当時弊社のPCのOS標準はWindows95でしたが、Windows3.1のPCも数多く残っており、98や2000やXPのPCも混在し、標準を決めても、ほとんど統制のとれていない状況でした。Officeの保存形式も統制できず、開けない添付にいらだつ利用者もいました。保守についても、導入時の経緯により、バラバラで保守レベルもその時々の判断で決められていました。当然全体的な管理には程遠い状態で台数も10,000台位というおよその数字しかわからない状態でした。
そこで、PC更新と保守をアウトソースし、ガバナンスを徹底させた運用管理をめざし、1年間で3,000台、3年ですべてのPCを更新するプロジェクトを開始しました。最も困難だったのが、どこに何台のPCがあり、それぞれにどのようなアプリケーションが導入されているかを把握することでした。弊社ではこの作業を現調と呼びますが、この費用と約300種類の搭載アプリケーション数の多さやとても管理できない数多くの市販アプリケーションが問題になりました。
3年間なんとか悪評を甘んじて受け、更新を完成させました。弊社用にカスタマイズされた状態で工場にてセッティングされた標準PCと業務の形態の応じた保守レベルを定め、PC台帳もアウトソース先で管理されるようになりましたが、これまで勝手気ままにPCを使っていた利用者からは恨まれることになりました。同じモデルを大量に使うので、HDの欠陥やマザーボードの欠陥で数千台のPCを再度交換するトラブルもあり、利用者からは不評を買いました。
それでも4年後には、自動的に最新のPCが来るというメリットを信じて更新を完成させ、私はプロジェクトを解散させ、維持管理チームに引継ぎました。最終的には、関連会社も一部更新に参加したので、12,000台の更新でした。
私のPCは2001年7月に率先して更新しましたが、4年3ケ月たった今も自動更新されません。実は4年前に苦労した現調がまた必要なPCが多いことがわかったのです。標準PCには申請を出さなければアプリは追加できない仕組みになっていますが、4年の間に数多くのアプリが導入されまた管理不能に陥っていました。
企業文化として、PCの利用法を規制できなかったことがPC運用管理での失敗の原因だと思っています。金融系の会社では、このような規制は当然だと聞いています。皆さんの会社はどうでしょうか?散々文句を言われたPC更新でしたが、この自動更新の点を除けば、その後のセキュリティ問題での対応を考えるとこのプロジェクトのおかげだったと自負しています。Active DirectoryやOAサーバ等の環境も統一され、今は関連会社からのサービス加入も増えており、PCはこのサービスが当たり前になってきました。環境を統一するためには、例外をいかに認めないかと、抵抗に耐えうる組織的なバックアップが必要だと痛感しています。一旦統一された環境を維持できれば、そのメリットは計り知れません。
連載一覧
筆者紹介
長年Beaconユーザ会で研究活動の第一線で活躍され、その後、研究会会長、ユーザ会幹事等を歴任されました。運用部門に8年在籍後、データベース設計、海外システムの開発・運用、インフラ系の整備推進等の多くの業務に精通されたシステム部門の「匠」的存在の方です。 現在は、会社でのお仕事は勿論のこと、本文にもありますNPO活動、奥様との月1回の国内外の旅行等、盛りだくさんの日々をおくられています。
コメント
投稿にはログインしてください