資格取得への道 中小企業診断士への道

第1回 なぜ中小企業診断士を取ろうと思ったの

概要

60歳手前のリタイヤ間際のオヤジが、ITコーディネーター資格に飽きたらず、どうして更なる難関資格である中小企業診断士の取得に取り組むことにしたのか。勉強の効果を上げるためにどんな工夫をしたのか、またモチベーションを保つために何をしたのか等など、私が経験した試行錯誤の連続を飾らずに、つたない文章ですが書かせていただきます。皆様にとって何か一つでも参考になることがあれば幸いです。

目次
中小企業の現状
なぜ中小企業診断士を取ろうと思ったのか

中小企業の現状

 中小企業庁から、全国の中小企業の状況や課題、中小企業に対する施策などを取りまとめた「中小企業白書」が毎年発行されています。この白書によれば、毎年のように中小企業のIT化の必要性が強く述べられていて、促進するための施策も国などから幾つも講じられています。しかし、中小企業のIT化(IT経営*1と呼ばれています)は遅々として進んでいないのが現状のようです。では、なぜ進んでいないのでしょうか。
    *1  IT経営:「ITの高度な利活用によって経営戦略を遂行し、企業の生産性を高めて
       競争力の強化を図ること」 (経済産業省の定義より)
 第一には、元々中小企業は大企業に比べて経営資源、特に資金面や人材面などで制約があること。加えて、バブル崩壊による景気後退などで市場競争が激化したことで、資金や人材の余力が更に無くなり、IT投資が積極的には出来なかったという面は大きいようです。
 第二には、中小企業の経営者が目の前の資金繰りなどに追われ、適切なIT利活用の知識を得る機会が少なく、ITの価値を正しく認識できていない事も影響していると言われています。また、中小企業の経営者は良くも悪くもワンマン的な人が多く、経営など諸々の相談をする相手も限られているようです。彼らの相談相手は、付き合いのある会計士や税理士、銀行の担当者、中小企業診断士、公的な支援機関の相談員などが多く、その経営相談の中でITの相談もされる事もあるようです。
 しかし相談を受ける側の人達は、財務や経営関連には強い人が多いでしょうが、必ずしもIT関連の知識が深い人ばかりとは言えないと思われます。ITをよく知らない人がIT化を助言するでしょうか?(責任を伴うことになるので)なかなか難しいのではないでしょうか。自分自身に問うてみても、専門外で自信の無い事を人に積極的に勧められないです。
このような現状も一因となってIT化が進んでいないと言われています。
 余談ですが、国家レベルに於いて、この経営にとって効果的なIT化が行われていない・支援できる人が足りないという問題認識がITコーディネータ(ITC)が生まれた背景にもなっています。
 さらに第三には、IT化が進まない原因として中小企業経営者のトラウマがあると言われています。「とに角ITだ、IT化で全て解決する」と煽られた時代(バブル前の1980年代あたり)、この当時の経営者のIT化の相談相手は、銀行や取引先から紹介されたITベンダーが多かったようです。ITベンダーの提案通りに、組織の成熟度・実態に合わない、業務プロセスを無視したような高価で過大なシステムを入れてみたものの、結局使えなくて埃を被ったという苦い失敗談が幾つもあるとのことです。
 この使えないシステムを買わされた、騙されたとの(被害者)意識が経営者側に残っていて、その後のITベンダーの売り込みや提案に懐疑的になって、本当に必要なIT化も進まない状況もあると言われています。
 

なぜ中小企業診断士を取ろうと思ったのか

 このような中小企業のIT化の支援ですが、日頃付き合いのある会計士や税理士、中小企業診断士などが、IT系の勉強をして経営者への適切なITの助言などをやっても良いと思います。会計士や中小企業診断士などでITCの資格を取られている方が何人も居られますが、まさにこれを実践された方だと思われます。しかし、一般的にはITを知らない、例えば文系の人達にとってITは、やたら専門用語も多く取っ付き難く、その上技術進歩も早くて、難易度が高いという声が多いようです。
 IT化の助言が出来るためには一定度の専門的な知識、経験などが必要となりますが、一朝一夕に習得できないのはIT系に関わった人なら理解できるのではないでしょうか。
 経営戦略のプロセスで言うと、上流工程で企業戦略・事業(機能)戦略などが策定されます。その一環としてIT化が検討されIT戦略の方向が決まり、IT化が具体化するということになります。こんなに理想的に進むことは滅多にないそうですが、それでも最初からITありきではありません。
 現実的な支援の場面では、中小企業から個別の問題解決を相談・依頼されることも多いようです。例えば在庫管理をITで何とかしたいと相談を受けたとしても、その場合でも、短絡的に在庫管理だけをIT化して解決すれば良いというものではありません。その個別の問題を発生させている真の原因を追求し改善策を助言するとともに、経営全体の戦略などの重要性を経営者に気づいてもらうよう啓蒙することが、最も大切なことです。
 私は今までの経験などを活かしたいと思っていて、IT系のコンサル中心に活動出来ればと考えていました。しかし、IT化が具体化しなければ、幾らIT系コンサルをしたいと思っていても、出番はないということになります。
 それであればIT系の私が上流工程の知識やノウハウを修得して、IT化などの支援だけでなく、経営戦略や経営改革の支援も出来るようになれば、出番も多くなり強みになるのではと考えるようになりました。
 ありていに言えば、IT系だけだと食えないのではと考え(不安)、いろいろと仕事が出来るように成りたかったということです。
 ITCを取って経営者の相談相手・ITとの橋渡し役になりたいという思いが強くなった半面、自分のレベルや弱みが分かりました。ITCを取得する前は、こんなに難しい資格(ITCのこと)なんだから取れば直ぐに仕事が出来ると思っていました。しかし、ITCを取ってみると現実が分かったということでしょうか、この程度の知識・スキルレベルでは経営者の支援は出来ない、本当に支援するためにもっと自分自身のレベルアップをしたいと強く思うようになりました。
 このように色々と思い考えた結果、私の中では中小企業診断士の勉強に繋がることになっていきました。中小企業診断士のことは、ITC受験前にもある程度調べましたので、大体は分かっていました。自分に不足している経営などのスキルレベルを高めるのに”絶好の教材”だと思われました。
 ITC取得した後のその当時の私の正直な気持ちとしては、もっと勉強したい・しないといけないという、半分情熱・半分強迫観念とでも言うのでしょうか、複雑な気持ちが入り混じっていたと思います。こんな所でやめたら中途半端で何にもならない、前進しないと道は開けない、やってみようと自問自答をして自分の背中を押したというところです。幸い、勉強するのが好きになっていたので、また始めると考えても特に苦痛は無かったです。
 当時は、まだ(前の)会社に在籍していてリタイヤ(60歳)まで3年ほど時間があったこともあり、会社にいる間に、自分で今できる事をしておこうと考えるようになりました。
 資格取得が趣味ではありませんが、同じ勉強するなら資格取得は、目標になって必要な勉強量や期間・知識レベルなどの計画が立てやすいですし、モチベーションを維持しやすいと思っています。このやり方はITCの時にやった手法と同じです。中小企業診断士資格にチャレンジしてみようという気持ちが固まって来ました。これが中小企業診断士を勉強することにした経緯です。

余談ですが、リタイヤしてみて今更ながら感じることですが、会社に居るというのは有難いということです。給料を頂いているので自分の時間が一定度制約されるという面はありますが、その気になれば勉強やノウハウの習得ができる有難い場所でもあると言えます。
 大義名分があれば(会社持ちで)社外のセミナーや勉強会などにも出かけられますし、高価な専門書や雑誌、社内外の資料なども入手できます。その気で見回してみると、社内外には知識だけでなくノウハウを疑似体験できるようなものも、沢山あるのに気が付くと思います。探せば自分がほしい知識やノウハウを持っていて、教えてくれる人もいるはずです。勉強する気になれば相当なことが出来ると断言できます。

 意識しだすと、不思議と自分がほしいと思っている新しい知識や人に巡り合うものです。新しい知識や人に巡り合うと、自分が気づかなかった事に気づくというのも結構あります。好奇心のアンテナの感度を上げておくことが大事だと思っています。
また、仕事を通して新たなことにチャレンジも出来ます。上手くいった・失敗したやり方など等、ノウハウが習得できて経験が積めます。組織・上長の了解が必要ですが、挑戦的な課題であれば、ある程度の失敗は許容される事があるのが会社組織ではないでしょうか。考え方を変えると会社で仕事をするというのは、ステップアップするための実地訓練が出来るという、実に美味しい環境と言えると思っています。

 私の経験からも、自分にとって未知の領域の勉強を始めて資格を取ったりしたことで、一定度の自信になりましたし、何より自分の意識が変化しだしたのを感じました。それによって発想や発言が変わってきました。仕事への取り組み方も、今までと同じやり方ではなく、改善・改革を常に意識するように変わってきて、周りへも発信することが多くなってきました。

 会社の外でも通用する能力をもつことや、組織内からの見方だけで無く広い視野からの(第三者的な)見方や違う意見、提案が出来るというのは会社にとっても良い面が多いのではないでしょうか。でも決して飛び出す事を勧めている訳ではありませんので念のため。会社・個人にとって、お互いのためになって成長するのであれば、良い意味で会社を利用するのも有りだと思っていますが、皆様は如何お考えでしょうか。

 次回は「中小企業診断士って?」どのようなものか、勉強すると何が分かるのかなど、書かせていただきます。

 

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