- 目次
- 問題管理〜インシデントが二度と起こらないようマネジメントする
- 「リアクティブ」と「プロアクティブ」
- 運用スケジュール策定〜業務の山谷を見える化する
開発と運用の壁。これがさまざまな問題を生む。開発担当者は運用を考えずにシステムをリリースし、足りない部分は「運用でカバー」の一言で運用担当者にナントカさせようとする。そして、たいてい火を吹く。なぜなら、リリース間際に対処しようとしても付け焼き刃の属人的な対応しかできないからだ。この状況、運用も開発も、何よりシステムを使う顧客やユーザも幸せにしない。運用をデザインしよう。この連載では、運用を主体的にデザインし、価値あるITサービスを提供できる人材になるための視点や行動を考えます。
今回は(4)の「オペレーションマネジメント」について、その2です。(クリックで拡大)
1.問題管理〜インシデントが二度と起こらないようマネジメントする
「お客さんにお送りする商品を間違えてしまった。今後、間違えないためにはどうしたらよいか?」
「ソフトクリームの製造機。最近よく故障する。なんとか、手作業で対応しているけれど、いつまでも手作業でやっていたら手間がかかって仕方がない……」
前回解説したインシデント管理は、「割り込み」「トラブル」などのインシデントをその場でナントカする対応。いわば、暫定対応です。
しかし、それを繰り返していたらいつまでたっても業務・サービスの品質は上がりません。組織も成長しません。
「二度、同じインシデントを発生させないためにはどうしたらよいか?」
すなわち、再発防止策の検討と実施が求められます。インシデントの原因を特定して二度発生しないように解決する取り組みを問題管理と言います。
① 問題とは
1つまたは複数のインシデントを引き起こす根本原因を、(ITサービスマネジメントの世界では)問題と言います。
② 問題管理のモデルフロー
以下、モデルフローを示します。
【図1】問題管理のモデルフロー(クリックで拡大)
インシデント管理と有機的に連携させ、あなたの組織がインシデント対応だけに疲弊しないよう恒久対処も検討して実施していきましょう。
2.「リアクティブ」と「プロアクティブ」
問題管理には2つのアプローチがあります。「リアクティブな問題管理」と「プロアクティブな問題管理」です。
リアクティブな問題管理とは、インシデントが発生してから事後対処する問題解決行動です。これに対し、プロアクティブな問題管理とは、インシデントの兆候を予測して、事前に予防措置を行う対応です。プロアクティブな問題管理を行うためには、インシデント管理や次項で触れる運用スケジュールの把握が肝。過去のインシデントの傾向、利用者の特性、運用スケジュールや業務イベントに沿った利用者の動向などをおさえておくことで、前広に対応できるようになります。
<リアクティブな問題管理の例>
ソフトクリーム製造機が故障して動かなくなった⇒ ソフトクリームの提供を止めて修理に出す
<プロアクティブな問題管理の例>
ソフトクリーム製造機が故障しないよう、月に1回点検をして部品を交換しておく
リアクティブな問題対応しかできない組織は、控え目にいって残念な組織です。すべてが後手後手で、利用者も運用者にもストレスがかかります。リアクティブからプロアクティブに。あなたの組織の動きを変えていきましょう。
3.運用スケジュール策定〜業務の山谷を見える化する
「この組織では、来月どんなことが起こるのか?」
「どの時期が最も忙しく、どの時期なら比較的忙しくないのか?」
いわゆる業務の山谷を可視化しチームで共有することで、メンバーは先を意識しプロアクティブに行動できるようになります。
① 年間の業務スケジュール策定
できれば向こう1年間程度、年間業務スケジュール表を作ってください。
Excelで結構。横に月や週や日、縦に業務やイベントを記入して該当する月/週/日に線を引きます。
いきなり、完璧なものを作らなくても結構。いまわかっているものだけを取りあえず記入しましょう。
記入してほしい業務/イベントの例は次の通りです。
・業務イベント
例)新規のプロジェクト期間、年度末の繁忙期
・システムイベント
例)システムメンテナンス
・組織イベント
例)期末の棚卸し、監査対応、人事異動、新入社員配属、中途入社社員教育、部内の新年会
・メンバーの休暇予定
作成した年間業務スケジュール表は、壁に貼る/パソコンの共有フォルダで共有する/デジタルサイネージで投影するなどして、チームメンバーで定期的に(例えば朝礼などで)確認するようにしてください。
② 年間の業務スケジュールのアップデート
業務スケジュールは生き物です。あなたが初版を書ききった、その瞬間に他の誰か(例えば他部署の人)が新しいプロジェクトを立ち上げてあなたたちを巻き込もうとしているかもしれません。よって、定期的にアップデートしましょう。
朝礼、週次ミーティング、月次ミーティングなど、メンバーが集まる機会をとらえて業務スケジュールを確認し、アップデートしていってください。
年間スケジュール表を読み合わせして、「事前のアクションが必要」「予防措置が必要」と判断した場合、インシデントを起票して確実に実行されるようフォローしましょう。
また、業務やサービスを変更する場合は、変更管理およびリリース管理を行い、確実に変更が行われるようにします。
次回は、付加価値向上についてお話します。
運用をデザインできる人材は、これからの時代、間違いなく価値ある人材として活躍の場が広がります。
目指せ、運用デザイナー!
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