資格取得への道 ITコーデイネータへの道

第5回 ITコーディネータ(ITC)とは

概要

リタイヤ間際のオヤジが、なんで資格取得に取り組むことにしたのか、どのような葛藤があったのかなど等

目次
ITコーディネータ 5つの特長
試験の概略
受験当日での注意した点
ケース研修とは
勉強をやりだしてから変わったこと
まずITコーディネータの位置付けや期待される役割などが、ITコーディネータ協会にて公開されていますので、ご紹介させて頂きます。

 

 『企業にとって戦略的IT投資が重要な経営戦略として位置づけられる中、ITユーザーとITベンダーの双方の立場を理解し、経営者の立場から「真に経営に役立つIT投資」をサポートできる人材が必要不可欠なものとなっています。ITコーディネータとは、経営とITの両面に精通し、企業経営に最適なIT投資を支援・推進することができるプロフェッショナル。企業の戦略的IT投資を推進する国家プロジェクトの一環として誕生した日本で唯一の資格認定制度として、NPO法人ITコーディネータ協会がその育成・認定・普及・啓蒙活動を行っています。

 

ITコーディネータ 5つの特長

    1. 誕生の背景:なぜ、ITコーディネータが必要か?
      日本におけるITの活用が、国際的にみて遅れている構造的な要因の一つに、 ITベンダーはユーザーの経営に関する知識が乏しく、ユーザーはITベンダーの情報システム開発についての知識が乏しいため、情報システム開発の現場では極めて非効率な情報化投資が行なわれているという現状があります。こうした現状を打破し、わが国の企業の国際競争力を高めるため、ユーザー、ITベンダー双方の事情に通じた豊富な実務経験を持ち、経営者の立場に立って経営とITを橋渡し、真に経営に役立つIT投資を支援できるプロフェッショナルが求められています。
      ITコーディネータは国家プロジェクトの一環として誕生した「経済産業省推進資格」で、「IT新改革戦略」の中でも重要な人材として位置づけられています。

    2. 経済・社会的役割:ITコーディネータはどのような役割を担うのか?
      ITコーディネータは、IT経営推進の中心的な担い手、新しいITサービス市場創出の中心的な担い手とされ、企業のCIO人材源としても注目を集めています。

    3. 行政による支援:政府によるITコーディネータ活用支援施策
      ITコーディネータは、行政と企業をつなぐ人材で、ITコーディネータの登用により、政府による中堅中小企業支援を積極的に活用することができます。

    4. 実務上の能力:ITコーディネータに求められる能力
      ITコーディネータは、経営戦略からITサービス活用まで、IT経営の全工程を一環してサポートします。

    5. 制度の特長:ITコーディネータ資格認定制度の基本的考え方
      ITコーディネータは、実務と継続学習の義務化により、高度な知識と実務能力を常に維持しています。

 

 本制度は、経済産業省(旧通商産業省)の産業構造審議会情報産業部会「情報化人材対策小委員会」の提言にもとづき生まれたものです。政府も、経済産業省を中心としてITコーディネータ(ITC)を「IT革命の人的切り札」と認識し、ITCの活動機会の創出を強力に支援しています。ITCは、①経営改革を支援する人材、②経営とITを結ぶ人材、③IT新改革戦略の推進を担う人材、とされています。

 

 現実的には、ITCは比較的小規模、つまり中小・中堅企業におけるITに関する”よろず相談所”の所長のような位置付けを期待されているようです。特定分野の専門家というよりは、技術的なスキルに加えて、経営者を経営者に近い立場からサポートする人材で、真に中小・中堅企業のIT化を推進する人材ということになります。そのため、経営者と渡り合えるような感性、経営的な観点や発想を持ち合わせていることが重要であり、技術者というよりもアナリストやコンサルタントに近い立場と言えます。

 

 こうしてみると、いわゆる”何でも屋”で、あらゆる役割が求められているように見えますが、すべての役割を担う必要はありません。すべての段階で適切な判断が下せ、状況を把握することができるような人材が想定されています。つまり、全体を広く見渡して、適切な人材に適切な指示を与えられるコーディネータであることが重要な役割です。特に重要なのが経営的な観点からシステムを見つめることができる点です。

 

 かかわり方も、次のように数日程度のアドバイスで済むものから、経営者から一定の権限委譲を受けて一連のプロセスを一貫して監視するものまで幅広く想定されています。

 

(1)ITに関するちょっとした相談

 

経営者層へ、パソコンやインターネットの利用についてアドバイスする(例:数日程度の訪問)

 

(2)IT顧問

 

情報活用度の診断と改善、パッケージソフト選定、インフラ整備方針についてアドバイスする(例:年間顧問契約)

 

(3)IT導入のアドバイザー

 

業務改革推進のための情報化企画、複数の見積もり(いわゆる相見積もり)から最適なシステムの調達、情報システムプロジェクトのマネジメント支援(例:常勤して経営の企画や立案のサポート)

 

(4)IT導入マネージャ

 

IT戦略企画、複数の専門家から構成されるプロジェクトの調整、情報システムプロジェクトのマネジメント(例:常勤して経営者から一定の権限委譲を受けてプロセス全体を管理)』

 

【ITコーディネータ協会のホームページ、及び関連資料を参考に編集】

 

 ITC資格の特徴は、なんと言っても「ITCプロセス」という標準的な手順やツールを規定していて、さらに、標準成果物なども用意されている点でしょう。このITCプロセスに則る事を推奨しているのが、他の資格にないユニークな所だと思っています。一定度の知識・スキルを有する者(ITC)が、このITCプロセスに則って取り組めば、一定度の成果が見込めるというのがセールスポイントではないでしょうか。

 

 ITCプロセスは、経営戦略、IT戦略策定、IT資源調達、IT導入、ITサービス活用までの5つのプロセスと、プロジェクトマネージメント(PM)、コミュニケーション、モニタリングの共通プロセスの、計8プロセスで構成されています。各プロセスは世界で評価され実質的な標準とされているツール等を組み合わせているのも特徴です。

 

 余談ですが、ITCプロセスは、中央官庁の業務分析や改革の標準手順として適用されています。また、各省庁の支援にも多くのITCが登用されていて、活躍されているとのことです。

 

試験の概略

 試験は春と秋の2回実施され、120分で100問(必須60問、選択40問)です。問題の形式は、多肢選択式で4~5コの解答群の中から正解を選ぶものです。答えは別の解答用紙(マークシート)に記述します。資格の受験条件は特にはありません。

 

 私が勉強した時と今ではITCプロセスのバージョンが更新されて変わっています。各プロセスの名称も少し違いますし、内容も少し改訂されているようです。

 

 また試験も、私が受験した時は150分で120問でした。問題がA4用紙で50~60枚程あったでしょうか、分厚かったことを覚えています。

 

 プロセスの順番や原則を答えさせる(選ばせる)という知識を問う比較的簡単な問題もありますが、1問でA4用紙の半分以上使い、ITC(コンサル)が実際にヒヤリングしたような企業の(例えば、経営戦略策定の場面での)業務の状況や問題点などが記述されていて、それの対応策(解答)が4~5コ列記され、このケースではどの対応がITCとして最も適切か選べという問題もありました。

 

 ワザと微妙な表現で解りにくく記述されていて、あやふやな記憶では正解が選択できないという問題が多かったです。あくまでもITCの原則やプロセスに照らして正解を問うもので、問題の与件情報などを読み正確に題意を理解して、ITCならこうするということが求められます。

 

 なまじ業務経験が深いベテランほど自分の経験から判断したくなるので、常に”ITCなら”を意識する必要があります。

 

 問題の数も多く問題のボリュームもあって、1問1分くらいでやる必要があり、時間との戦いでした。緊張する中で時間に追われますので、解らない問題で悩んで時間を使ってしまうと、焦ってきて取り返せない恐れもあります。

 

 また、150分(2時間半)と長丁場ですので、集中力が切れる心配もあります。自分のペースや時間配分を十分に訓練して慣れておくことが重要です。

 

 私は解らない・自信がない問題にはチェックを付けて(取あえずでも解答は書く)おいて、後で考えることにしていました。20分くらい前に一通り解答を終えられたので、見直す事も出来ました。落ち着いて見直してみると解った問題もありました(反対にかえって迷った問題もありましたが)。

 

 問題用紙も解答用紙(マークシート)も回収されます。問題が公開されないので、(資格の学校などが)過去問題の分析や練習問題が作りにくいことが、試験対策を難しくしている一因とも言われています。試験結果は後日ITコーディネータ協会のホームページ上で、合否の結果が公表されます。なお、正解や個人の点数は公表されません。

 

 因みに、ITC試験の合格率は50%程度です。合格率は結構高いように思われるかも知れませんが、試験範囲が相当広い上に、受験料(2万円+消費税)やその後のケース研修(50万円+消費税)も高額ですので、それなりに(まじめに)勉強した方々が受験している結果ではないでしょうか。

 

 また、受験者のうち約70%が大手ITベンダー出身だそうですので、実は、思ったほど合格するのはた易くないと言えるかもしれません。(ITC試験の難易度は、中の上程度のようです)

 

受験当日での注意した点

 試験は休日(日曜日)に行われます。結構多くの方が受験されますので、大学などが会場として使われることが多いようです。

 

 当日は、開始の1時間半-2時間くらい前に試験会場に着くようにしました。試験間際で駆け込む方もおられますが、公共の交通機関でも遅れたり、最悪止まったりすることも考えられますので、私は早目に出ることを心掛けています。万一の場合でも焦らなくて済みます。また、早めに着いて自分の受験場所の確認をして、会場の雰囲気などに馴れたほうが良いと思います。

 

 受験者は男性が圧倒的に多い(当時の話ですが、最近もあまり変わらないようです)ので、男性用トイレが足りない状況になり込みます。早めに行って確認しておくと落ち着きます。私の時は、試験は午後でしたが、試験時間が150分と長かったので、朝から水分を取り過ぎないとか気を付けました。

 

 また会場(東京地区は何箇所かで実施される)によっては、椅子が木で硬かったり、蒸れたりする場合もありますので、バスタオルを持っていきました。蒸れずにクッションにもなって良かったので、その後の試験などでも必ず持って行きました。皆様もこのような場面があれば、バスタオルを一枚持って行かれる事をお勧めします。

 

 試験は選択式のマークシートですので、筆記用具はシャープペン(5㎜)でもokですが、芯はB程度が良いです。マークを塗り潰すだけですので、シャープペンや芯、消しゴムなど筆記用具に特に拘りは無かったですが、ただシャープペンと消しゴムを複数用意することは意識しました。途中で故障したり、落としたりした場合でも焦らなくてすみます。

 

ケース研修とは

 試験に合格すると15日間のケース研修(実務の模擬研修です。試験と研修の順番は、どちらが先でも可ですが私は、試験→研修の順番が良いと思います)があります。このケース研修は、実際の企業(名前はもちろん架空)で行った経営診断や業務改善などをベースにしたものが教材になっています。

 

 私の時は1クラスが36名(1グループ6名で6グループ構成)と、人数が結構多かったです。ケース研修は土日に行われましたが、遠くは、仙台や新潟、静岡などから(泊りがけで)研修に来られている方もいました。また年代は20歳台~60歳台まで幅広かったです。

 

 参加メンバーの職業は、メーカー系を含めてのIT関連・コンサル関連・金融関連・その他一般企業の従業員、官庁や公共団体関連の職員、IT関連などの会社の経営者・役員とバラエティーでした(学生は0でした)。

 

 滅多に経験できないケース研修ということで、何でも吸収してやろうという気持ちで毎回緊張感を持って参加していましたが、けっこう楽しめました。毎回宿題が出ます(やらなくても特にペナルティーは無かったですが)ので、まじめにやると予習や準備もそれなりに大変ですが、まじめにやるやらないでは、次回の理解度が違うと思います。

 

 研修方法はケース毎に、インストラクターからの講義もありますが、グループ討論が主になっていました。毎回グループ内でリーダーや書記、発表者などを決めて、なぜこの問題が発生したのか、これの改善策はどうすれば良いかなどを議論し、まとめた結果を発表者が(顧客の社長に報告するつもりで)プレゼンします。他グループから質問や突込みもあり、最後にインストラクターから評論があるというパターンでした。

 

 参加者全員がまじめに取り組むので、白熱した議論なる事も多かったです。色々な経歴・年代の方々と議論をしていると大変刺激になりました。私はIT系ですが、営業系の方や金融系の方、同じITでもメーカー系の方、会社を経営されている方などと話していると、違う見方や考え方など勉強になりました。また経歴の違う4名のインストラクターから、ITCの心得や実務の現場などの有意義な話なども聞けました。7

 

 15日間の研修中には、何度かグループ替えがされた事もあって、グループ内のメンバーは勿論、他のグループの人達とも会話したり、飲み会をしたり等でかなり打ち解けました。私はまだ社外で活動していませんが、知り合いになった仲間で、グループを作って共同で仕事をしたり、仕事を融通したりしているという話は聞いています。将来的には、私もこのような輪に加わって仕事が出来ればと思っています。

 

 ケース研修の内容としては以下のようなものでした。

 

(1)ミニケース研修

 

ミニケース研修は15日間のケース研修の内、最初の5日間実施されました。情報系が強く経営系が弱い人には「経営系ミニケース研修」、経営系が強く情報系が弱い人には「情報系ミニケース研修」が準備されています。

 

モデル会社の企業概要を記載した資料をもとにITCプロセスフローに従い、与えられた課題を解決していきます。進め方は基本的にはグループでのディスカッションが中心です。私の受講した(経営系)コースは以下のような内容でした。

 

  • 現状事業ドメイン確認と業界特性分析
  • SWOT分析、新事業ドメインの決定と新事業価値の再定義
  • 新ビジネスモデル(戦略版)の作成
  • 現行ビジネスプロセスモデル(DMM,DFD)
  • 業務機能改善テーマの検討、新ビジネスプロセスモデル
  • 戦略情報企画書の作成と役員承認  etc
(2)スルー研修

 

スルー研修はミニケース研修後の10日間で行われます。ITCプロセスフローに従い、経営戦略、戦略情報化企画、情報化資源調達、システム開発・テスト・導入、運用デリバリーの各フェーズ(旧呼称です)での課題を解決します。スルー研修もグループでのディスカッションが中心となります。受講したコースは以下のような内容でした。

 

  • トップ環境分析
  • トップ経営課題作成
  • 現業環境分析
  • 現業業務課題作成
  • プロセスモデル作成
  • コントロール目標作成
  • 情報モデル作成
  • 企画書作成
  • RFP作成
  • 実施計画
  • 請負契約
  • 開発・テスト
  • 移行
  • 受入テスト
  • 運用委託先の選択
  • 準委任契約
  • 運用・保守
  • 効果確認
 上流から下流まで、ITCとして関わり方を考えながら最新の考え方に接せられる非常にためになる研修でした。ケース研修も毎年のように変更が加えられているようで、今後もITCにとって役に立つケース研修として改定されると思われます。ケース研修ではITC知識・ITCプロセスフローの定着とともに、日ごろ会う機会の無い業種の方と会えるなど人脈が広がるのがメリットです。

 

勉強をやりだしてから変わったこと

 一つ目は、外で酒を飲む回数が減りました。私は酒なら何でもokの飲兵衛で、以前は誘われたら断らない方で必ず飲んでいました、というより自分から誘うのも多かったです。休み前の(花の)金曜日は基本的には飲む日でした。それが金曜日は基本的に飲まない日になりました。土日を有意義にしたいからですが、人間変われば変わるものだと自分でも感心しています。

 

 二つ目は、健康、体調に以前にも増して、気をつけるようになりました。サラリーマンも「体が資本」ですが、更に体を大事にする意識が強くなりました。月1回程度の山歩き(近場で日帰り)と、普段は会社の行き帰りで1時間以上歩く、土日は2時間以上歩くなど、意識して運動することにしました。  それに加えて、冬の間は電車の中ではマスクをするとか、なるべく人ごみを避けるとか、夏の間でも窓を閉めて寝るとか、なるべく冷たい飲み物を控えるなど、自然と気をつけるようになり、おかげで殆ど風邪などを引かなくなりました。

 

 三つ目は、勉強をやりだしてから快感を体験しています。勉強していて、今まで解らなかったのが突然”解った”、”そういう事だったのか”と思う瞬間があります。(テレビで何度も紹介されていますが)アハ体験というそうです。この解った、繋がった瞬間に、脳内でドーパミンという物質(脳内麻薬とも言われています)が分泌されて快感を感じるということです。私もこれを体験したことになります。

 

 こうなると勉強することが快感になってきますので、楽しくなってきて続けられます。勉強をして知識などが増えると更に繋がりが良くなるようです。昔の体験や昔覚えたことと、新しい知識が突然繋がることが、頻繁に出てくるようになってきますので、益々楽しくなります。

 

 四つ目は、蛇足ですが、家族、特に子供達の見る目が変わってきたと思います。それまでは、仕事と称しては1週間に2,3回は外で飲んで(かなり酔っ払って)いました。土日は一日中グタグタしていて、文字通りグータラオヤジでした。子供達の相談相手はもっぱら母親で、きっと父親の威厳は無かったと思われます。

 

 それが、飲んで帰る回数が激減し、休日は図書館で頑張っている、家でも勉強しているオヤジを見て、明らかに子供達の見る目が変わってきたようです。今では一目置かれているように思います。合格した後に子供たちからプレゼントを貰いましたが、これって結構嬉しいものですよね。

 

 番外ですが、少し残念なことと言えば、自分の自由時間の殆んどを勉強時間に割いているので、他の趣味、本格的な山登りがお預けになっていることです。この勉強中心の状況は2008年まで続いています。自分で決めたことですし勉強は苦痛ではないので、ストレスはそれほど感じていません。でも2009年は勉強以外の時間も増やしたいというのも本音です。

 

 

 

 偉そうなことを言う気はありませんが、勉強を始めるのには、少しの決心と持続力が要りますが続けていると新しい発見があります。何より自分が変わってきますし、周りも変わってくるように思っています。更に、私のようなオッサンにとっては、ボケ防止にもなるのではないでしょうか。

 

 次回は、ITコーディネーターの資格を取ってどうなるのか、ということで書きたいと思います。

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