- 目次
- 測定→報告→改善は、サービスマネジメントの基本。だけど…
- 非IT企業の管理部門の改善事例
- 世の中「働き方改革」ムードで盛り上がっているものの…
1.測定→報告→改善は、サービスマネジメントの基本。だけど…
『定義できないものは、管理できない。 管理できないものは、測定できない。 測定できないものは、改善できない』
改善の祖であり、PDCAサイクルの産みの親でもあるウィリアム・エドワーズ・デミング博士のこの言葉は、私たちIT管理者には大変馴染み深いものでしょう。
私たちは日々、当たり前のようにITサービスを測定し、月次・四半期単位・年次などの周期でサービス報告をしています。
・サービスレベル違反件数
・インシデントの発生件数、クローズ件数
・サービス停止の回数、停止時間(復旧までに要した時間)
・リリース件数、成功件数/手戻り件数
・メモリ使用率、CPU負荷
・ディスクの空き容量
・トラフィックの状況
・特権IDの発行履歴、マシン室の入退室履歴
・情報セキュリティ教育の実施件数、受講者数
…などなど。
何を測定・報告するかは、そのサービスの特性や組織のポリシ、あるいは過去どんな「痛い目」を見たかなどの経験に拠ります。
この測定結果、報告結果をもとに、私たちはサービスの改善を検討します。
システム管理者にとっては、あたりまえの測定→報告→改善の基本動作。これまた、非ITの現場では意外とできていません。
【図1】改善の基本サイクル(クリックで拡大)
私はIT/非IT、さまざまな業界のさまざまな現場の業務改善や働き方見直しをお手伝いしています。初回の打ち合わせで、メンバーに皆さんに業務上の悩みを聞いてみると…
「ユーザからのイレギュラーな要望がたくさん」
「年度切り替え時期の、トラブルが多い」
「申請書の提出期限を守らない人が多い」
「業務量が多くて、人手が足りない」
こんな問題・不満が噴出します。ところが、いざ定量的な説明を求めると…皆、そろって口を閉ざしてしまう。
「どのくらい多いかと聞かれても……ううん、分かりません」
これでは、改善しようにも、組織としてどこにどう手をつけるべきなのか、上位者や関係者とそもそも合意形成ができませんよね。
2.非IT企業の管理部門の改善事例
問題を「問題化」するには、そして改善に向けて一歩進めるには、現状を測定して→報告する。この取り組みは、どんな職場であっても欠かせません。
ある大手企業の営業管理部門(およそ30名の部隊)では、非IT部門でありながらサービス測定→報告の活動を開始。成果を上げています。
この部門は、「属人化」「付加価値を出せていない」「モチベーションが低い」などの問題を抱えていました。
常にオペレーション業務に追われていて、なかなか改善活動にも手が回らない日々。なんとか突破口を見出したい。
そこでITサービスマネジメントの考え方を導入。まずはサービスカタログを作り、現在行っている業務内容を定義(リスト化)。さらに、各業務のサービスレベルを定義し、達成度合いや業務量(件数)などを測定することに。報告フォーマットを決めて、毎月実績を上長に報告を開始。すなわち、サービス測定→上長への報告を月次のサイクルで回すようにしました。
併行して、インシデント管理・問題管理の仕組みも整備。日々発生する、トラブルやもやもや、突発オーダーなどはインシデント化し、チームで共有し、チームで対応方針を協議し、チームで対応できるようにしました。もちろん、インシデントの発生件数や対応状況も、サービス測定の対象に。月次で定量化し報告し、改善につなげています。
【図2】(クリックで拡大)
「助け合う(合える)ようになり、チームの結束が強まった」
「改善活動の効果が数字で見えるようになった」
「チームの繁忙状況や問題点が可視化された」
半年後、メンバーからはこんな声が聞こえるように。測定→報告の成果を実感しています。
いま、メンバーはさらなるチーム力強化を目指し、ナレッジ管理に取り組んでいます。
【図3】(クリックで拡大)
3.世の中「働き方改革」ムードで盛り上がっているものの…
いま、世の中では「働き方改革」が大きな話題になっています。今国会の重要議題でもあり、最近では「働き方改革」という言葉を見聞きしない日はありません。
ところが、企業で行われている取り組みは「残業禁止」「有給休取得促進」など、制度でもって強制的に目先の労働時間を減らそうとするものばかり。結局、「個人の気合と根性で残業しないよう工夫しなさい」と、個人依存の構造はなんら変わりません。
本質的に働き方を変えるためには、その組織において「何が問題で?」「何が無駄で?」「何を改善すべきか?」を、組織レベルで合意して改善しなければなりません。
「これが問題だ」
「あれは無駄だ」
「ここは、改善すべき」
単なるメンバー個人の感覚ではなく、組織の合意にもっていくためには。そこから、組織ぐるみの改善の動きにつなげるためには、実態の定量的な把握、すなわち測定→報告が命。
ほんとうの働き方改革を進めるためにも、私たちシステム管理者が主体的に、測定→報告→改善を非ITの現場にも広めていきましょう!
今回はここまでです。
次回は連載最終話。「羽ばたけ、システム管理者!」と題し、システム管理者が強く生き残るための3つのスキルについてお話します。
「皆さん、ITサービスマネジメントができるって凄い事です。自信もってください!」
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