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Vol.135 「腸と脳」の科学 脳と体を整える、腸の知られざるはたらき

概要

書籍のインク独特の香りを感じながら、出会ったことのない世界、新たな発見、体験してみませんか?

目次
内容紹介
Miya’s Review

ITエンジニアに、うつ病をはじめとするメンタルヘルス不調を抱える人が多い、と言われています。実際、私自身も過去にメンタルヘルス不調に陥った経験がありますし、多くの同僚が休業や退職に追い込まれる姿を見てきました。
そんな中、「不眠、うつ、認知症、肥満、感染症の重症化……これらの不調が実は腸から始まっている」という本書に出会いました。
メンタルヘルスと「腸」という意外な組み合わせがどのように関係しているのか、その謎を知りたくて手に取った一冊です。

内容紹介

 
「腸と脳」の科学 脳と体を整える、腸の知られざるはたらき
坪井貴司
 

腸と脳が情報のやり取りをしていて、
お互いの機能を調整している「脳腸相関」と呼ばれるメカニズムが、
いま注目を集めています。
〈乳酸菌飲料を飲んで睡眠の質が上がる〉
〈ヨーグルトを食べて認知機能改善〉
……という謳い文句の商品もよく見かけるようになりました。
腸内環境の乱れは、腸疾患だけでなく、
不眠、うつ、発達障害、認知症、糖尿病、肥満、高血圧、
免疫疾患や感染症の重症化……と、全身のあらゆる不調に
関わることがわかってきているのです。
腸が、どのように脳や全身に作用するのか。
最新研究で分子および細胞レベルで見えてきた驚きのしくみを解説します。

講談社 紹介ページ)

 

Miya’s Review

ITエンジニアに、うつ病をはじめとするメンタルヘルス不調を抱える人が多い、という話を聞いたことはありませんか?
厚生労働省の「令和5年 労働安全衛生調査(実態調査)」によると、『メンタルヘルス不調により連続1カ月以上休業した労働者がいた事業所』の割合は10.4%、『退職した労働者がいた事業所』の割合は6.4%となっています。
業種別に見ると、情報通信業(IT業界)ではこれらの割合が、休業28.9%、退職14.7%と、いずれも平均値の倍以上。全17業種中で最も高い数値となっています。

こうした背景には、『長時間残業によるオーバーワーク』『人間関係のストレス』『太陽にあたる時間が少ない』『キャリアやスキル面の不安』など、IT業界特有の課題があるとされています。

「ITエンジニアのメンタルヘルスの話と腸がどう関係するの?」と思った方もいるかもしれません。
例えば、次のような経験はありませんか?
 ・「仕事や学校が始まる月曜日のことを考えると気分が憂うつになる」
 ・「大事な会議や試験の前は緊張して不安になる」
こうした体験は、ストレスや感情が脳から腸へ伝わる「脳腸相関」という仕組みで説明されます。
一方、腸からも「空腹」や「満腹」といった情報が脳に送られ、私たちの行動や気分に影響を与えています。
さらに、近年注目されているのが、腸内に存在する細菌・ウィルス・真菌などの微生物群、いわゆる「腸内フローラ」(専門的には「腸内マイクロバイオータ」)の役割です。

研究によると、うつ病患者の腸内では特定の2種類の細菌が減少していることが分かっています。また、腸内マイクロバイオータの組成を整えることで、うつ症状が改善されるケースも報告されています。
では、腸内環境を整えるにはどうすればよいのでしょうか?

腸内マイクロバイオータ、特に善玉菌の餌になるのが食物繊維です。これが腸内環境を整える重要な役割を果たします。

実は、食物繊維はかつて「消化されずエネルギーにならない役に立たないもの」と考えられていました。
しかし、1980年代以降、日本の食事ガイドラインにその重要性が明記されるようになり、1995年に具体的な目標量が示されました。
最新の「2025年版 食事摂取基準」では、次のように目標量が設定されています。
 ・男性 (18~29歳):20g以上 / (30~64歳):22g以上
 ・女性 (18~64歳):18g以上
40代以上の方は、小中学校時代に食物繊維の重要性を教わらなかったかもしれませんが、現代では健康維持に欠かせないものとして重視されています。

多くの人は、メンタルヘルス不調がある場合、精神科や心療内科の受診を考えると思います。しかし、腸内マイクロバイオータを整えることでストレスに強い身体を作るというアプローチは意外でした。

本書では、以下のようなトピックも紹介されています。
 ・腸と睡眠の関係
 ・腸と記憶力の関係
 ・腸と食欲・肥満の関係
科学的な知識に基づき、腸の健康が私たちの身体や心にどのような影響を与えるかを、わかりやすく解説しています。

仕事もプライベートも充実させるには、「元気な体」があってこそ。腸内マイクロバイオータを整えることで、うつ病や認知症、糖尿病、感染症を予防して健康寿命を延ばし、より良い人生を目指してみませんか?

 

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筆者紹介

“システム管理者のためのBookCafe” レビュアーのご紹介
●システム管理者の会 推進メンバー
システム管理者の会の企画・運営をする推進メンバ―が、会員の皆様にお奨めする本をご紹介してまいります。

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