システム管理のカリスマかく語りき -「システム管理者の眠れない夜」著者 柳原 秀基氏-

第4回 想像力を逞しくして未曾有の大地震に立ち向かう

概要

「システム管理者の眠れない夜」著者 柳原 秀基氏によるコラムです。

 オブザーバの柳原です。2011年3月11日、未曾有の災害である東北地方太平洋沖地震が発生しました。このコラムをお読みの皆さんは、企業などの情報システム運用や、システム開発、販売に関わっておられる方がほとんどでしょうから、その立場からこの未曾有の災害にどう立ち向かうのかを考えていきたいと思います。

 ただ、この原稿を書いているのは3月13日であり、未だ被害の全貌は判明していません。福島県での原子力発電所の事故対応も進行中です。このため、記述の内容に誤りが含まれる可能性があることを、最初にお断りしておきます。

 

目次
1.行政当局と専門家に協力するアイデアを絞れ
2.企業にできることは沢山あるはず
3.余談

 

1.行政当局と専門家に協力するアイデアを絞れ

 筆者は大阪在住ですので、1995年に発生した阪神大震災を身近に経験しています。そしてその復興には10年単位で時間がかかっていることも見てきました。今回の東北・関東大地震ではその規模が桁違いであり、津波が広い範囲で大きな被害をだしていること、福島の原子力発電所での予想もしなかった事故などを見ると、これから長期戦になることがはっきりしています。

 まず最初に人命救助、原子力発電所の安全化、避難所での人の健康の維持対策と並行して遺体収容、通信などのインフラの仮復旧、仮設住宅の建設と移住、といった段階がしばらく続くはずです。この初期段階は、社会インフラが破壊された地域での活動ですから、自己完結型の組織である自衛隊とそれに協力する民間の専門家が主役です。

 被害が甚大かつ範囲が広いため、この期間は長期にわたる可能性があるでしょう。残念ながら、この初期段階で災害に巻き込まれていない人々にできることは少なく、可能なことは募金や行政当局からの協力要請に応える事に限られます。

 その一例が、東日本における電力不足への協力要請や地域別の計画停電への協力でしょう。この段階では国家レベルの共同体維持が最優先ですから、経済的な損得で協力する・しないを判断すべきではないと思うのです。人命に関わる医療や交通などの現場を除いて、すべての産業と消費者が協力すべきテーマです。節電を担当する大臣も任命されるぐらいですから、おそらく、東日本での電力不足は長期化します。私たちはそこで生活し、事業を継続していくためのアイデアを絞りましょう。

 情報システムの運用を担当していれば、容易に想像できるのはサーバの処置です。サーバをシャットダウンしようとすれば、その前にデータのバックアップも必要でしょう。また、サーバをシャットダウンすると、次の起動時にトラブルが発生しやすいことも、私達は経験的に知っています。また、データ入出力時間の見直しなど、業務手順の変更も必要になります。情報システムのプロとして、こうした対応を迅速に進めていただきたいと思います。

 

2.企業にできることは沢山あるはず

 被災した人々には大人も子供もおられます。今回の津波被害に遭った町では、行政組織を含め、ほぼすべての産業機能が破壊されているようです。復興には何年もかかるでしょう。当然、そこではすぐに働くこともできませんし、子供たちは教育を受けることもできません。避難先や仮設住宅で生きることができたとしても、そのままでは社会的な生活に復帰することは絶望的なのです。

 阪神・淡路大震災の時もそうでしたが、多くの子供たちが、被災していない街に住む親族を頼って転校することになるでしょう。では頼る親族がいない場合はどうすればいいのか。このあたりが、アイデアを絞るヒントになるかもしれません。社宅の空室に転校生とその家族を受け入れる企業と被災者をつなぐWebサイトを立ち上げてはどうでしょうか?もちろん今すぐには役にたちませんが、おそらく、半年後には必要とされるサービスではないでしょうか。

 これは一例に過ぎません。被災地の皆さんの生活は刻々と変わっていきます。そこで何が必要になってくるかを、想像力を逞しくして考えようではありませんか。そしてそのアイデアを実現することを通じて、私たちはこの未曾有の大災害に立ち向かうことができると思うのです。

 このような言い方をすると、災害に乗じてビジネスに繋げようとしている、と聞こえるかもしれませんが、そんなことはありません。被災者や被災した街が必要としているものは何か?を考えることが重要なのです。それを実行する主体が企業なのか、それとも行政組織なのかは後の問題です。

 

3.余談

 Twitter上では、今回の災害に関するつぶやきが溢れています。中には貴重な意見や、現地からのタイムリーな情報、素晴らしいアイデアも含まれていることは確かです。しかし筆者の場合は、ハッシュタグ #jisinと#jishinに目を通す程度です。他はほとんど読んでいません。

 何故なら、Ustreamに流れているNHK TVや、複数のWebサイトのチェックだけでもたっぷり情報は入ってきますし、避難先の状況などはTwitterの文字だけではとても足りないからです。

 また、少し言い辛い事ですが、Twitterにはこの非常事態の中で非難めいた発言や、目に余る感情的な(半ば妄想的であったりデマ)発言も多く流れています。もちろん、社会には様々な思想や感情を持った人々がおられることは分かっているのですが、今回の非常事態の中で、限られた時間の中で情報を取得するためには、Twitterはノイズも多く、効率的ではないと思いました。

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筆者紹介

柳原 秀基(やなぎはら ひでき)
「システム管理者の会」オブザーバー

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