- 目次
- 「自分、たいした事ないですから」って思っているのはあなただけ!?
- IT屋のスキルは活きる!
- 「価値は相手が決めるもの」~自分を無価値と思うなかれ
「脱情報システム部門」「SE不要論」などが騒がれ始め、私たちIT人材を不安にさせています。油断大敵、しかし過剰な心配は無用です。たとえ情報システム部門がなくなろうとも、SEなる職種が消滅しようとも、私たちが培ったスキルは、非ITの現場で間違いなく活きます。
この連載では、SEおよびシステム管理者のスキルがIT以外の現場でどう活きるのか?ひいては、IT業界のブランド価値をどうあげていくかをお話しします。
「大丈夫。SEは死滅しない!」
1. 「自分、たいした事ないですから」って思っているのはあなただけ!?
「自分のやっている仕事なんて、たいした事ないですよ。毎日、中国にいるスタッフに指示を出してシステムの運用業務を回しているだけですから…」
とあるキャリアデザイン研修にて、受講生の30歳の男性(運用SE)が発した一言です。
異なる業種や職種の人たちが集う、異業種交流型のキャリア研修。ところが、この一言が他の受講生の目を惹きます。
「凄いですね。グローバル化が進んでいますね!」
「海外のメンバーと協業できているなんで、凄いじゃないですか。マネジメントのコツが知りたいです」
「うちの会社はできていないんですよ。相談に乗ってください」
他業界、他業種の人たちから大絶賛!
よくよく考えてみれば、今時の運用SEってけっこう凄いことをやっているのかもしれません。海を越えた、中国のメンバーと日々協働している。業務設計スキル、コミュニケーションスキル、マネジメントスキルがなければ成り立たないでしょう。
その運用SEさん、「自分って、けっこうイイことやっているんですね!」と輝いた表情で帰られました。
2. IT屋のスキルは活きる!
運用SEやシステム管理者にとどまらず、プロジェクトマネージャや営業も含め、私たちIT業界の人たちって、結構イイことやっています。(かなりイイ線いっていると思いますよ)
たとえば、
・プロジェクトマネジメントスキル
・(IT)サービスマネジメントスキル
・課題発見・問題解決スキル
・オペレーション設計スキル
・測定→報告スキル
これって、ITの現場では「あたりまえ」ですが、非ITの職場の人たちは意外とできていません。
私は普段、企業の現場で業務プロセス改善や働き方見直しなどのプロジェクトのご支援をしています。
非IT部門の現場で、「今後の活動スケジュール(いわゆるWBS)を書いてみてください」と指示することがありますが、非ITの人たちは驚くほどWBS書けないですよ(ほんとうに、びっくりするくらい!)。
書けたとしても、粒度が粗過ぎたり、抜け漏れが多くて見るに耐えなかったり…
また、トラブル対応の検討会などを行っても、因果関係が論理的に整理できていなかったり、「インシデント」と「問題」がごっちゃになっていたりと、けっこうハチャメチャ大混乱です。
それを、私たちIT屋がささっと整理すると大変喜ばれます。
<図1:IT屋には「あたりまえ」→非ITでは「スゴイ」に!>
IT屋にとっての「あたりまえ」が、非ITの現場で活きる余地はゴマンとあるのです。
これ、活かさないともったいないですよね!?
3. 「価値は相手が決めるもの」~自分を無価値と思うなかれ
ブランドマネジメントの世界でよく語られるメッセージがあります。
「価値は相手が決めるもの」
これはあらゆる業界に当てはまる、大事な考え方です。例を1つ。これまたITとは異なりますが、大赤字の地方ローカル鉄道を復活させた事例です。
「いすみ鉄道」
千葉県いすみ市・大多喜町を走る零細ローカル線です。この鉄道会社のポスターに書かれたキャッチフレーズがなかなか印象的です。
<図2:いすみ鉄道のポスター>
(クリックすると拡大します。許可を得て掲載。)
「ここには、「なにもない」があります。」
なかなか素敵なキャッチフレーズだと思いませんか??
いすみ鉄道の社長さん(鳥塚亮氏)は、公募で外資系航空会社から転身されたビジネスパーソン。「レストラン列車」「ムーミン列車」など、ユニークな経営でローカル線を積極的に観光資源としてPRし、赤字ローカル線を黒字経営に転換。鉄道のみならず、沿線地域も盛り上げている敏腕経営者です。書籍「ローカル線で地域を元気にする方法」も出版され、講演会や各種メディアにも頻繁に出演されている人気の社長さんでもあります。
鳥塚社長はご自身のブログの中で、就任当時のことをこう語っていらっしゃいます。
— 抜粋 (「いすみ鉄道 社長ブログ」より)–
当時、私が田んぼの中の無人駅に「お店」を作ると言ったら、地元の人たちは散々バカにしました。
「こんなところに店を作って誰が買いに来るのか?」
「観光客が来ますよ。」
「観光客? 来るわけないだろう、こんなところに。」
地元の人たちは、自分たちが住む町を「こんなところ」と思っていたのです。
——
自分たちが住む町を、地元の人はつまらなくて価値のないものだと思ってしまっている。 第三者から見れば、とてもすばらしい観光資源があるところなのに!
いまや東京など、地域外から連日たくさんの観光客が訪れ、いすみ鉄道は賑わっています。
「価値は相手が決めるもの」
IT屋の価値もまた、相手(IT業界以外の人)に決めてもらえれば良いのです。
冒頭の30歳運用SEのエピソードで言うならば、「海外(中国)のメンバーに指示して運用業務を回しているって価値あることなんだ」。これは、中国の人たちとの協働が「あたりまえ」であるIT運用の現場に籠っていては気づくことはできません。
私たちIT屋には、非ITの人たちと交流して、会話して、自分たちの価値を見つけてもらう工夫や努力が少し足りないかもしれませんね。特に運用を生業としている人たちは、「どうせ目立たない業務」と自分たちを卑下している傾向にあるようです。
仕事そのものは目立たなくても、マネジメントの取り組み自体は他業界・他業種で感謝される素晴らしいものです。どんどん外に出て、私たちの取り組みに日の光を当てて、価値を決めてもらいましょう!
今回はここまでです。
第2回以降、「サービスマネジメント」「課題発見・問題解決」「オペレーション設計」など、システム管理者のスキルが非ITの世界で実際にどう活きるのか? 私たちはどうやって生き残っていけば良いのか? に迫ります。
「大丈夫。SEは死滅しない!」
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