概要
ITサービスマネジメントを専門に受け持つ組織「SMO(Service Management Office)」を解説するコラム。 ITサービスによる事業への貢献と継続的な成長を担うSMOの設置と効果ををご紹介します。
今般、ITサービスマネジメントを専門に受け持つ組織「SMO(Service Management Office)」が注目されています。サービス業界をはじめ、製造・金融業界などのシステム運用部門において、ITサービスマネジメントの実現に向けた有効手段と考えられています。また、全体最適を実現するために、パートナーとの連携を強化しコントロールする「VMO(Vender Management Office)」の役割も包含します。今回は2回に分けて、SMOを設置するための具体的な手法や、活動方法についてご紹介します。
今、IT部門に求められているものとは?
皆様は、ITサービスやシステム運用の状況を報告する会議において、経営幹部や、事業部門に対してパフォーマンスレポートや報告書などを提示した際に、その「数値やデータが意味するもの」が「ビジネスにどのように貢献している」のかを問われて、明確に答えることはできるでしょうか。
ビジネスとITの連携が必要不可欠となった昨今、ITサービスやシステム運用がどのようにビジネスや事業に貢献しているかを可視化することが求められています。曖昧なビジネス要件を、サービス要件として定量的に捉え、ITサービスによる貢献度合いや費用対効果を明らかにしていくアプローチが必要不可欠です。さらに、システム運用管理という非機能要件だけでなく、機能要件としての業務プロセスを理解し、ビジネスに対してITサービスで貢献できることを経営に対して提案し続けなければなりません。
プロジェクトには終わりがあり、ITサービスは連綿と続く
システム開発においては、プロジェクトが設立されPMOなどによる管理のもと、企画されたシステムやアプリケーションが、開発、テスト、運用部門への移管を経てリリースされ、ITサービスとして提供されます。しかし、開発プロジェクトには「始まり」と「終わり」があり、リリース終了後一定の期間を経たプロジェクトは解散し、担当者も次の開発や運用へと移るため、ITサービスの提供における役割と責任が曖昧になってしまいます。
ITSMを実現するためのITIL活用プロジェクトにおいても同じことが起こりました。アセスメントからプロセス設計、ツールの導入、教育などを経て実装されたITILプロセス(インシデント管理や変更管理)などもプロジェクト解散後、継続改善するための役割と責任が曖昧になってしまい、成果を十分に得られない状態になっているIT部門が数多く見受けられます。
この状態の根本原因の一つとして、ITサービスを全体最適の視点から「継続的に統括・運営」する「役割と責任」を明確にした「機能・組織」が不在であることが挙げられます。
ITサービスによる事業への貢献と継続的な成長を担うSMOの設置
前述した根本原因を解決し、ITSMを実現するためには、顧客・利用者の関係者も含めたIT部門を中心とする常設的な組織・機能であるSMOの設置が必要不可欠です。
ITサービスによる事業への貢献を実現するためには、IT部門、特にシステム運用部門が中心となって推進すべきといえます。そのためには、IT部門の顧客・利用者である経営や事業部門との緊密な連携なくしてITSMの実現は難しいと言えます。
また、IT部門がサービスプロバイダとしてITサービスを提供するためには、メーカーやベンダー、サプライヤの存在も欠かすことができません。SMOは全体最適を実現するために、パートナーとの連携を強化しコントロールするVMOの役割も包含することが必要です。
次回は、「SMOの機能と活動モデルのご紹介」の予定です。
連載一覧
筆者紹介
メーカー、ユーザ企業、パッケージベンダ、SIerなどの企業に在籍し、様々な立場でのITサービスにかかわる業務を経験。ITサービスにおける「提供者」側と、「顧客・利用者」側の双方の立場で業務を遂行した経験を活かして、お客様のITサービスマネジメントの実現に向けた各種サービスを提供しています。
・ITIL Manager V2 / ITIL V3 Expert
・itSMF Japan 変更管理プロセス研究分科会 座長、SLA分科会メンバ
コメント
投稿にはログインしてください