概要
GS21シリーズの新モデルが3年ぶりに発表されました。これに先立ち、PRIMEQUESTの新しいXSPサポートについてもホームページ上でひっそりと公表されています。5月に開催される富士通フォーラム2009では新機種に関する紹介を期待していますが、今回の発表内容の本質を探り、考察を進めていきます。
2.1 富士通フォーラム2009での最新情報
今年のGSセミナーは新モデルが発表されたこともあり昨年以上に盛況でした。130ほどの席はほぼ埋まり、20名以上の関係者は立って聴講していました。
前回のレポートに追加すべき内容は以下の通りです。
・2013~2014年度に計画されている次期エンハンスはGS21 1600/1400が対象。チャネル、I/Oを強化。
→ 中型機、マルチサーバユーザへのメッセージはなし。
・PRIMEQUESTのXSPサポートについては一言もふれず。
→ 昨年と変わらず消極的なスタンス。
・XSPの基本部(GSS21i V80)にVM機能(AVM/EXS)が標準となる。
→ 内部統制対応(本番環境と開発環境の分離)、価格は据え置き。
・既存業務のWeb化(Interstage Host Access Service)が昨年から一押しの機能。
→ 2008年10月出荷済。価格が高かったためプロセッサライセンスからクライアントライセンスに見直し。
GSの移行先については、前回レポートの図3で問題ないと確信しています。但し、 「コスト削減=PRIMEQUEST」にはならないようです。
2.2 GS21 500からPRIMEQUESTへの移行計画中
GS21 500でXSPをお使いのお客様がいらっしゃいます。次機種もXSPを使うとしたら、移行先のCPUはGS21 1400(以降GSと略す)かPRIMEQUEST(以降PQと略す)が考えられます(前回レポートの図3)。
筆者が考えたGS移行難易度チェックシートを表3に紹介します。【A】【B】は移行先がGSの例、【C】は移行先がPQの例です。
【A】:メーカ推奨の移行パス。
【B】:余程の事情があれば、CPUのダウングレード(表内の**/DG)を検討。
【C】:PQを採用するときも、CPUはアップグレードなのかダウングレードなのかが大きなポイント。
このお客様ではCPUのダウングレードが前提条件となっているため、表3の①がYesになっています。
表3 GS移行難易度チェックシート
GSのコストを下げるツボは①で、これが可能なのがGSの強みです。
多くのSEは【B】ができないのが現実です。PQだからといって、勢いで【C】を採用すると非常に危険です。
お客様の最優先課題がCPUダウングレードであれば引き続きGSを採用して頂く。PQにすることが第一優先ならCPU能力(①)を下げるのは諦め、単体CPU性能(②)の低下も最小限に抑えることが重要です。
少しわかりにくいかもしれませんが、CPUは性能と能力を区別して考える必要があります(表4)。AVMはCPU能力をコントロールする機能で、CPU性能はコントロールできません。マルチプロセッサはそのオーバヘッド(MP損)がどの程度なのか予測及び実測がむずかしく、CPU性能と能力の両方に影響を及ぼします。
表4 CPU性能と能力の区別
表4 CPU性能と能力の区別
以上、解説をしましたが、PQはCPUのアーキテクチャ(④)が変わるため、実際にどういう性能特性が出るのかわかりません。メーカには積極的に情報公開をしてくれることを願います。現状では、GS上で必要最低限のチューニングをすることでリスクを低減させることが必要です。PQ 520Xよりも大きなマシンへのCPUダウングレードも時期尚早と考えます。
2.3 富士通メインフレームの今後
GSの稼動数は約3,000台と言われています。10年後にはどのくらいのGSが稼動しているでしょうか?
2014年に次期エンハンスの計画があり、メーカがGSを積極的に無くす努力をするとは思えません(新規に顧客開拓するとも思えませんが)。
稼動数が年10%で減少していくと、10年後には約1,000台になります。
多くがXSPユーザですから、OSを一つに集約することもむずかしいでしょう。
ここ数年、GS関連には大きな動きがありました。
・GS21 1400/1600シリーズの発表
・PRIMEQUESTでのXSPサポート
・内部統制強化(RACF等)
・CPU能力変動型のアウトソーシング
これから数年間はこれらのフォローが中心になると思います。
おわりに
2007年6月から連載を開始した「富士通メインフレームの本質を見る」シリーズは今回をもって終了します。お付き合いくださった皆様、本当にありがとうございました。性能改善などのレポートは、10年後でも参考にして頂ける内容だと思います。
GSのSEにとって性能評価やサイジングは最も苦手な作業であり、避けて通ろうとします。そのため、現場を担当されているお客様が主導権を握り、営業・SEをコントロールすることが無駄なコストを削減する第一歩と考えます。本レポートはそのネタ帳として使って頂くこともできます。
筆者は、あと20年間はこの仕事を続けると決意しております。それまでGSが残っているかわかりませんが、どこかで皆様とお会いできること、お役に立てることを楽しみにしております。
連載一覧
筆者紹介
有賀 光浩(ありが みつひろ)
株式会社アイビスインターナショナル 代表取締役
1963年生まれ。1985年富士通株式会社入社。1992年~2003年まで社内共通技術部門で国内外のメインフレームの性能コンサルティングを実施、担当したシステム数は1,000を超える。2000年からは大規模SIプロジェクトへの品質コンサルティング部門も立ち上げた。
2004年に株式会社アイビスインターナショナルを設立。富士通メインフレームの性能コンサルティングとIT統制コンサルティングを行っている。
技術情報はhttp://www.ibisinc.co.jp/で公開中。富士通やSI’erからのアクセスが多い。
当サイトには、同名シリーズ「富士通メインフレームの本質を見る~IT全般統制の考え方」を3回、「富士通メインフレームの本質を見る~バッチ処理の性能評価と改善事例から」を6回、「富士通メインフレームの本質を見る~CPUリプレースの考え方」を3回、「富士通メインフレームの本質を見る~性能改善の現場」を7回、「富士通メインフレームの本質を見る~2009年度の最新トッピックス」を3回、「富士通メインフレームの本質を見る~2008年度の最新トピックス」を2回にわたり掲載。
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