チャレンジする!システム管理者2.0

第1回:明日のシステム管理者に求められる5つのスキル

概要

「AI」「自動化」「少子高齢化」 変化の時代、私たちシステム管理者にもチャレンジと変化が求められています。 とはいえ、日々の通常業務に追われているだけでは、なかなかチャレンジも生まれない。変化のきっかけもない。 この連載では、主にヒューマンスキルを中心に、明日を生きるシステム管理者に求められるスキルとは何か? 日ごろの意識と行動をどう変えていったらよいか? をみなさんと一緒に考えます。

目次
1. 人工知能に取って代わられないための2つのキーワード: 「直観」と「創指決」
2. システム管理者2.0 ~ 5つのヒューマンスキル

「AI」「自動化」「少子高齢化」

変化の時代、私たちシステム管理者にもチャレンジと変化が求められています。 とはいえ、日々の通常業務に追われているだけでは、なかなかチャレンジも生まれない。変化のきっかけもない。 この連載では、主にヒューマンスキルを中心に、明日を生きるシステム管理者に求められるスキルとは何か? 日ごろの意識と行動をどう変えていったらよいか? をみなさんと一緒に考えます。


1. 人工知能に取って代わられないための2つのキーワード:
「直観」と「創指決」

前回の「ITSMスキルを世に活かす~SEは死滅しない!」に引き続き、システム管理者のいまとこれからを考える連載。
今シリーズでは、「チャレンジする!システム管理者2.0」と題し、明日を生きるシステム管理者に求められるスキルについてお話します。

AI(人工知能)の活用、運用の自動化。最近、これらの話題が尽きることはありません。
Google社は”SRE”(=Site Reliability Engineer。サイト信頼性エンジニア)を打ち出し、Webサイトの可用性向上のための運用自動化に乗り出しました。”BizRobo!”(ビズロボ)は、システム運用現場のみならずバックオフィスの運用業務を自動化するツールとして注目されています。

自動化の流れ。私たちはただ手をこまねいているしかないのでしょうか? システム運用業務は、ロボットに取って代わられる運命なのでしょうか?

楽観視は禁物。しかし、悲観的になり過ぎる必要もありません。AIやロボットをどう味方につけるか? 自動化とどう向き合うか? 少し立ち止まり、冷静に考えてみましょう。

最近発売された書籍「人工知能を超える人間の強みとは」(技術評論社 2017年3月刊)が、このテーマと真摯に向き合っています。


「直観」とは、推理や論理を用いず、すでに習得している知識や技能、経験を通して瞬時に物事を判断する、または、物事の本質をとらえる人間特有の能力のことをいう。

(「人工知能を超える人間の強みとは」(技術評論社)より引用)

一方で、「直感」とは感覚的に物事を感じ取る能力であると説明。「直感」がセンスに依存する能力である一方、「直観」は経験から学習できるものであると理解できます。

同書では、さらに人間の能力のタイプを「記理判(きりはん)パワー人間」と「創指決(そうしけつ)パワー人間」に分類しています。

  • ■記理判:記憶力、理解力、判断力
  • ■創指決:創造力、指導力、決断力

人工知能が得意とするのは前者、記理判であると説明されています。すなわち、「記理判(きりはん)パワー人間」、および記理判型の仕事は人工知能やロボットに取って代わられる可能性がより高い。こう考えることができます。

さて、私たちシステム管理者や、システム運用業務はどちらの性格が強いでしょうか?

記理判色が強い?

このままでは、私たちはやはり自動化の波に飲み込まれてしまうのでしょうか。
私たち運用管理者が「直観」を生かし、「創指決パワー人間」にシフトするにはどうしたらよいか? 人工知能やロボットとうまくつきあうには?  

その答えが、5つのヒューマンスキルの強化にあります。


2. システム管理者2.0 ~ 5つのヒューマンスキル

これからのシステム管理者には、次の5つのヒューマンスキルが求められます。

(1)わかりやすく伝える力
システムのことが分からないユーザに、ものごとを分かりやすく伝える力。PM・開発・営業など、運用業務に馴染みのない人たちに、運用観点を植えつける力。

(2)フレームワーク応用力
ITIL、PMBOKなど私たちが日々あたりまえのように使っているフレームワークを応用して自分たちの問題、ユーザの問題を整理して解決する力。自動化するものと、そうでないものを見極めて業務を再構築する力。

(3)ナレッジ管理力
運用業務を通じて得た経験や体験を、組織の知識に変える力。 

(4)関係構築力
ユーザ、PM・開発・営業などの関係者との接点を強化し、コミュニケーションする力。巻き込み力。

(5)提言力
ユーザのビジネス価値の向上・業務品質の向上に向けた提案をする力。上流に食い込む力。

【図2】

本連載ではこの5つの力をどのようなシーンで、どのように鍛えていき、どのように価値を出していくかを考えます。

何を人手でやるべきか? 何を自動化するべきか? なにをロボットにやらせるか?
それが最も分かっている(はず)のは、他ならぬ運用現場の私たちです。
やりたくない仕事を自動化して、より上流(マーケティング、システム構想、要件定義、設計など)に切りこむチャンスとも捉えられます。
ネガティブな仕事を減らして、ポジティブな仕事を増やす。「働き方改革」とはその取り組みです。

【図3】

次回は5つのヒューマンスキルのトップバッター、「わかりやすく伝える力」を解説します。

自動化の流れに不安になりすぎる必要はありません。私たちシステム管理者ゆえの強みは間違いなくあります。
ただし、今までと同じやり方、昨日と同じ考え方では、間違いなく明日はないでしょう。
私たちの強みと脅威を冷静に見つめ、明日を生きる「システム管理者2.0」にバージョンアップしましょう!

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筆者紹介

沢渡 あまね(さわたり あまね)
1975年生まれ。あまねキャリア工房 代表。業務改善・オフィスコミュニケーション改善士。


日産自動車、NTTデータ、大手製薬会社などを経て、2014年秋より現業。企業の業務プロセスやインターナルコミュニケーション改善の講演・コンサルティング・執筆活動などを行っている。NTTデータでは、ITサービスマネージャーとして社内外のサービスデスクやヘルプデスクの立ち上げ・運用・改善やビジネスプロセスアウトソーシングも手がける。


現在は複数の企業で「働き方見直しプロジェクト」「社内コミュニケーション活性化プロジェクト」「業務改善プロジェクト」のファシリテーター・アドバイザー、および新入社員・中堅社員・管理職の育成も行う。これまで指導した受講生は3,000名以上。趣味はダムめぐり。

【ホームページ】
あまねキャリア工房

【ブログ】
・はたらきかた「プチ」改善
・業務改善娘

【主な著書】
「システムの問題地図」
「職場の問題地図」
「マネージャーの問題地図」
「新人ガール ITIL使って業務プロセス改善します!」
「新入社員と学ぶ オフィスの情報セキュリティ入門」(共著)
「ドラクエに学ぶ チームマネジメント」

【連載】
「運用☆ちゃん」(リクナビNEXTジャーナル)
「IT職場あるある」(日経 xTECH)

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