アプリケーションもミドルウェアも、使った分だけ払う時代がやってきました。
SaaSが盛んに叫ばれるようになり、今まで一括販売だったハードウェア/ソフトウェアの契約形態は、サブスクリプション(定期購読)型課金モデル(”pay-as-you-go model” / “pay-per-use model“)へと変わっています。
各種ソフトウェアやハードウェアベンダーは、SaaS型ビジネスモデルへの転換を求められています。ベンダーにとってみると、初回契約を取りやすくなり、長期的に安定収入は得られるなどのメリットもありますが、利用し易い反面解約リスクを伴う先行投資型のモデルケースになることも懸念されます。
インドではIT企業がSaaS型ビジネスを次々と開始
2010年5月に掲載された記事で、インドで2番目に大きいITコンサルティングサービス会社であるInfosysは、製品販売ベースの料金体制を脱し、利用時間や利用量によるまたは成果報酬型の課金モデルの料金体制への変換に乗り出したことを発表しました。
CEOであるSenapathy ‘Kris‘ Gopalakrishnanによると、ここ半年の間にも既に十数の会社がこういった課金モデル型を採用し始めているとのことです。競合企業であるTata Consultancy Services (TCS) 社や Wipro社でも似たビジネスモデルを採用し、利用コストを下げたいユーザへの売り上げを伸ばしているようです。
課金モデル型のビジネスモデルでは、利用企業が少ないうち、ベンダーは初期投資が多く痛手を負いますが、利用社数が増えてくると少しずつ売り上げを伸ばしていくことができます。
その際はプラットフォームは他社とシェアすることが大事だとGopalakrishnanは言います。クラウドの特性を活かし、他社とプラットフォームをシェアして初めて、自社サービスの利益率を保つことができるということなのでしょう。
アドビ社も、画像や写真の編集ツールであるPhotoshopの利用ユーザ向けに、利用時間に応じて課金を行うサービスをインドで始めました。これを通じて、今までのライセンス体系では購入できなかった新興国での利用を伸ばすことが期待されます。
インドのSaaSビジネス企業の急成長
インドでは、SaaSのマーケットが急速な成長を見せています。
アプリケーションの世代を超えて、一気にSaaS世代へと突入しようとしており、Wipro, Infosys, Tatas といった、インドの大きなIT企業を中心にSaaS関連のサービスを提供し始めています。
関連記事からも、インドの急成長ぶりが伺えます。
インドはアジア太平洋のSaaS市場で最速の成長をしており、2007年にUSD $27,000,000 に達していたインドのSaaS市場は、2010年にはCAGR(年平均成長率)77パーセントのUSD $165,000,000 に達すると言われている。
インドは、最先端のテクノロジーを取り込むことで成長を加速させており、そういった背景から、アドビ社がソフトウェアの課金利用サービスを、インドで始めたこともうなずけます。
課金モデルは利用者の幅を広げる
SaaSによる課金モデルの魅力のひとつは、インドの例のように、資金が少なく大規模な投資ができない新興国の中小企業や一般ユーザもサービスが利用できるようになることです。
同様に、新規投資が壁となって、ASP/SaaSの新事業に踏み出せない企業にとっても、低コスト・短納期での市場参入ができるようになるなど、サービス提供企業がターゲットを拡大するのに大変有効と言えます。
ソフトウェアの使用形態が「所有型」から「利用型」へと変化するにあたり、その他に検討しなければならない点として、
①対面販売からWebマーケティングへの販売方法の転換
②保守やサポートの電話・メールによるリモート対応
③トライアル環境の提供
④ユーザ企業のセルフ導入を推進
などが考えられています。
抜本的なビジネスモデルの転換を必要とされるため、各ソフトウェアベンダーは対応を求められることになるでしょう。
参考:
インドでのアドビの課金モデル:
http://timesofindia.indiatimes.com/tech/news/software-services/Adobes-pay-per-use-model-in-India/articleshow/6053533.cms
Infosys Technologies Limited のホームページ:
http://www.infosys.com
Infosys が課金モデルのITサービスに対し大きな賭けに出た:
http://www.theoutsourceblog.com/2010/03/infosys-bets-big-on-pay-per-use-model/
SaaSでインドはアプリケーション世代を飛び越えた:
http://www.informationweek.in/Cloud_Computing/10-07-14/With_SaaS_India_has_the_opportunity_to_skip_a_generation_of_applications.aspx
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筆者紹介
研究会メンバ:
・K谷リーダ
わが研究会の頼れるリーダ。
NYでの営業経験を持つ技術者。もうすぐ2歳になる息子にぞっこん。
・K玉
お客様のシステムを支えるサポート技術者。
スペイン留学時に学んだパエリア作りをメンバに教えてくれるなど、社内にスペインの風を運ぶ。
・U田
大学・院と情報システムを専攻した生粋の技術者。
在学時と就職後に海外プレゼン経験あり。
研究会での的確なアドバイスはさすがとメンバをうならせる。
・W田
アメリカ留学での語学を活かし、海外営業担当に。
興味深い記事や面白いニュースを研究会に持ってきてくれる。
たしなむお酒も国際派?
・N村
サポートから転部した新米マーケティング担当。
小さい頃から観ていたSound Of Music のビデオのおかげで発音だけはいいが、英語の記事を読むのにいつも一苦労。
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