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- <掲載にあたって>
最近のシステム化では、ひとつの業務プロセスを実行するのに、異なるサーバー上にある複数のシステムをリアルタイムに連携する場面が増えています。受注から物流へと出荷指示がリアルタイムに連携し、生産入庫状況は即座に在庫引き当てや納期回答に反映される。顧客が直接入力するWeb受注の画面は後方の基幹システムと一体化して、そのまま受注処理に流れていく・・・。その多くは、何らかの形で基幹系のシステムに関わる業務プロセスです。既存の基幹業務システムと業務支援系のシステムを連携するとか、ERPパッケージを自社開発のシステムや物流委託先と連携するなど、様々な形で基幹系システムの統合化が進んでいます。
従来はシステムごとに伝票処理をおこない、夜間バッチで他システムとデータを共有していた。そういった基幹系の業務プロセスが、ひとつのトランザクションを複数のシステム間でリアルタイムに連携し、処理していく形へと変化している。その背景には、業務とシステムが一体化することで、システムの垣根を越えた横断型の業務プロセスが求められていること、さらに、基幹業務の範囲が伝票処理を中心とする後方業務から、顧客接点を始めとする最前線の業務へと広がっていることがあります。
業務と密着したシステムほど、事業の個性を受けて多様化し、時々の課題に応じて変化していきます。幅広い利用者層に合った使い勝手も求められます。これに対して、基幹業務には企業の基盤としての信頼性や安定性が要求されます。求められる特性や変化の頻度が異なる複数のシステム。これらを無理にまとめてひとつの巨大なシステムをつくるのではなく、それぞれの特性に合ったアプリケーションを、もっとも有利なプラットフォーム上に実現し、それを組み合わせてひとつの業務プロセスを実現するというのが、今日のシステム化の方向性となっています。
とはいえ、異なる特性のシステムを組み合わせれば、それに伴う複雑さや難しさが生じてきます。その代表例が、障害復旧です。複数システムにまたがるプロセスでは、異常をいち早く察知し、どこで障害が発生したのかを把握すると共に、影響範囲を特定するといった「探知作業」が、従来に比べて圧倒的に難しくなるというのが実感です。あるシステムで異常が発生した際に、どのシステムまで利用を中断すればよいのか、また、同一トランザクションが複数のシステムに存在している場合に、システム個々にどこを停止やリカバリーのポイントとすればよいのか、システムの停止判断そのものが困難です。
最新の運用ツールやバックアップ技術などによって、障害復旧力は大きく進歩しています。無停止型のシステムも出てきています。しかし、複数のシステムを組み合わせた業務プロセスでは、ひとたび異常が発生すると、障害箇所と影響範囲を特定することそのものに手間取り、結果として、復旧までに時間がかかってしまう事態が起きています。障害探知の早さによって、障害復旧全体の時間が決まってくる。逆に言えば、どれだけ運用の自動化を推進しても、障害発生時の探知に手間と時間がかかるために、思うように全体の業務効率が上がらないというのが実情です。
障害発生時の探知能力を高めること。この視点で改めて最新の運用技術を見ると、複数のシステムにまたがるトラッキングや状態監視など統合化を前提とした機能が強化されていることに気づきます。個々のシステムに閉じた監視や知識だけでは、現実に、業務プロセスを運用し、障害を復旧することはできなくなってきている。それに対する具体策が急がれています。それには、業務プロセス上でシステムがどのように連携し、動作するのか、そのルートとシステムごとの更新特性を把握しておくことがきわめて重要になります。複数のシステムにまたがる業務プロセスを運用するためには、業務プロセスの仕様に一歩踏み込んだ理解が求められ始めています。
<掲載にあたって>
事業基盤となるシステムが求められる中で、システム化を積極的に展開すればするほど、運用の重要性と難しさを痛感するといった場面が増えてきました。グローバルに展開するシステム、顧客接点と基幹系を連携したシステム、そして、システムの垣根を越えて一貫化する業務プロセス。 ごく当たり前のように描かれるこうしたシステムを実働し、事業に合った信頼性を確保していくには、これまでとは一段違った運用技術と基盤を確立しなければなりません。多くの企業がこれからの企業システム像を描き、ITマネジメントを見直す今、運用にも新しい価値観が必要になってきています。運用の地力がそのまま企業のシステム力につながり始めている--。 そうした実感を、実践の中で直面した課題と共にお伝えしていきます。
連載一覧
筆者紹介
札幌スパークル株式会社
システムコーデイネータ
システム・コンサルタントとして、グランドデザインやプロジェクト・プラン策定、IT部門の組織づくりなどに取り組んでいる。パッケージやワークフロー、ASPサービスなどを組み合わせたソリューションで多数の実績を持ち、ユーザーとベンダーの双方に対するコンサルティングを提供している。「SAP完全解説」監修に加え、「日経コンピュータ」「ソリューションIT」を始めとする媒体各誌にレギュラー執筆。
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