職場のメンタルヘルス

第5回 健康度の高い職場づくり

概要

各企業におけるメンタルヘルスの取り組みはここ数年かなり熱心になっているように思います。その背景には、うつなどの心の病気で仕事を離れる、もしくは会社を去って行くといった従業員の数が増加しているからでしょう。多くの企業でメンタルヘルスに対する取り組みが熱心になっている一方で、依然として心の病気にかかる従業員の数が減らないという状態が続いています。その理由としてはいろいろなことが絡んでいると考えられますが、今月からの連載では、メンタルヘルスの現状と課題、その対策について紹介いたします。

第1回から第4回までは、メンタルヘルスの現状、ストレスと心の関係、メンタルヘルスとコミュニケーション、増える職場のうつ、といったテーマで紹介して参りました。メンタルヘルスも先ずは予防が第一です。今回は、その予防という観点から、健康度の高い職場(メンタルヘルス上の問題が起きにくい職場)を作り上げるために、何が求められるかについて紹介します。
 
 第3回のコラムの中で、コミュニケーションの良い職場ほどメンタルヘルス上の問題が起きにくいということを紹介しました。それ以外にもどのようなことが必要とされるのでしょうか。弊社(㈱ビジネスコンサルタント)では、健康度の高い職場とは、次のような職場であると考えています。
 
 これらの項目ができているとか、やっているならば、職場としての健康度が高く、メンタルヘルス上の問題が起こりにくい、また問題が起きてもすぐに対処できるので、メンバーは健康な状態を維持できると思います。皆さんの職場ではいかがでしょうか。
 
 例えば2番目の項目に関連した手っ取り早く簡単にできて、効果が上がる方法として、弊社でチェックインと呼んでいる毎朝のちょっとした話合いをお薦めしています。これは、1日の仕事のスタート前に、小グループで集まってその時点で気がかりなことや懸念を話すというものです。たとえば、前の日の夜に家族の誰かが病気になったことが気になっているとか、昨日は暑くてよく眠れなかった、といったようなことを話し合います。ここでは、その議題についてさらに話し合ったり、問題解決したりする必要はありません。話す側は、話すことで、その気持ちをいったん自分として認識し脇に置いておくことができます。聴いた人は、彼は今こんな気持ちなんだと認識し、心理的に彼への対応を準備しておくこともできます。みんなが何か一言以上話したら最後に、「それじゃ、(いろいろありますが)今日も1日よろしくお願いします。」と明るい挨拶をしてスタートします。このチェックインの効果は想像以上にあるようです。ある会社では、これを続けて、職場のコミュニケーションが良くなった、社員の表情が明るくなった、といった反応がありました。
 
 私たちは、通常、目の前の課題や相手とは関係のない気持ちを引きずっていることがあります。たとえば、朝、満員電車で足を踏まれてイライラしながら会社に到着して、その気持ちを持ったまま仕事に向かうなどです。こうした気持ち・感情は日頃はあまり重視することがありませんが、個人の気分には何らかの影響を与えています。そして、そうした面白くないといったネガティブな感情を抱いているようなときには、目の前にいる人に対して明るい気持ちで接することができず、イライラした気分をぶつけてしまうようなこともあります。チェックインは、これらの気持ちにいったん整理をつけるうえで役立つのでしょう。
 
 健康度の高い職場をつくるうえでは、何と言っても管理職層の方々のメンタルヘルスに関する理解が大切です。また、自分自身がストレスを与える要因になっていないかについて、客観的に自分を見る目を持っておく必要があります。どんなに周囲がアドバイスしたり、教育研修で知識を修得したとしても、本人に自覚がなければ何も行動は変わらないので、是非ともお願いしたい点です。この2点が出発点になります。そのうえで、健康度の高い職場づくりのための取り組みに入りますが、効果の高い取り組み方として次のステップを紹介しておきます。これは、できるだけ職場の全員で取り組むことが効果的です。
 
 弊社では、職場健康度診断として幾つかの診断があり、お客様の要望や予算などに応じてカスタムメードでご提案することも可能です。最近では、個別にIDを発行して、WEB上で簡単に質問に答えていただくことも可能になり、短期間で質問の結果を出せるようになりました。代表的な診断としては、『セルフエスティーム診断』があります。詳しくは次回にご案内します。

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筆者紹介

筆者紹介
伊藤 弘子(いとう ひろこ)

1986年株式会社ビジネスコンサルタント入社。営業職を経て、コンサルタント部門へ移籍。メンタルヘルストレーニング、セルフエスティーム向上トレーニング、モチベーションの高いチーム・部下を支援するマネジャー研修に力を注いでいる。

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