- 目次
- 就活学生のためのIT業界レクチャー
- 第六夜と第弐拾八夜の復習
- SIERの仕事がなくなる時代、まだそんなこと言っているの?
- 売り手市場とやりがい論(再掲)とワークライフに逆風な会社
- 2025卒学生によるIT企業ランキング
- 就活を変革する学生はいるのか
就活学生のためのIT業界レクチャー
2025年です。昭和で換算すると昭和100年です。今年もこの時期は就活生がハッスルする時期なのですが、なんと昨年に続き今年も「売り手市場」らしいです。
【参考】第41回 ワークス大卒求人倍率調査(2025年卒)
https://www.works-i.com/surveys/item/240425_recruitment_saiyo_ratio.pdf
上記の資料によると、全国の民間企業の求人総数は前年の77.3万人から79.7万人へと2.4万人増加。それに対して、学生の民間企業就職希望者数は、前年の45.1万人から45.5万人へと0.4万人増加。
どこでもよい、就職できれば文句ないというのであれば、全希望学生が就職できるという状況です。
第六夜と第弐拾八夜の復習
このテーマで書くのは3度目です。「第六夜 OB訪問で悩む管理者の夜」を書いたのは2021年3月であり、「第弐拾八夜 OB訪問で悩む管理者の夜-その2」は、2023年1月です。リンクは上記タイトルをクリックしてみてください。
また、前回、前々回の質問と回答を書いておきました。ついでに最新版にupdateしておきました。【新】は今回追加した質問です。結構多いので書いておきました。興味があれば詳細はWEBで確認してください。
問:御社の強みと弱みを教えてください
答:(こいつバカ?)それくらい調べてください。今の時代、それを調べられないような人はいりません。
問:【新】AIで仕事がなくなるって本当?
答:パンピーなことを言わないでください。まずAIをしっかり勉強してからその質問を。
問:やはりコミュニケーションは必要ですか?
答:(コミュ力のことだと思うけど)会社に勤める上で必要だと思います。いや、社会で働く上で必要かな。
問:御社のインターンシップに参加しました
答:アレは仕事とはちゃう。バイトしか経験したことがない学生に「仕事」もどきをやらせているだけ。2025年でも相変わらず酷いものです。
問:説明会での人事の発言ってわからない
答:アレは現場で働いたことがない人たちだから、気にしないように。現場のことは現場に聞いて下さい。これも変わらず。
問:【新】社風を教えてください
答:(まだそんなこと聞くヤツがいるのか)部門によって異なります。合わないと思ったら、そこで考えればよいかと。
問:【新】事前になにかやることはありますか?
答:Iパス(*1)を受験してもよし、AIを勉強するもよし。好きにしてください。
問:【新】客先に常駐とかするんですか?(*2)
答:最近はWEB会議の普及もあり、減ってきている。でも二次請・三次請会社などが元請会社に常駐というパターンはあります。
ざくっと書きましたが、今も前回(2年前)も前々回(4年前)も、あまり質問内容は変わらない気もします。つまり、年々IT技術は向上しているのに、就活生のプロセスは向上していないということです。AI云々を質問する前に、自分のプロセスやそのプロセスを作っている就活本自体を修正してほしいです。
SIERの仕事がなくなる時代、まだそんなこと言っているの?
最近の学生の質問で特に気になった質問は、「AIが普及してSIERの仕事がなくなりますか」です。なんか前回も同じテーマで書きましたが、よほどSIerをディスりたい勢力や就活本が多いらしいです。前回と同じように会話で雰囲気を味わってください。
学生G’「御社ではシステムインテグレーションをメインに事業を行っていますが、AIが普及しつつある今、エンジニアが必要ない、ということはありませんか」
ワイ「は? どこまでAIを学習しているの?」
学生G’「一般的な知識しかありません」
ワイ「うん、正直でよろしい。でもそのAIのデザインや導入などをするのがSIerの仕事になります。つまり、AIのバイオスを防ぐようなデータを設計したり、それ以前に導入する業務に対して適切な基盤を選択したり、さらに評価したり、いろいろあります」
学生G’「???」
ワイ「(あ、会話にならない)少しAIを学習してみようか」
というような会話が交わされました。解説します。
まず、AIは旬なタームですが、そのエンジニアが足りません。そもそもJavaやC++を知っているようなプログラマは必要ないのです。プログラミングにやや近しいプロンプトエンジニリング(*3)では自然言語で対話します。
「それならやはりエンジニアなんて必要ないじゃん」
いやいやその対話というか質問を、どのように構成するかはエンジニアの領分です。最近の主流は、大規模言語モデル(LLM)なのですが、そのLLMを鍛えるために、エンジニア的な作業が必要なのです。
また、AIには「ハルシネーション(Hallucination)」というものがありますし、適切な質問や調整、適切な量と最新の学習データなどがないと間違った回答が出力されますから。
そもそもこの学生G’のようなことしか考えられないユーザーに対して、AIや機械学習を使ったシステムを提案・計画するにはエンジニアの頭脳と詐欺師の弁舌が必要です。
売り手市場とやりがい論(再掲)とワークライフに逆風な会社
さて、「売り手市場」のせいか、強気な学生から「出世するためにはどうすればいいですか?」などのキラーな質問がくることがあります。大手だとそのような肉食系の学生はいりません。他の社員を食べちゃうかもしれませんから。そのようなエースで4番を狙う方々はスタートアップで主力になって下さい。
「やりがい」についても、まだたまに訊かれます。逆にこちらから質問します。
「『やりがい』がない仕事はしないのですか?」
大抵の学生は、「そんなことはない」と返すのですが、では「やりがい」って必要? 「やりがい」がないと働けない?
極論ですが「やりがい」を一番強調する会社は、ブラックです。よく考えてみてください。「うちの会社はやりがいがあるよ」の前には「仕事はかなり大変だけど」という言葉や「給料は安いけど」という言葉が潜んでいます。たまに「最先端の技術を使うから(やりがいがあるよ)」というケースもあるかもしれませんが、その場合は「最先端の技術」を強調します。また、ほとんどの会社ではやりがいがあろうなかろうと、給料を貰っている以上は仕事で返さないといけません。仕事に「やりがい」を求めるのはバイト以下のドリーマーだけです。
最近は「ワークライフバランス」などについて訊かれることが多いです。でも大手で昭和な社員が多い会社(*4)ですと、「社畜こそが命」と勘違いしている方々が多いので、もし同じ部署にいた場合には、社風は新人にとって逆風になることでしょう。
2025卒学生によるIT企業ランキング
ここで、学生によるIT企業ランキングを発表します。学生が選んだランキングなので、本当に知名度だけです。真の実力のある優良企業、ユニコーン企業は選ばれていません。
<図表45-2 IT業界新卒就職 人気企業ランキング(2022年卒~2025年卒)>
ランキングはランキングに過ぎないのですが、さっと見て気づいたことは、有効投票数が年々増加(23卒2332人、24卒2876人、25卒3407人)。Sky社が年々上昇(*5)。トヨタシステムズが毎年安定して10位前後、BIPROGYが社名変更で、24年卒でいきなり上位に(でも翌年-25卒-には24位)、あたりでしょうか。投票方法が「199社のノミネート企業の中から、投票者1名につき志望企業を5社~最大7社を選択」のため毎回固定でかつ知名度が高い企業に集まるのは仕方ないですが。
「第六夜 OB訪問で悩む管理者の夜」の注釈1では、2019年卒~21年卒までのランキング、そして「第弐拾八夜 OB訪問で悩む管理者の夜-その2」では2020年卒~23年卒の4年分、今回は2022年卒~2025年卒分です。
21位以下を知りたい場合は、以下のリンクへ。
・25卒(https://www.nikki.ne.jp/event/20240515/)
・24卒(https://www.nikki.ne.jp/event/20230509/)
・23卒(https://www.nikki.ne.jp/event/20220510/)
・22卒(https://www.nikki.ne.jp/event/20210513/)
・21卒(https://www.nikki.ne.jp/event/20200514/)
・20卒(https://www.nikki.ne.jp/event/20190514/)
就活を変革する学生はいるのか
今回は、約2年ぶりに就活学生向きのネタを書いてみました。注釈3ではちょっとプロンプトエンジニアリングでどこまで遊べるかを出してみました。はてさて本題に戻って、学生の質問内容って本当に変わってこないです。ITは進化し、プロセスも変化しているのに、学生の意識や質問(本当にそれが聞きたいの?)は変化がない。それでいいのだろうか?
では良き眠りを(合掌)。
「今、僕は自分にできる一番大切なことをやっているだろうか」byマーク・ザッカーバーグ(フェイスブックの創設者)
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- 商標について
*1 ITパスポート試験。業界人であれば合格は必須です。
*2 常駐を嫌う学生は多いですね。でも、会議や打ち合わせ、作業環境を考えると常駐が一番楽なんです。コスト面でも時間面でも。時間面はWEB会議でかなり改善はしましたが、環境はセキュリティ面があるのでインターネット経由せずに物理的に近いほうが良いですね。
*3 すっごく簡単にいうと、生成AIに作業をさせるための指示文。主要な4要素は、命令(Instruction)、背景(Context)、入力(Input Data)、出力形式(Output Indicator)。
例えば「メジャーリーグの昨年の勝敗データをもとに、本年の優勝確率をギャル口調で100文字で答えてください」とか。ちなみに回答は「2024年のデータから見ると、ドジャースが今年も優勝候補No.1!でも、ヤンキースも負けてないから、油断は禁物よ!」でした。大阪弁だと「2024年のデータから見ると、ドジャースが今年も優勝候補No.1やで!でも、ヤンキースも負けてへんから、油断は禁物やで!」です。少しプロンプトを修正したりすると「2024年のデータによると、ドジャースの勝率は61.2%、ヤンキースは58.0%でした。今年の優勝確率はドジャースが最有力です」さらに、文字数を増やしたりあれこれすると「2024年のデータによると、ドジャースの勝率は60.5%、ヤンキースは58.0%でした。2025年の優勝確率はドジャースが最有力です。注目選手としては、ドジャースのショウヘイ・オオタニ(打率.310、54本塁打)やヤンキースのアーロン・ジャッジ(打率.322、58本塁打)が挙げられます」になります。
*4 大手で昭和な社員が多い会社の実名は避けさせていただきます。結構自称ホワイト企業で多いのですが、要するに社畜で昭和な方々にとってホワイトなだけのような気もします。
*5 Skyの人気はCM効果なのでしょうか?
Sky株式会社のCMギャラリーは以下。
https://www.skygroup.jp/commercial/choice.html
前回は藤原竜也押しでしたが、さらに溝端淳平、吉田鋼太郎、芳根京子も出演。いいところをついていますよね。
連載一覧
筆者紹介

大手IT会社に所属するPM兼SE兼何でも屋。趣味で執筆も行う。
代表作は「空想プロジェクトマネジメント読本」(技術評論社、2005年)、「ニッポンエンジニア転職図鑑』(幻冬舎メディアコンサルティング、2009年)など。2019年発売した「IT業界の病理学」(技術評論社)は2019年11月にAmazonでカテゴリー別ランキング3部門1位、総合150位まで獲得した迷書。
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