チャレンジする!システム管理者2.0

第6回:魅力あるシステム運用部隊を作る!~ブランドの3要素

概要

「AI」「自動化」「少子高齢化」 変化の時代、私たちシステム管理者にもチャレンジと変化が求められています。 とはいえ、日々の通常業務に追われているだけでは、なかなかチャレンジも生まれない。変化のきっかけもない。 この連載では、主にヒューマンスキルを中心に、明日を生きるシステム管理者に求められるスキルとは何か? 日ごろの意識と行動をどう変えていったらよいか? をみなさんと一緒に考えます。

目次
1. そもそも「ブランド」って何?
2. ブランドの3要素
3. ブランドの3要素で自身のシステム運用部隊を分析してみる
4. これからの時代「職種のブランディング」がますます大事に

「AI」「自動化」「少子高齢化」

変化の時代、私たちシステム管理者にもチャレンジと変化が求められています。
とはいえ、日々の通常業務に追われているだけでは、なかなかチャレンジも生まれない。変化のきっかけもない

この連載では、主にヒューマンスキルを中心に、明日を生きるシステム管理者に求められるスキルとは何か? 日ごろの意識と行動をどう変えていったらよいか? をみなさんと一緒に考えます。


1. そもそも「ブランド」って何?

「企業ブランド価値の向上」
「ブランド価値を最大化する」
「地域のブランディング」

近年、企業に地方自治体、あらゆる組織でブランドの重要性が叫ばれています。
企業の価値向上、地域活性、さまざまな文脈で自分たちのブランドをどう維持向上させるか経営者や責任者は頭を悩ませています。

「え、ブランドって高級品のことだよね?」
「システム運用管理に何の関係があるの?」

…と思ったそこのアナタ! その考え方は改めないといけないかもしれません。
ずばり、システム運用職種でも…もっと言えばどんな職種でも…ブランドマネジメントはこれからの時代、重要であり、欠かせないマネジメントです。

その前に、そもそもブランドとは何でしょう?

マーケティングやブランドマネジメントの専門書を読み解くと、さまざまな小難しい解説がされています。
ここでは、ブランドをすごくシンプルに考えてみます。

ブランドとは
「また買いたい(利用したい)と思わせる力」

例えばディズニーランドに行くと、私たちは日常を忘れさせてくれる夢のような感動体験を得ることができます。
だから、私たちは「また行きたい」と思う。もし、そこがギスギスした現実まみれの世界だったとしたら?
私たちは「裏切られた」「もう行かない」と思うでしょう(これが「ブランド失墜」)。

このように、顧客(潜在顧客含む)に意識的または無意識的にその製品やサービスを選ばせる力。これがブランドです。

そう考えると、いわゆる高級ブランドでなくても、あらゆる製品/サービス/組織/人がブランドになり得ることが分かります。

「特にこだわりはないけれど、コンビニエンスストアに行くとついついこのお茶を選んでしまう」
「別に好きではないけれど、ラクだからいつもこの路線を使う」
「頼みやすいから、あの会社に仕事をお願いしている」
「貿易実務のことなら、○○さんに聞けば間違いない」

これらの行動習慣の根底には、すべて「また買いたい(利用したい)と思わせる力」が働いているのです。
そして、あなたのシステム運用部隊も「また仕事をお願いしたい」と思わせる力、「選ばれる力」をつけていく必要があります。


2. ブランドの3要素

ではブランドパワーのある製品/サービス、さらには企業や組織にはどのような特徴があるのでしょうか?
強いブランドには、3つの要素があると言われています。Trust(信頼できること)、Special(特別な存在であること)、Familiar(親しみやすい存在であること)です。

この3つの全てが満たされている、またはいずれかが突出している製品やサービスが強いブランドになり得ます。

具体例で考えてみましょう。

よく知っているスナック菓子やインスタントラーメン。

  • ■Trust:安心、安全に食べることができる。昔から変わらない(はずさない)食感
  • ■Special:「このジャンク感がたまらない」「新しさの中にも、らしさがある」
  • ■Familiar:テレビCMでよく見る。スーパーやコンビニエンスストアの棚でよく見かける

 

このように、3つの要素が満たされています。

高級ホテルで考えてみましょうか?

  • ■Trust:必ず極上の体験をすることができる
  • ■Special:Webサイト、エクステリア/インテリア、フロントの対応、レストラン、すべてにおいて他では味わえない高級感がある

 

この場合、Familiarの要素は小さいかもしれません。高級であるがゆえに、親しみやすさは少ない。
(もちろん、ターゲットである富裕層には会報を送ったり、会員イベントを開催したりと、Familiarを高める仕掛けを運用しているケースも考えられます)
TrustとSpecialが突出していることで、ブランド価値を維持向上させています。

 

3. ブランドの3要素で自身のシステム運用部隊を分析してみる

あなたの会社、さらにはシステム運用部隊を振り返ってみましょう。
Trust、Special、Familiarのどれが強くてどれが弱いでしょうか?

  • ■Trust:オペレーション品質、可用性、柔軟性など。
  • ■Special:他社/社内の他のチームにこれだけは負けない強みや専門性。技術、マネジメント、知識、スピードなど。
  • ■Familiar:あなたのチームの強みがどれだけ周りに認知されているか。話しかけやすさ。相談しやすさ。コミュニケーション接点の多さ。

 

ぜひ、チームで一度議論してみてください。
もしどれも弱かったとしたら?

あなたのチームは、誰からも必要とされなくなるかもしれません。
あなたのチームは、コスト扱いされるかもしれません。
あなたのチームには、誰も入りたがらなくなるかもしれません。

ブランドは外の人(顧客、経営、営業、開発チームなど)と、中の人(チームメンバー)いずれに対する価値向上にも寄与するのです。

外の人に対するブランド強化の活動を「エクスターナルブランディング」、中の人に対するブランド強化の活動を「インターナルブランディング」と言います。
そしてこの2つを包含して、自組織のブランド価値を維持向上させる取り組みを「ブランドマネジメント」と言います。

 

4. これからの時代「職種のブランディング」がますます大事に

少子高齢化と人材流動化が勢いよく加速する昨今、人気職種と不人気職種の差が広がりつつあります。

「運用にいい人材が集まらない」
「運用がコスト扱いされる」

このような嘆きを、さまざまな現場で耳にします。

他責にしていてもはじまりません。

「ウチの運用チームはこんな強みがある」
「運用現場って、こんなスキルや知識が身につく」
「運用を経験すると、こう成長できる」

あなたのチームで、さらに時には会社や立場を超えて議論して見いだしていく必要があるのではないでしょうか。
これからの時代、会社を超えた「職種のブランディング」がいよいよ重要性を増すでしょう。

ちなみに、年明け2018年1月24日(水)にはシステム管理者の会主催の「第12回 リーダーズミーティング」が東京・品川で開催されます。

まさに、システム運用職種のブランド価値をどう向上させていくか? 会社を超えて議論する場です。
(沢渡は基調講演とグループディスカッションのファシリテータを担当します)

この機会に、思いあるリーダー/次世代リーダーと熱い議論ができることを楽しみにしています。

 

「ブランドマネジメント」

これからの運用リーダーに絶対欠かせないスキルでありメンタリティです。
価値ある運用チーム、運用職種を一緒に創っていきましょう!

自動化の流れに不安になりすぎる必要はありません。私たちシステム管理者ゆえの強みは間違いなくあります。
ただし、今までと同じやり方、昨日と同じ考え方では、間違いなく明日はないでしょう。
私たちの強みと脅威を冷静に見つめ、明日を生きる「システム管理者2.0」にバージョンアップしましょう!

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筆者紹介

沢渡 あまね(さわたり あまね)
1975年生まれ。あまねキャリア工房 代表。業務改善・オフィスコミュニケーション改善士。


日産自動車、NTTデータ、大手製薬会社などを経て、2014年秋より現業。企業の業務プロセスやインターナルコミュニケーション改善の講演・コンサルティング・執筆活動などを行っている。NTTデータでは、ITサービスマネージャーとして社内外のサービスデスクやヘルプデスクの立ち上げ・運用・改善やビジネスプロセスアウトソーシングも手がける。


現在は複数の企業で「働き方見直しプロジェクト」「社内コミュニケーション活性化プロジェクト」「業務改善プロジェクト」のファシリテーター・アドバイザー、および新入社員・中堅社員・管理職の育成も行う。これまで指導した受講生は3,000名以上。趣味はダムめぐり。

【ホームページ】
あまねキャリア工房

【ブログ】
・はたらきかた「プチ」改善
・業務改善娘

【主な著書】
「システムの問題地図」
「職場の問題地図」
「マネージャーの問題地図」
「新人ガール ITIL使って業務プロセス改善します!」
「新入社員と学ぶ オフィスの情報セキュリティ入門」(共著)
「ドラクエに学ぶ チームマネジメント」

【連載】
「運用☆ちゃん」(リクナビNEXTジャーナル)
「IT職場あるある」(日経 xTECH)

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