概要
SEが何ヶ月も調査しているはずなのに一向に解決しない性能問題。ギブアップ寸前の問題の相談を受け、解決に導いていくプロセスを現場の視点で紹介します。性能改善の現場ではメインフレームの本質が見えてきます。
5.1 状況の把握
退避している性能データ(SMF)に抜けがあった
大規模な基幹システムなので、最初は信じられませんでした。実行されているはずのジョブの情報が見当たらず、おかしい、不思議だと悩み、データを調べ続けた結果、データの退避に不備があり歯抜けになっていたことが判明しました。20年も気づかなかったのでしょうか。
性能データ(AIM課金統計情報)の時間が9時間ずれている
データの相互確認で不備が見つかり、原因を調査していたら時間がずれていることが判明。初めてのケースでとても大変でした。
正常に動作しないツールがある
性能データは、今でも毎年少しずつ機能が追加されています。そのため、ごく稀に見える化ツールが正常動作しないことがあります。EXCELなどの制限にも注意が必要です。
性能データに何かおかしい数字がある
利用者が細部のパラメタまで調整したとしても完璧な性能データはありません。よくあることです。
5.2 麓の樹海に迷い込む
5.3 改善への歩み
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- 処理時間が長いのは、CPU時間が長いからである(処理時間の最大2/3)。これに加え、排他待ちが発生すると更に処理時間は長くなる。
- CPU時間が長いのは、データベースの排他制御処理に費やしている可能性がある。
- 特定のデータベース(AIM/VSAM)に対して多量のアクセスがある。そのため、処理が重なると排他待ちが発生する確率が高い。
- ここでデッドロックも多発している。
データベースの排他単位をページからエクステント(ファイル)に変える。
参照系のアクセスについては排他をかけず運用で対応する。
少しでも排他占有の時間を短くするために、最高の優先順位で実行する。
5.4 学び
連載一覧
筆者紹介
株式会社アイビスインターナショナル 代表取締役
1963年生まれ。1985年富士通株式会社入社。1992年~2003年まで社内共通技術部門で国内外のメインフレームの性能コンサルティングを実施、担当したシステム数は1,000を超える。2000年からは大規模SIプロジェクトへの品質コンサルティング部門も立ち上げた。
2004年に株式会社アイビスインターナショナルを設立。富士通メインフレームの性能コンサルティングとIT統制コンサルティングを行っている。
技術情報はhttp://www.ibisinc.co.jp/で公開中。富士通やSI’erからのアクセスが多い。
当サイトには、同名シリーズ「富士通メインフレームの本質を見る~IT全般統制の考え方」を3回、「富士通メインフレームの本質を見る~バッチ処理の性能評価と改善事例から」を6回、「富士通メインフレームの本質を見る~CPUリプレースの考え方」を3回、「富士通メインフレームの本質を見る~性能改善の現場」を7回、「富士通メインフレームの本質を見る~2009年度の最新トッピックス」を3回、「富士通メインフレームの本質を見る~2008年度の最新トピックス」を2回にわたり掲載。
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