概要
システム運用管理者や開発者にとって、電源や空調は水や空気と同じように「あって当たり前」の存在ではないでしょうか。しかし近年のサーバー高密度化や様々な対策要求に伴い、かつての汎用機(レガシー)のような、各種設備や温度・湿度をはじめとする環境の高度な監視・制御が必要になりつつあります。財団法人日本情報処理開発協会(以下、JIPDEC)の統計では、地震・火災や電源・空調など設備対策を必要とするものに起因するシステム停止原因の割合は約3割に上り、システム安定稼働対策の最大の要因となっています。一方で、設備は総務やビル管理業者・設備業者に任せきりで、詳細は知らないという例が多いと聞きます。本当にそれで良いのでしょうか。本稿では、経験に基づきこれらの実態について解き明かしていきます。
第1回 設備・環境管理とは
システム運用管理を担当されている方は、ジョブや資源の管理には日々難渋されていると思います。ただでさえ管理対象の多い運用部門で、何も不具合を起こさないことを常に要求されている皆様の心労は、経験してきた者として察するに余りあります。
ところでそのような状況を知りつつもあえてお伺いしますが、空調などの設備や温度・湿度・電源などの環境もしっかり管理されていますか?適切な温度・湿度や電源の余裕はどのくらいかご存知でしょうか?
JIPDECの平成17年情報セキュリティに関する調査によると、システム停止原因として、設備に起因するもの(地震・火災も含めた電源・空調など何らかの設備対策を必要とするもの、設備対策により影響を回避・軽減できるもの)が約3割(下図参照、一部集計)にも上るのです。さらにハード理由とされている中にも、設備起因の障害が含まれます。
システム運用の管理対象を大きく分類すると、OSやジョブなどの「ソフト」とサーバーなどの「ハード」、それを維持管理する「人」、そしてそれらが稼働するために必要な「設備・環境」の4つに分けられます。でも電気や空調は、水や空気と同じように「あって当たり前」と思われてはいないでしょうか。きちんと必要量や伸び率を見込んで設計・管理されていますか。
下の絵はここ数年のサーバー高密度化の一例です。経験での実数値としても、単位面積あたりの消費電力=必要空調能力は3~5倍になっています。このため設備面で十分な対策が取られているはずのデータセンターでさえ、電力や空調(熱)の対策が大きな課題となっています。
また高密度化に伴いサーバー重量も飛躍的に増大しており、ラックあたりに換算すると500kg以上になるケースが散見されます。ところでサーバーラックの積載荷重はどのくらいかご存知ですか。また貴社電算室(またはサーバーラックを置いてある場所)の床荷重はどのくらいでしょうか。床荷重300kg/㎡のオフィスに総重量400kgのラックを置くと、すぐに床が抜けるのでしょうか。サーバーを安全に稼働させるためには、実はいろいろなことを考えなくてはならないのです。
※本文中の引用に関しましては、日経BP様・JIPDEC様の許可を得ております。
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筆者紹介
及川正稔(おいかわ まさみ)
1961年生まれ、宮城県出身。
約3年間公務員勤務の後、1987年から20年間、大手警備会社のIT子会社にて主にシステム運用管理を担当し、大型汎用機のプリンタレーザー化やA-AUTO・A-SPOOL等の導入を主管。
2002年から同社データセンターの設備管理を担当してISMS認証取得や旧安対(安全対策実施事業所認定)継続に関わるとともに、ミニデータセンターとも言われる総合災害対策・セキュリティ対策商品(大型金庫内にサーバー稼働空間を構築したもの)の技術企画・設計監理・運用支援や、電算室構築企画・設計に携わった。
2007年4月、お客様サイドに立った電算室等の設備・環境の設計監理、運用支援を主業務とするデボウトスキル株式会社を設立 代表取締役に就任。
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