス(㈱日本マンパワー)
- 経営戦略リファレンスモデル1(㈱日本能率協会マネージメントセンター)
- 経営戦略リファレンスモデル2((学)産業能率大学)
- 戦略情報化プロセス((財)企業経営通信学院)
- 経営改革プロセス(新都心ねっと㈱)
- 情報化資源調達プロセス(㈱東京リーガルマインド)
- 情報モデルとデータモデル(㈱アイテック)
- 情報システム開発・導入プロセス(㈱東京リーガルマインド)
- 情報システム運用プロセスとリファレンスモデル(NRIラーニングネットワーク㈱
独学でやることと、半年間後に受験することを前提にスケジュールを作りました。最初に決めた半年間のスケジュールは大雑把で取あえず程度なものです(参考にならないスケジュールで恐縮です)。
初めての知識が多いという事と、若い時より記憶力が落ちていると思っていたので、とに角、勉強時間を確保して、やることを第一に考えました。勉強時間は半年間で500時間とし、月-金は2時間、土日は6-7時間を勉強時間の目安にしました。500時間としたのは、1週間に20時間として半年間でこれくらい勉強できるはずだという自分へのプレッシャーでした。結果的には、半年間で500時間以上やれたことで、自分でも自信になりましたし、勉強することの楽しさも解ってきました。
スケジュール作成の基本的な考え方としては、初めて取り組む内容で、やってみないと解らない事も多いと思われたので、なるべく小まめに理解度を評価して、スケジュールややり方等がまずいと判断したら早めに補正・変更することとしました。
前半3ヶ月は、覚える期間としテキストなど教材の読込み(インプット学習)で、後半3ヶ月は、解答能力を高める期間とし問題集などの解答練習(アウトプット学習)としました。意識したのは、アウトプット学習期間を長くしようとした事です。
前半3ヶ月は、テキストなど教材の読込みを4回程度繰り返すこととし、3週間を1回の読込み単位とし、前半の1.5ヵ月後にマイルストンを設定しました。読込み回数を4回としたのは、3ヶ月で4回くらいは読込めるだろう、4回やれば問題集の半分程度を解答できるレベルになっている(はず)と仮定したものです。
やり方は、入門書レベルの参考書や雑誌などは朝晩の通勤時間帯で読むことにして、8冊のビジュアル解説版テキスト中心に読込み(キーワードや重要部分などをノートにメモ書きしながら)を行うことにしました。1回目の読込みを行い、2回目の読込みでは、1回目でどの程度記憶しているかを意識しながら読込む、3回目、4回目の読込みでも同様の確認を行い、その時の状況評価で読込み回数ややり方の見直し、足らない知識の補充などを検討することにしました。
後半3ヶ月はアウトプットの期間としました。長いようですが、早めに自分の記憶・理解レベルを確認してやり方など補正・変更しようと思ったからです。やり方は、(独自の方法ではないですが)問題集で理解レベルを確認し、理解が不十分な問題は、問題集の解説や再度テキストを読込む、を繰返すことにしました。
また、知識の修得レベルを、受験直前での問題集の正解率目標を9割以上としました。9割以上とした理由は合格水準(協会では未公表)が70-80%と(噂を)聞いたからです。
インプット学習の結果ですが、1回目は始めてのキーワードや考え方の連続で、戸惑ったこともあり結構時間が掛かりました。8冊のテキストは、絵が多く内容が簡潔に纏められていて、全体像を理解するには良い教材だと思います。しかし、知識レベルの低い当時の私にとっては、内容が簡潔に纏めすぎていてキーワード(多数出てきます)の意味や、プロセスとプロセスの繋がりが解りづらかった部分もありました。資格試験に合格するだけなら8冊のテキストだけでも十分かも知れませんが、詳細に内容を理解したい時には簡潔すぎて足らない部分があると思いました。2回目の読込みから感じだしました。
1.5ヵ月後(3回目の最初ころ)に8冊のテキストだけでは、自分の知識不足を補えないと判断し、追加で詳細なテキスト(16冊セット)を購入しました。詳細なテキストはボリュームがあり、知識の補充用の参考書として使用しました。両方のテキストを購入して正解だったと思っています。
テキストの内容としては、経営戦略、IT戦略策定フェーズは、普段馴染みの少ない言葉やツールのオンパレードで、取っつき難くて大変でした。IT資源調達、IT導入、ITサービス活用フェーズは、自分の経験と照らし合せてITCプロセスなどが理解出来ました。今まで自分がやってきた方法などがITCプロセスでも推奨されていたりして、結構自信になりましたし納得できました。勉強していて楽しくなりました。
またプロジェクトマネージメント(PM)では、始めてPMBOKに接しました。PMBOKは、今までの自己流や自社でのPMのやり方などが、論理的にうまく纏めて説明されているというのが第一印象です。自分の今までのやり方などの検証できるツールになったと思っています。ただ個人的な見解ですが、文化的な背景が違うからでしょうが、PMBOKで要求されるドキュメントの多さは、実運用面での考慮点(削れないか要検討)だと思います。
アウトプット学習の結果ですが、4回読込んだ後に問題集に取り掛かってみました。半分以上の正解率を期待していましたが、3-4割程度でした。自分では結構やったと思ってる割には出来ていなくてガックリしました。
めげずに、始めに決めたやり方で、問題集で理解レベルを確認し、理解が不十分な問題は、問題集の解説や再度テキストを読込む、キーワード等をノートに書く、を何度も繰り返しました。この繰り返しで徐々に回答率が上がって来ました。問題集の解説とテキスト(ビジュアル版と詳細版)とは、説明の観点や表現、深さが違いますが、それがかえって理解を深めるのに役立ったと思います。記憶が定着するまで、解答練習とテキスト再確認を繰り返しました。結果的には問題集は7、8回、テキストも同じくらい読込みました。答えや解説を覚えてしまうほど問題集を何度もやりました。
後半の1.5ヵ月後にITコーディネータ協会からサンプル(模擬)問題をダウンロードして、これも何度も繰返し使用しました。サンプル問題は実際の試験問題に近い形式ですので、早めに慣れておく必要があります。
勉強のやり方も手探りでしたが、インプット学習(読み・メモ書き)だけだと、記憶に残るのは少ないようです。アウトプット学習(解答練習とテキストなど再確認)の期間が、もっと長くても良かったと思います。出来れば問題集や参考書なども複数使って、繰り返す回数を多くする事が、記憶を定着させると思います。愚直に繰り返すのが、結果的には近道なのではないでしょうか。
ただ、同じ事を繰返していると如何しても飽きてきて、集中力や緊張感が薄れてきます。飽きないように、集中力や緊張感を保てるように、自分に合うやり方を見つける必要があると思います。
次回は、続けるための工夫は何をしたのか、勉強方法は?ということで書きたいと思います。
以 上
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