システム管理者が知って得するDX推進に役立つIoT・AIの技術と運用⑤

第5回 IoTマネジメントと戦略

マネジメントと戦略という観点を中心としたIoT(DX)プロジェクトを推進検討する流れをご紹介いたします。

目次
IoT(DX)プロジェクトの流れ
IoT(DX)プロジェクトに関連する代表的なフレームワーク
プロジェクトマネジメントとは
プロジェクトマネジメントの心得
開発手法とは
スキル管理と人材育成について
マネジメント、戦略、リソースのクリアがIoT成功へ
最後に

IoT(DX)プロジェクトの流れ

IoT(DX)プロジェクトの流れは大きく4つの段階があります。
(第0段階)プロトタイプ検証(Proof Of Concept)
(第1段階)センサーなどを活用してデータを収集。可視化段階
(第2段階)収集したデータを分析、AI活用
(第3段階)IoT機器を自動制御、複雑制御

IoT(DX)プロジェクトでは第0段階あるいは第1段階(PoC疲れ)でとどまってしまうケースも実際は多いです。初めから大きな目標を設定せず、小さい成功を積み重ねつつ、仕様や設計の変更があることを前提とした開発を推進していくことがより大きな成功に近づきます。
また、PoC貧乏にならないように部門を横断して対話しながらプロジェクトを進めるアジャイル、スクラム導入といった開発手法(後述)を活用しながら進める手法も考えられます。

出典: IoTの仕組みと技術がこれ一冊でしっかりわかる教科書

 

IoT(DX)プロジェクトに関連する代表的なフレームワーク

IoTプロジェクトを企画・推進するためには、戦略やマーケティングに関する知識が必要です。 まず、マイケル・ポーター氏によって開発されたフレームワークツール 「ファイブフォース分析」を説明します。
ファイブフォース分析は、所属する業界の競争要因を以下の5つに分類・分析することで、業界の収益性や魅力、特徴を知ることが可能です。それにより、経営者が効果的な経営・マーケティング戦略を打ち出す際に、自社にとっての 機会や脅威を明確にできます。

出典: IoTの仕組みと技術がこれ一冊でしっかりわかる教科書

IoT(DX)のためのバリューチェーン

「バリューチェーン」とは、事業活動を機能ごとに分類し、どの部分(機能)で付加価値が生み出されているか、競合と比較してどの部分に強み・弱みがあるかを分析し、事業戦略の有効性や改善の方向を探る手法のことです。1つの製品が顧客のもとに届くまでには、さまざまな業務活動が関係します。
IoT(DX)製品やサービスを作っていくうえで、バリューチェーンに基づいた企業内部の組織活動が必要となります。
・主活動
『購買物流』、『製造』、『出荷物流』、『マーケティング・販売』、『サービス』
・支援活動
『全体管理(インフラストラクチャー)』、『人事・労務管理』、『技術開発』、『調達活動』

出典: IoTの仕組みと技術がこれ一冊でしっかりわかる教科書

 

プロジェクトマネジメントとは

プロジェクトマネジメントとは、具体的な目標や完了が定義された計画(プロジェクト)を遂行するため、人材・資金・設備・物資・スケジュールなどを調整し、各工程の進捗状況の把握や管理を行うことです。方法論として体系化されており、その1つとしてアメリカの非営利団体PMI (Project Management Institute)が 発行する「PMBOK」(Project Management Body Of Knowledge)と呼ばれる知識体系が世界中に普及しています。QCD (Quality、Cost、Delivery)を目標に達成するための方法論が述べられています。

出典: IoTの仕組みと技術がこれ一冊でしっかりわかる教科書

プロジェクトマネジメントの作業工程を定義した「5つのプロセスグループ」 と、マネジメントする際の手段・方法を説明した「10の知識体系」に関して説明されています。

 

プロジェクトマネジメントの心得

IoT(DX)プロジェクトを進めていくうえで、問題(インシデント)が発生しないケースはほとんどありません。プロジェクトマネジメントは日々発生する問題や、 状況の変化に対して、何を優先して対応すべきかを即時に判断しなければなりません。そのためには日々のマネジメント活動で、プロジェクトの最新状況を把握しておき、プロジェクトをゴールに導くため適切な決断が必要です。

 

開発手法とは

開発手法とは、開発工程を構造化し、計画・管理していくためのフレームワークのことです。システムや製品を開発するには、いくつかの開発手法が存在しています。それぞれに長所と短所が存在するため、プロジェクトに応じて最適な開発手法を用いることが重要です。ここではIoT製品の開発に使用される代表的な開発手法に関して説明しています。

出典: IoTの仕組みと技術がこれ一冊でしっかりわかる教科書

 

スキル管理と人材育成について

IoT製品開発には幅広いスキルと多くの企業の連携が必要となっています。IPA(情報処理開発推進機構)がITSSやETSS、UISSといった各分野におけるスキル標準で企業によっては、これらのスキル標準を参考に業務を実施しています。

また、IoT(DX)を実現推進するには、幅広い分野の知識や活動が必要です。1社だけでプロジェクトを実施するのは困難な場合が多くあります。そのためにさまざまな企業が集まり、目標に向かって一緒に開発するなど企業間連携が積極的に行われています。

最後に、スキル管理とは、従業員が持っているスキルを可視化して、社内で共有の情報として確認できる状態にすることです。スキルを管理することで、誰がどのようなスキルを保有しているかを可視化でき、その人に何ができるかが明確化されます。また、従業員の不足部分も可視化されます。これにより、今後どのような目標を掲げていけばよいかといった課題の抽出も可能となります。

 

マネジメント、戦略、リソースのクリアがIoT成功へ

プロジェクトコントロール=マネジメント面、フレームワーク=戦略面、スキルや人材=リソース面をクリアしていくことでIoT(DX)プロジェクトをより成功させることが可能となります。

 

最後に

私はコンサル会社に所属する傍ら、IoTだけでなくDX全般における勉強会をConnpassにて開催しています。またYouTubeの動画配信も行っています。経営層から現場の方までDX推進におけるヒントや現場の問題解決まで、聴けます。今後も随時開催して参りますので、是非お気軽にご参加いただけますと幸いです。

 

<次回ご案内>
【第3回】FIX(福岡DX)「40歳でAIエンジニアなった話」 2021/9/29(金)開催
https://fix.connpass.com/event/225007/


<Youtube配信中>
【第1回】FIX(福岡DX)「RPAの本質とトレンド」 2021/6/7(月)開催
https://www.youtube.com/watch?v=-feYIvCsNpw
【第2回】FIX(福岡DX)「今さら・今こそAI入門」 2021/7/9(月)開催
https://www.youtube.com/watch?v=DYTw7_FUa4k

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筆者紹介

総合コンサルティング会社勤務 テクノロジーコンサルタント 陣 宏充
(日本ITストラテジスト協会 理事)
SI経験・DX(IoT/AI/xR/RPA)・新規事業開発経験を活かし、先端的なDigital技術活用によるBPR支援に従事。福岡市在住。


「IoT しくみと技術がしっかりわかる教科書」 技術評論社
■講師、講演歴
・ロボット・IoT専門人材育成 講師(IoT推進ラボ)
・ET&IoT West(ナノオプトメディア)
・FukuokaIntegrationX ファシリテータ(FIX事務局、福岡市IoTコンソーシアム)
・IoT Business Transformation講師(福岡市IoTコンソーシアム)
・IoT検定・IoTリテラシーWG講師(福岡市IoTコンソーシアム)

【主な著書(いずれも共著)】
「IoT しくみと技術がしっかりわかる教科書」 技術評論社

【講師、講演歴】
・ロボット・IoT専門人材育成 講師(IoT推進ラボ)
・ET&IoT West(ナノオプトメディア)
・FukuokaIntegrationX ファシリテータ(FIX事務局、福岡市IoTコンソーシアム)
・IoT Business Transformation講師(福岡市IoTコンソーシアム)
・IoT検定・IoTリテラシーWG講師(福岡市IoTコンソーシアム)

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