組織横断で取り組むIT資産運用プロセス構築 ~クラウド・仮想化環境の全体最適化、ガバナンスの獲得~

第1回:組織横断で取り組むIT資産運用プロセスの構築(その1)

概要

デジタル トランスフォーメーションへの期待が高まるなか、大手企業の IT部門への期待はますます高まっています。その期待に応えるためには今まで以上に IT環境のガバナンス、コントロール、セキュリティ対策などの成熟度が求められます。 ますます複雑化する ITインフラに対して、どうすれば成熟度を高めることができるのか? 欧米の大手組織では、その鍵は「全ての IT資産のコントロールである」として取り組みが進んでいます。 本シリーズでは、「IT資産運用プロセス」という組織全体で取り組むべき業務プロセスの設計やガバナンスの獲得により、「IT環境の全体最適化」を最終ゴールとして解説していきます。

デジタル トランスフォーメーションへの期待が高まる中、大手企業のIT部門への期待はますます高まっています。その期待に応えるためには今まで以上にIT環境のガバナンス、コントロール、セキュリティ対策などの成熟度が求められます。
組織内外のITサービスを組み合わせた新たなサービスをユーザーの期待に応えて、迅速かつ安定的に提供するために、ますます複雑化するITインフラのガバナンス、コントロール、セキュリティ対策の成熟度をどうすれば高めることができるのでしょうか?

欧米の大手組織では、その鍵を握っているのは全てのIT資産のコントロールであるとして取り組みが進んでいます。

サービスマネジメントにおける財務管理、構成管理、サプライヤ管理、変更管理、リクエストフルフィルメントなど、組織横断的なIT資産管理の成熟度がこれらのマネジメントプロセスの成功を左右する、という認識が高まる中、本シリーズではIT資産運用プロセスという組織全体で取り組むべき業務プロセスの設計や、実装および自動化をサービスマネジメントプロセスとの整合性を考慮し、ガバナンスの獲得によるIT環境の全体最適化を最終ゴールとして解説していきます。

最初に、おそらく皆さんが、取りあえずIT運用チームで対応しようとして失敗し、サイロ化された組織の中で、組織横断的な取り組みをIT運用チームがリードしなければならない、という困難に直面した際に切実に思われること、
「なぜ、IT部門だけではIT資産をコントロールできないのか?」
について、サービスモデルというビジネスモデルがもたらしたIT業界におけるパラダイムの変化の観点から考えてみましょう。

IoTの時代は、さまざまな製品がインターネット上で接続し「製品+サービス」を構成するサービス製品になります。その時に、IT部門は事業部門と連携し、事業部門が対象とする市場のユーザーに対してITを利用したサービスを提供するためのエンジンである必要があります。市場から見れば事業部門自体がサービスの提供者(サービスプロバイダ)であり、事業部門から見たIT部門は、それを支えるサービスプロバイダである必要があるからです。
サービスモデルがリスクトランスファーモデルであるため、市場消費者のリスクは事業部門に転嫁されることで、消費者のリスクは最小化されます。さらに、事業部門のリスク負担を軽減するべく、IT部門が多くのITに関するリスクを分担することになりますが、IT部門にとっても負担が大きすぎるとコントロールするコストが増大し、立ち行かなくなるので、リスクをコントロールして軽減し、またリスクを転嫁できるサービスプロバイダとの連携が必須となります。

図1:サービスプロバイダ連携

図1は、サービスプロバイダの連携を段階で示しています。

IT部門がサービスプロバイダに、あるいは企業がサービスプロバイダにならなければならない、という時代ですが、イメージが湧きにくいと思われる方も多いかと思いますので、少しわかりやすいモデルで具体例に考えてみましょう。
例えば、自動車メーカを例にしてみると。

図2:自動車メーカのサプライチェーン

昨今の車はWi-Fi やBluetoothが実装され、OSやアプリケーションでコントロールされ、インターネットに接続したIoT製品になっています。GPSでネットから現在の車の場所が分かり、スマホのアプリから走行距離や、ガスの消費状態などさまざまな情報にもアクセスが可能です。
市場のユーザに品質の高い車を提供するために、その製品の品質やコストが厳密にサプライチェーンとして管理されています。
メーカにとって製品の品質を決定するレベルの管理としてBOM(Bill of Material)、つまり部品管理は非常に重要なものであると、製造業に関係する方の100%が理解していると思います。その取り組みは、組織横断的に「部品」の品質、コストなどを管理し、最終製品となる車の品質を担保しています。
さて、ここまでのお話でピンときた方も多いと思いますが、「IT資産」は、つまりは、製造業における「部品」を管理しコントロールすることの「部品」にあたります。ここでの違いは、ITにおける「部品」が車の部品とは違い「論理的な部品」を多く含むことにあります。ITに関係する「契約」も部品にあたります。クラウドサービス契約やソフトウェアのライセンス契約も部品なのです。
「IoTの波に乗り遅れるな!」とか、
「デジタルトランスフォーメーションを実現せよ!」などと声高々に企業戦略を語る経営者は多いと思います。
これらの経営者は、一方で「IT資産管理は後ろ向きな管理だからな・・・」とか、「ライセンスの管理は調達がやってるだろ・・・」とか、ITの今日の複雑性を理解しておらず、「ITサービスモデルのBOMは適当にやっとけ・・・」と言っているようなものです。

社内のサイロ組織の枠を超えてITサービスを構成する「IT資産=部品」をコントロールする。そして、サプライチェーン全体をコントロールするための「ベンダーマネジメント」を、サービスモデルにおけるリスクトランスファーを実現するためのパートナーシップのマネジメントとして実施することが、最終エンドユーザーに提供するIoT製品の品質を担保する唯一の方法です。その認識を持たない経営者は、結果として、市場競争力を損ない、IoTの時代の負け組となり、デジタルトランスフォーメーションの実現を困難にする大きな要因となると言っても過言ではないでしょう。

以下に、IT資産管理システムのRFI/RFPのポイントをまとめた資料ダウンロードサイトをご紹介しますので参照してください。

再配布の際は出典を「国際IT資産管理者協会:IAITAMより」と明示して利用してください。

IT資産管理システム RFPたたき台 基本要求事項
http://files.iaitam.jp/2017ITAMAutomationSystemRequirement.pdf

IT資産管理システム RFP項目と機能項目概要
http://files.iaitam.jp/2017RFPItemAndDescription.xlsx

国際IT資産管理者協会 フォーラムサイト
メール会員登録だけでフォーラムサイトのホワイトペーパー、プロセステンプレート、アセスメントシートなどダウンロードが可能!
http://jp.member.iaitam.jp/

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コメント

筆者紹介

武内 烈(たけうち たけし)
1964年生まれ。
一般社団法人
日本ベンダーマネジメント協会
代表理事
ITIL Expert、IAITAM認定講師

IT業界では主に外資系ソフトウェアメーカにおいて約25年間の経験を持つ。
技術的な専門分野は、ネットワークオペレーティングシステム、ハードウェアダイアグノスティック システム、ITマネジメントと幅広い。大手外資系IT企業ではプロダクトマーケティングスペシャリストとして、ITマネジメントの分野で、エンタープライズJavaサーバー(WebLogic、WebSphere)、SAP、Oracle、ESB(Enterprise Service Bus)などからWeb Serviceテクノロジーまでの管理製品を手掛ける。
IT 資産ライフサイクル管理プロセス実装のためのAMDB・CMDB 製品開発プロジェクト、データセンターのCMDB およびワークフローの実装プロジェクト、IT資産管理(クライアント環境) MSP のサービスプロセスの開発・実装プロジェクト(CMS/サービスデスクを含む)、ライセンス管理のためのSAMプロセスおよび自動化テクノロジー (CMS/サービスデスク)の設計・実装プロジェクトなど多数のプロジェクト経験を持つ。
IT資産管理のポリシー、プロセスを、どのように自動化テクノロジーに結び、ITサービス管理戦略やロードマップとの整合性を取りながらIT資産管理プログラムを実行性の高いものにしていくのかのコンサルティングを得意とし、大手組織におけるIT資産管理プロセスとサービス管理プロセスの統合プロセス設計、自動化設計、実装プロジェクト、IT資産管理プログラムの運用教育の実績多数。

 

【ホームページ】
一般社団法人
日本ベンダーマネジメント協会
www.vmaj.or.jp/
【情報】
Twitter( @VMA_Japan)


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