- 目次
- はじめに
- 近年のデジタル変革(DX)の現状と、ウィズコロナ(or アフターコロナ)によるリモートワークの普及
- リモートワークによる新たな課題
- EQ(感情知能)、インターパーソナルスキルとは
- EQを高める方法
- インターパーソナルスキルを磨くには
- まとめ
- 最後に
はじめに
本シリーズで過去3回にわたりコラムを掲載させていただきました。
◎2022/07/22 VUCA時代におけるDXキャリア形成 ~偶然を作り出す行動指針~
https://www.sysadmingroup.jp/kh/p26615/
◎2023/01/27 DXプロジェクト現場を支える伴走者の重要性について
https://www.sysadmingroup.jp/kh/iot210/
◎2023/08/07 DXエンジニア、DXコンサルタントに必要なマインドセットとは?
https://www.sysadmingroup.jp/kh/iot217/
今回は締めくくりとしまして
【デジタル変革(DX)の成功には人間関係構築力が必要】
という観点でコラムを書かせていただきます。
近年のデジタル変革(DX)の現状と、ウィズコロナ(or アフターコロナ)によるリモートワークの普及
既に皆さまご存じの通り、デジタル変革(DX)は、技術の進化とデジタル化の波によって加速しています。
企業はビジネスプロセスの自動化、データ駆動型の意思決定、顧客体験の向上、そして新しいビジネスモデルの採用を進めており、クラウドコンピューティング、ビッグデータ、人工知能(AI)、IoT(モノのインターネット)などの技術が活用されています。
つまり、デジタル変革(DX)の推進により、業務の効率化、コスト削減、イノベーションの促進が期待されています。
またコロナ禍を契機に、多くの企業でリモートワークが急速に普及しました。
この変化は、従業員のワークライフバランスの改善、通勤時間の削減、地理的な制約の緩和、などの利点をもたらしました。
しかし、一方で、組織内のコミュニケーションの問題、クイック会話しづらい点、社内コミュニティの弱体化、チームワークの低下、社員の孤立感増加、信頼の構築困難、モチベーションの低下など、新たな課題も生じています。
リモートワークによる新たな課題
リモートワークによる新たな課題を改めて列挙してみます。
・組織内のコミュニケーションの問題:
リモート会議での説明不足やクリアでない指示により、誤解が生じる。
例えば、詳細情報がメールやチャットで不完全に伝えられ、結果としてチームメンバーが異なる方向で作業を進めることがある。
・クイック、短時間の会話がしづらい点:
リモート環境では、クイック、短時間の会話がしづらい。
不可能ではないが互いの業務状況がわからず、結果として不必要な再作業が発生する場合がある。
・社内コミュニティの弱体化:
オフィス内での偶発的な会話が消失し、チーム間の繋がりが弱まる。
例えば、コーヒーブレイクやランチタイムの雑談がなくなることで、社員同士の非公式な情報共有や親密さが失われる。
・社員の孤立感増加:
特に新入社員や中途社員、部署間異動のあった社員が、チームや組織に溶け込みにくくなる。
社員が孤立し、職場に属する感覚を失うケースが増える。
・信頼の構築困難:
非対面環境では、共感や信頼の構築が難しい。
例えば、リモートワークでの新しいプロジェクトリーダーがチームメンバーからの信頼を得ることが困難になる場合がある。
・モチベーションの低下:
対人関係の希薄化により、社員の職場への帰属意識やモチベーションが低下する。
チームメンバー間の協力やサポートが減少し、個々の成果にも影響を及ぼす。
これらの問題に対応するためには、効果的なリモートコミュニケーション戦略の策定、チームビルディング活動の強化、そして対面とリモートのハイブリッドな働き方の導入などが考えられます。
またこのような状況の中、効率的にデジタル変革(DX)を推進していくには、他者との関係を効果的に築く能力、すなわちEQ(感情知能)やインターパーソナルスキルも重要になってくると私は考えております。
EQ(感情知能)、インターパーソナルスキルとは
◎EQ(感情知能)とは
EQ(感情知能)、別名「感情的知能指数」は、個人が自己の感情を認識、理解し、それを管理・制御する能力、さらに他人の感情を理解し、人間関係を円滑にする能力を指します。
EQは「Emotional Quotient」の略で、知能指数(IQ)とは異なる概念です。
EQの主な要素は以下の通りです:
自己認識:自分の感情を正確に理解し、それが自分の思考や行動にどのように影響を及ぼすかを認識する能力。
自己管理:不安定な感情や衝動を適切に管理し、正の行動に転換する能力。
社会的認識:他人の感情、動機、行動を識別し、理解する能力。共感力もこれに含まれます。
関係管理:他人との関係を効果的に築き、維持し、調和をもたらす能力。これにはコミュニケーションスキルや対人関係の構築が含まれます。
簡潔に申し上げると、EQとは自己と他者の感情を理解することであり、それをもとに人間関係を構築する知能と呼ぶことができます。
◎インターパーソナルスキルとは
インターパーソナルスキルは、他者と効果的にコミュニケーションし、関係を築き、協力して仕事を進める能力です。これには、コミュニケーションスキル、チームワーク、対人関係の構築、紛争解決、共感、社交性などが含まれます。これらのスキルは、職場内外での成功に不可欠であり、特にチームベースのプロジェクトやリーダーシップの役割を担う際に重要です。
つまりインターパーソナルスキルは、EQと異なり感情だけではない、主に他人との相互作用を中心に考えられたスキルと呼ぶことができます。
◎デジタル変革(DX)時代におけるこれらのスキルの重要性
デジタル変革(DX)時代においては、技術的なスキルと同じくらい、EQとインターパーソナルスキルが重要であると私は考えております。以下はその理由です。
・コミュニケーションの複雑化:
デジタルコミュニケーションでは、非言語的手がかりが不足し、誤解が生じやすい。EQとインターパーソナルスキルがこれを補い、意図を明確に伝え、相手の感情を理解するのに役立ちます。
・リモートワークにおけるチームダイナミクス:
リモート環境では、チームの結束を保つためには、高いレベルの対人関係スキルが必要です。信頼と協力を築くために、共感や社交性が重要になります。
・変化への適応:
デジタル化による変化に対応するためには、柔軟性と適応性が求められます。EQはストレス管理や変化への適応を助けるため、このような状況で重要です。
・リーダーシップの効果性:
効果的なリーダーは、チームメンバーの動機付けやエンゲージメントを高める能力を持っています。EQとインターパーソナルスキルは、リーダーシップの質を高め、組織全体の生産性と満足度を向上させます。
デジタル時代には、技術が進歩する一方で、人間らしさを保ち、効果的な人間関係を築くことがますます重要になっています。
そのため、EQとインターパーソナルスキルの習得と向上は、デジタル変革(DX)の成功において不可欠な要素であると私は考えております。
EQを高める方法
EQ(感情知能)を高める方法には、自己認識、自己調節、共感性、社会的スキル、動機づけなど、いくつかの重要な領域に焦点を当てたアプローチがあります。
以下に具体的な方法をいくつか紹介します。
1. 自己認識の向上
感情日記の維持:
毎日の感情やそれに影響を与えた出来事を記録する。これにより、自分の感情をより深く理解し、パターンを識別できるようになります。
自己反省:
日々の経験から学ぶことを意識し、自己の行動や反応について考える。
2. 自己調節の発展
ストレス管理:
瞑想、深呼吸、リラクゼーション技法などを使ってストレスを管理する。
反応の遅延:
感情的に反応する前に一時停止し、冷静になるための時間を持つ。
3. 共感性の育成
他者の視点を理解する:
相手の立場に立って物事を考え、他者の感情や動機を理解しようとする。
アクティブリスニング:
相手が話しているときは、全注意を払い、相手の言っていることを理解しようと努める。
4. 社会的スキルの向上
効果的なコミュニケーション:
明確で、誠実なコミュニケーションを心がける。非言語的な手がかりも意識する。
ネットワーキング:
異なるバックグラウンドを持つ人々との関係を築き、社交スキルを磨く。
5. 内発的動機づけ
自分の価値観と目標の明確化:
自分が何を大切にしているか、長期的な目標は何かを明確にする。
ポジティブな態度の維持:
挑戦を成長の機会と見なし、前向きなマインドセットを保持する。継続的な学びと実践
EQに関する書籍や資料の読解:
EQに関する知識を深めるために、書籍やオンライン資料を読む。
フィードバックの求めと反映:
他者からのフィードバックを求め、それを自己改善に役立てる。
EQを高めるためには、これらの技術を継続的に実践し、自己と他者に対する理解を深めることが重要です。
また、プロフェッショナルなコーチングやワークショップに参加することも、スキルの向上に有効です。
インターパーソナルスキルを磨くには
インターパーソナルスキル(対人スキル)を身に着けるためには、以下の方法やアプローチが役立つと考えています。
自己認識と自己成長:
自分自身を理解し、自己評価を行うことで、他人との関わり方を向上させることができます。自己意識を高め、自分の強みや弱みを理解し、成長の機会を見逃さないように。
共感力と理解力の向上:
他人の感情や視点に敏感になり、共感する力を養うことが重要です。相手の立場や背景を理解しようとする姿勢を持つことで、対話やコミュニケーションが円滑になります。
効果的なコミュニケーション:
聴く力を養い、相手の意見やフィードバックを尊重する姿勢を持つことが大切です。明確で適切な言葉遣いを使い、自分の思いや意図を伝えるスキルを向上させます。
協力とチームワーク:
チーム内で協力し、他のメンバーと協力して目標を達成する経験を積むことで、協力とチームワークのスキルを向上させることができます。
コンフリクト解決のスキル:
衝突や対立が生じた場合、冷静に対処し、建設的な方法で解決する方法を学びましょう。感情をコントロールし、問題を解決するための戦略を持つことが大切です。
フィードバックの受け入れ:
他人からのフィードバックを受け入れ、成長の機会として捉えることが重要です。ポジティブな点だけでなく、改善が必要な点にも耳を傾けること。
リーダーシップと影響力:
他人を指導し、影響を与える力を養うこともインターパーソナルスキルの一環です。リーダーシップの原則を学び、他人をサポートする能力を高めること。
トレーニングと練習:
インターパーソナルスキルは練習を通じて向上します。日常生活や職場でのさまざまな状況でこれらのスキルを活用し、反復することで自然とスキルが身に付いてきます。
コーチングやトレーニングの受講:
インターパーソナルスキルを向上させるためのコーチングやトレーニングプログラムに参加することで、専門家からの指導を受けながらスキルを高めることができます。
ミスと失敗から学ぶ:
完璧でなくても構いません。失敗や誤りから学び、次回に活かすことが大切です。挑戦し、新しい経験を通じてスキルを磨くこと。
以上の方法を組み合わせて、インターパーソナルスキルを向上させることができます。
まとめ
デジタル変革(DX)の成功には、単に技術的な側面に焦点を当てるだけでは不十分であり、推進していく人間の人間関係構築力が不可欠です。
特に人間関係構築力において、これからの時代に必要と思われるEQ(感情知能)、インターパーソナルスキル、および対面でのコミュニケーションの要素を交えてまとめます。
EQ(個人の感情管理)の重要性:
EQは、自己と他者の感情を理解し、適切に管理・調節する能力を指します。
これには、自己認識、自己調節、社会的認識(他者の感情を理解する能力)、関係管理(感情を使って他者との関係を効果的に築く能力)が含まれます。
DXの成功には、感情を理解し、コミュニケーションを円滑にし、人々をモチベーションづける能力が重要です。
感情的なインテリジェンスを高めることで、組織内での連携やチームの協力が促進されます。
インターパーソナルスキル(他人との相互作用)の重要性:
インターパーソナルスキルは、他者と効果的にコミュニケーションし、関係を築き、協力して仕事を進める能力です。
これには、コミュニケーションスキル、チームワーク、対人関係の構築、紛争解決、共感、社交性などが含まれます。
DXのプロジェクトやイニシアティブでは、異なるチームや部門と協力し、コラボレーションを強化する必要があります。
インターパーソナルスキルは、プロジェクトの成功に直接影響を与えます。
対面でのコミュニケーションの重要性:
デジタル時代においても、対面でのコミュニケーションは非常に重要です。
なぜなら、非言語情報や感情を伝える手段が限られているオンラインコミュニケーションとは異なり、対面コミュニケーションは豊かな情報伝達手段を提供します。
対面コミュニケーションでは、言葉だけでなく、表情、ジェスチャー、声のトーンなどが情報伝達に寄与し、相手の感情や意図をより正確に理解するのに役立ちます。
特に重要なビジネスの意思決定や戦略策定、重要なクライアントやステークホルダーとの関係構築において、対面コミュニケーションは信頼と共感を築くのに欠かせない要素です。
また、相手の事情状況を即座に理解しやすく、クイックに会話しやすい、至急の対応にも受け身を取りやすいなどもメリットのひとつです。
デジタル変革において、技術的な側面だけでなく、EQとインターパーソナルスキルを向上させ、対面コミュニケーションの重要性を認識することは、組織およびデジタル変革(DX)の成功に向けた不可欠なステップであると私は考えております。
最後に
私がこうしてご機会を得て、ITコラム、IT講師、福岡でのIT勉強会、IT本の出版のお手伝いなどができたのも皆様との繋がりのお陰と考えております。
特に日本ITストラテジスト協会様との繋がりは今年で12年目となります。
今回のコラム掲載も元をたどると日本ITストラテジスト協会でのお繋がりがきっかけとなっており、年会費2,000円で様々な方との繋がりやご機会をいただくことが出来て感謝しております。
是非、ご興味をお持ちいただいた皆様、システム管理者の会、日本ITストラテジスト協会へのお申込みお待ち申し上げます。
ビジネス観点、技術ももちろん大事ですが、最終的には人間がやることである、ということを今後も意識していきながら私も引き続き精進しつつ、年男である今年、【飛躍の年】にしたく考えております。
今回も長文にお付き合いいただき誠にありがとうございました。
最後に本内容は私個人の見解に基づくものであり、所属する組織の公式見解ではないことを申し添えさせていただきます。
連載一覧
筆者紹介
陣 宏充
(一般社団法人 日本ITストラテジスト協会 理事)
福岡市在住
SI経験・DX(IoT/AI/xR/RPA)・新規事業開発経験を活かし、先端的なDigital技術活用によるBPR支援に従事。
【主な著書(いずれも共著)】
「IoT しくみと技術がしっかりわかる教科書」 技術評論社
【講師、講演歴】
・ロボット・IoT専門人材育成 講師(IoT推進ラボ)
・ET&IoT West(ナノオプトメディア)
・FukuokaIntegrationX ファシリテータ(FIX事務局、福岡市IoTコンソーシアム)
https://www.youtube.com/channel/UCbkle3SGyvz6XZeuYWeILhw/
・IoT Business Transformation講師(福岡市IoTコンソーシアム)
・IoT検定・IoTリテラシーWG講師(福岡市IoTコンソーシアム)
・大阪デザイン&ITテクノロジー専門学校 特別講師
【情報】
Twitter(@VMA_Japan)
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