- 目次
- あなたのITサービスの存在や内容、伝わっていますか?
- コミュニケーション設計をするための4つのポイント
開発と運用の壁。これがさまざまな問題を生む。開発担当者は運用を考えずにシステムをリリースし、足りない部分は「運用でカバー」の一言で運用担当者にナントカさせようとする。そして、たいてい火を吹く。なぜなら、リリース間際に対処しようとしても付け焼き刃の属人的な対応しかできないからだ。この状況、運用も開発も、何よりシステムを使う顧客やユーザも幸せにしない。運用をデザインしよう。この連載では、運用を主体的にデザインし、価値あるITサービスを提供できる人材になるための視点や行動を考えます。
今回は(3)の「コミュニケーション設計」についてです。(クリックで拡大)
1. あなたのITサービスの存在や内容、伝わっていますか?
「え、そんなサービスあったんですか?」
「こんな機能がリリースされていたとは。早く言ってよ!」
どんなに良いITサービスも、その存在が顧客やユーザに知られていなければ価値は発揮できません。
あるいは、こんなケースもあります。
「営業担当者。新サービスをもっとお客さんにPRしてくれてもいいのに……」
「ヘルプデスクに問い合わせしたはいいけれど、バージョンアップされた機能を知らない様子だった。大丈夫か?」
ITサービスの提供者側、すなわち「中の人」がサービスの内容を把握していない。世の中を見回してみると周知不足により「もったいない」ことになってしまっている業務・サービスはたくさんあります。
- 新たなバス路線ができた。とても便利なのに、知っている人が少ない様子でいつもガラガラ。減便が続き、いつの間にか廃止になってしまった。
- 大通り沿いの駐車場。いつも混雑しているが、一本裏通りに半額ですいている駐車場があるのに。
- 社員の経費申請。月中旬にあげてくれれば即日対応するのに、皆月末月初にまとめてあげてきて「早くしてくれ」と文句を言う。
私たちは、ITサービスを取り巻くステークホルダーを特定し、適切な情報を提供する必要があります。時に、適切な行動を促す必要があります。今回は、ステークホルダーにどのようなコミュニケーションをしていくか? コミュニケーション設計について考えます。
2.コミュニケーション設計をするための4つのポイント
コミュニケーション設計を行う上で、分析および定義してほしい4つの項目があります。 To whom, Where, What, Howです。
To whom:「誰に」
Where:「どんな機会を捉えて」
What:「なにを発信し」
How:「どう行動してほしいのか?」
業務やサービスのコミュニケーション設計とは、この4つを見直す取り組みと言っても過言ではありません。
【図1】
以下、3つのステップで必要なコミュニケーション活動を設計します。
(1)ステークホルダーの特定
(2)タッチポイント設計
(3)コミュニケーション活動計画/実施
(1)ステークホルダーの特定
あなたが運営する業務やサービス。誰に知ってほしいのか? 業務やサービスを取り巻く、関係者(=ステークホルダー)を特定します。
①顧客
②株主・投資家・金融機関
業務やサービスの運営に対してお金を提供してくれる、外部スポンサーも重要なステークホルダーです。
これら外部スポンサーに、自社の取り組みや課題を知ってもらい、より協力的な支援を受けられるようにするのも大事なコミュニケーションマネジメントです。
③経営者
経営者=業務やサービスの運営に対してリソースを提供してくれる、内部スポンサーです。必要な協力が得られるよう、経営者に対する積極的なコミュニケーションも欠かせません。
④従業員
業務やサービスを運営する、中の人たちです。中の人たちへの情報共有は最も大事。知らない業務やサービスは、外部のステークホルダーに提供できないですし、PRもできません。また、
「聞いていない!」
「お客さんから聞いて初めて知った……」
これは、組織の内部の信頼関係にも影響します。
⑤メディア
あなたの組織が、社内にサービスを提供する組織である場合、広報部門をメディアととらえても良いかもしれません(広報部門は、社内報などを通じて社内にニュースを周知してくれる人たちですから)。
⑥取引先
サプライヤーやベンダーなど、業務やサービスに使う物品や資材、および人的リソースを提供してくれる取引先です。取引先は、顧客にもなり得る貴重な外部協力者です。
⑦地域
当該自治体や近隣住民、地元の学校の学生、官公庁など、地域も忘れてはならないステークホルダーです。事前に業務やサービスの内容を周知して、理解を得ておかないと後々トラブルを招く場合もあります。逆に、きちんと巻き込んでおけば強い協力者に成り得ます。
⑧家族
従業員や取引先の家族も大事なステークホルダー。家族の協力がなければ、あなたの組織は良い業務やサービスを運営できません。また、家族も時に顧客や外部協力者にもなり得ます。
⑨他社
同業界の他社、競合他社、異業種の他社など、他の会社もステークホルダーに成り得ます。最近では、異業種あるいは競合他社とすらコラボレーションして、相乗効果で自社の業務やサービスの価値を上げる取り組みは珍しくありません。会社の垣根を越えた勉強会やコミュニティーなどに参加し、情報を共有しあう活動も今後はより重要になるでしょう。
この図を広げて、ステークホルダーに見落としはないか? ほかに意識しておいたほうが良いステークホルダーはいないか議論してみてください。
(2)タッチポイント設計
ステークホルダーとの接点をタッチポイントといいます。
あなたが提供するITサービスと、ステークホルダーとの間にはどんな接点があるでしょうか? あるいは、どんな接点を作れば存在や変化をよりよく知ってもらえるでしょうか? 既存のタッチポイントを見直し、足りない接点を特定して設計します。
●タッチポイントの例
ステークホルダーとのタッチポイントの例を紹介します。
【図2】
①サービスそのもの
②広告
③WEB
④TVCM
⑤従業員
⑥コールセンター
⑦店舗
⑧製品
これらすべてのタッチポイントが、ステークホルダーがあなたのITサービスを「エクスペリエンス(体験)」する「場」となります。
あなたが提供する業務やサービスにおいて、不足しているタッチポイントはないか? 活かしきれいてないタッチポイントはないか? 見直してみてください。
(3)コミュニケーション活動計画/実施
ステークホルダーを定義し、タッチポイントを設計したら、次に具体的なコミュニケーション活動の内容を設計します。
宣伝する、案内する、広めてもらう、感想や意見をもらう……これらはすべて、コミュニケーション活動です。
コミュニケーション活動の、向き先は大きく2つあります。外向きのコミュニケーションと、内向きのコミュニケーションです。
前者をエクスターナルコミュニケーション、後者をインターナルコミュニケーションといいます。
①エクスターナルコミュニケーション
顧客、利用者、一般消費者、地域、取引先、株主など外部ステークホルダーに対するコミュニケーション。
例)エクスターナルコミュニケーションの例
Web広告、TVCM、ラジオCM、TwitterなどのSNSによる情報発信、新聞の折り込み広告、チラシ、のぼり、販売プロモーションイベント、会員限定イベント、スポンサーイベント、モニターイベント、体験会、技術イベント、ユーザーズミーティング、広報誌、IR活動など
②インターナルコミュニケーション
従業員、経営者など内部ステークホルダーに対するコミュニケーション。
例)インターナルコミュニケーションの例
朝礼やチームミーティング、イントラネット、掲示板、ホワイトボード、デジタルサイネージ、社内報、社内SNS、グループウェア、タウンホールミーティングなどを通じた情報共有
あなたのITサービスを知ってもらう上で、あるいは効率よく進める上で、誰にどんな働きかけをすれば良いのか? 利用者や協力者をどのような行動に導けば良いか? どんな反応やフィードバックを得たいか? 「外」と「内」、双方の視点で検討してください。
次回は、(4)オペレーションマネジメントを解説します。
運用をデザインできる人材は、これからの時代、間違いなく価値ある人材として活躍の場が広がります。
目指せ、運用デザイナー!
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