- 目次
- 1. 「運用現場は宝の山」って言うのは簡単だけれども…
- 2. 現場のボヤキを言語化する
- 3. ボヤキを提言に変えられる運用者は一目置かれる
- 4. 関係者との接点作りも大事
「AI」「自動化」「少子高齢化」
変化の時代、私たちシステム管理者にもチャレンジと変化が求められています。
とはいえ、日々の通常業務に追われているだけでは、なかなかチャレンジも生まれない。変化のきっかけもない。
この連載では、主にヒューマンスキルを中心に、明日を生きるシステム管理者に求められるスキルとは何か? 日ごろの意識と行動をどう変えていったらよいか? をみなさんと一緒に考えます。
1. 「運用現場は宝の山」って言うのは簡単だけれども…
明日を生き抜く価値あるシステム管理者・運用者に求められるヒューマンスキルシリーズ。最後は提言力です。
「開発と運用の連携が重要」
「運用観点が大事」
「運用現場は宝の山。ノウハウの宝庫」
最近、いわゆる「失敗プロジェクト」「炎上プロジェクト」がやり玉にあげられるにつれ、あるいはクラウドを代表とするサービス提供型ITの普及が進むにつれ、運用センスやノウハウの重要性が強調されるようになりました。
また、DevOpsのような開発部隊と運用部隊が連携して開発する手法も広がりつつあります。
そうはいっても、言うは易し行うは難し。
「連携する機会がない」
「開発チームとの間には、大きな壁がある」
こんなボヤキを現場ではよく耳にします。加えて、
「運用観点って言われても、何が運用観点なのかよくわからない」
「私たちにノウハウなんてあるのかしら…」
「気づき、ノウハウ…を伝える場がない」
おやおや。これでは、価値あるシステム管理者への道のりは遠そう。
この状態で日々、オペレーション業務を回しているだけではやがて(今も?)…
「運用…って、何やっているんだっけ?」
「あれ、君たちいたんだ」
「4人も人いらないよね。3人に減らしてよ」
「運用なんてコストでしかないでしょ」
「とりあえず運用でカバーして。あとはよろしく!(マル投げ「どさっ」)」
この悲しいステージからいつまでたってもレベルアップできません。
ずばり、提言力が大事!
提言力のあるシステム管理者とは? 次の3つを主体的に行うことができる人材です。
(1) 日常のオペレーション業務から見えてくる疑問や気づきを言語化する
(2) 疑問や気づきを、ITサービスの価値向上につなげる提言に変える
(3) 顧客や開発メンバーとの接点を作る
2. 現場のボヤキを言語化する
システムを運用していると、私たちは日々さまざまな理不尽さやもどかしさを感じていることでしょう。
「開発時の残課題が解決されずに、運用にパス。運用でカバーしている」
「レスポンスが遅くて、使い物にならない…」
「ユーザーマニュアルが難解で意味不明」
「業務繁忙期になるとバッチ処理が著しく遅延する」
「夜間バッチが綱渡り。過密スケジュールすぎて、1つでもコケると翌日のオンラインに影響する」
「期変わりや組織変更時の業務パターンが考慮されていない。毎回、運用メンバーが頭を悩ませ、手運用で四苦八苦」
「監視メッセージが大量に飛んでくる。どのメッセージに対して、どう対応したらよいのか判断がつかない」
ボヤキは尽きませんね。
運用現場だけでカバーできるならまだしも、顧客やエンドユーザーに悪影響を及ぼしているとしたら?
さすがに問題ですね。二度と、あなたの会社にシステム開発をお願いしないかもしれません。
ところで、これらのボヤキ。現場の運用者がモヤモヤと抱えているだけで日々過ごしてしまっていませんか? 運用者同士のタバコ部屋の愚痴で終わってしまっていませんか?
もったいない!
システム管理者は、現場の運用メンバーと対話する場を率先して設け、ボヤキを共通言語化しましょう。
■ 運用チームの定例会で書き出してみる
■ 付箋に書き出して、ホワイトボードに貼る
■ Slackでつぶやきあう
どんな方法でも構いません。あなたが率先して言語化してください。
3. ボヤキを提言に変えられる運用者は一目置かれる
運用現場のボヤキや疑問。言語化したら改善のための提言に変えていきましょう。
ポイントは、顧客やエンドユーザーの価値にいかに変換するか?
「人事システムは、毎月30日~翌2日はアクセス集中によるセッションタイムアウトが多発し、ヘルプデスクにエンドユーザーからのクレームもこのように多発しています。そこで、各部門に周知していただき利用分散を促していただきたいと考えます」
「エンドユーザーに操作方法を説明するキャラバンを、各工場を回って行いたいと思います」
「このままログデータが蓄積され続けると、オンラインのパフォーマンスにも影響が出てユーザークレームにつながりかねません。月1回程度、データガベージをさせてください」
「前月、前々月に比べて、夜間バッチ処理の時間がこの通り延びています。このままでは来年4月の繁忙期にはオンラインに影響が出ると考えられます。よって、次の改修のタイミングでジョブスケジュールの組み換えを提案します」
いかがでしょう。
ただ単に「セッションタイムアウトが多発しています」「毎月、夜間バッチ処理の所要時間が延び続けています」と淡々とサービス報告するだけ(あるいは報告すらしない)システム管理者と比べて雲泥の差があります。
このようなアラートをきちんと上げられる運用者、提言できるシステム管理者は、顧客や開発メンバーからも一目置かれます。
「次の開発時には、○○さん(あなたの名前)の知見を借りよう」
「上流に参画してもらうようにしよう」
徐々にこんなポジティブな言葉をかけられるようになること間違いなし。あなたの運用チームのプレゼンスも向上します。
では、顧客やエンドユーザーにとって有意義な提言をできるようになるためにはどうしたらよいでしょうか?
手始めに「ユーザー影響あり/なし」を考える習慣をつける。これをオススメします。
そのインシデントはユーザーにどう影響するか?
この思考習慣は、顧客やエンドユーザーに価値ある提言ができるようになる最高のトレーニングになります。
特にバックエンドのエンジニアほど、ユーザー視点は疎くなりがち。
そうすると、どんなに良い腕や知識を持っていても、顧客から「それ、何の価値があるの?」と思われ、しまいにはコスト扱いされてしまいます。これでは、顧客も運用エンジニアも不幸ですよね。
「それって、どんなユーザー影響があるの?」
システム管理者は、しつこいくらいに運用メンバーに問いかけ続けましょう。
4. 関係者との接点作りも大事
どんなに良い気づきやノウハウがあっても、提言がまとまっていても、相手に伝えられなければ無価値。
システム管理者は、顧客、開発チーム、あるいは営業などの関係者と会話する接点を積極的に作りましょう。
わざわざ新たな機会を作らなくても大丈夫。
- ■ 月次の運用報告会
- ■ 社内の勉強会
- ■ 新年度のキックオフミーティング
このような日常の場をとらえて、関係者とまずは立ち話しレベルからでも話をしてみましょう。
関係者との接点作りについては、次回さらに詳しくお話します。
システムは作って1年、守って10年と言われます。
すなわち、開発部隊よりも運用部隊のほうが顧客やエンドユーザーとのつきあいは長く接点も多い。
しかし、単に与えられたシステムを寡黙に守っているだけでは、私たちの価値は認めてもらえません。
積極的に気づき、言語化し、提言する。
それができて初めて、運用チームのプレゼンスは高まります。
自動化の流れに不安になりすぎる必要はありません。私たちシステム管理者ゆえの強みは間違いなくあります。
ただし、今までと同じやり方、昨日と同じ考え方では、間違いなく明日はないでしょう。
私たちの強みと脅威を冷静に見つめ、明日を生きる「システム管理者2.0」にバージョンアップしましょう!
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