現場で役立つ文書作成のポイント

第2回 こんなビジネス文書は失敗だ

概要

現代人が社会生活を送るうえで(特にビジネス活動を実践する場面)、文書は「人と人とを繋ぐ重要なコミュニケーション手段」であり、時によっては、「意思決定手段」でもあります。
ビジネス文書を作成する際にも「文は人なり」と誤解し、自分の世界に埋没したような「文」を作成するケースが多々見受けられます。しかし、ビジネスの場面では、「文書」は上記のように重要な位置付けを担いますので、論理的に構成され、結論が明確に表記されたものを作成する必要があります。
当ページでは、社内現場で役立つ「文書作成」の基本をシリーズで掲載し、読者の皆さんが、ホンモノの文書作成力を身につけるポイントを提示いたします。

こんなビジネス文書は失敗だ

ビジネス文書を書く上で最も大切なことは、何でしょうか??
それは、文書の正確さです。たとえ、文章表現が豊かであっても、内容が間違っていたら、その文書には価値がありません。
しかし、文書が正確であっても、その文章に価値がないこともあります。それは、文書を書く人自身が、自分が伝えたい内容を明確にわかっているかどうかにかかっています。いくら正確であっても、伝えたい内容がなければ意味をなさない点を認識しておく必要があります。
今回は、文書の基礎となる文章の正確さについてふれます。
 

不正確な文章とは、正確さとはなにか

不正確な文章には、いくつかのパターンがあります。整理しますと
  1. 事実と意見との混同による不正確さ
  2. データの不正確さ
  3. 用字・用語の不正確さ
  4. 観察状況とその表現の不正確さ
  5. 文法の不正確さ
  6.  
に分けられます。これらをなくすことにより、正確な文章が作成されます。
 

1.事実と意見との混同による不正確さ

「事実」とは、「現実に起こり、または存在する事柄。本当のこと」と辞書には説明されています。 文書を書く場合に注意しなければならないことは、事実を主観的な「意見」と混同してしまうことです。文章において、書き手が事実と意見を混同すると、読み手が判断を間違えてしまう危険性があります。事実について述べる場合には、事実であることの確認を必要とします。その分野で認められた人の論文や文献、社内資料等を参照したり、自分自身で経験して他人が客観的に事実を認識できるようにしたり、実証を行ったデータで示す、などの方法をとる必要があります。
 

2.データの不正確さ

データは、文章の正確性を裏付ける重要な証拠です。不正確なデータが混在した文書はそれだけで価値がなくなります。
 
データの不正確さは、データ収集の方法が間違っていたり、集計が間違っていたり、分析の方法に間違いがある、などによって生じることもあります。データは客観的なもので、データ自身が勝手にかわることはありません。データが不正確になるのは、ほとんどが以下のような書き手の不注意によって引き起こされるものです。
 
  • 間違ったデータを確認せずに利用した
  • センチメートルやメートルなどの単位を間違った
  • 数値を大きな単位で丸めた
  • 他とデータと取り違えた
  • 校正を重ねるうちに古い版を使ってしまった
 

3.用字、用語の不正確さ

「用字」とは、「文書の中で、ある言葉を表すのに用いる文字や文字の使い方」をさします。
 
「用語」とは、「文書の中で、使用される言葉で、特に、ある人や分野などにもっぱら用いられる字句と術語」をさします。ビジネス文書では、適切な用字・用語を統一して使うことが基本となります。
 
では、何をもって用字・用語が適切かどうかを判断すればよいのでしょうか。基準は何に求めえればよいのでしょうか。
公式的には、
 
  • 常用漢字表(昭和56年内閣告知・訓令)
  • 現代仮名遣い(昭和61年内閣告知・訓令)
  • 送り仮名の付け方(昭和48年内閣告知・訓令 昭和56年一部改正)
 
の3つの内閣告知・訓令があります(詳細は、文化庁のホームページを参照ください)
 

4.観察状況とその表現の不正確さ

理論をつくりあげていくには、まず、「見る」行為から始まります。何度も「見る」ことから「観察」が行われます。「観察」の結果から「洞察」が行われ、「洞察」の結果から最後に「理論の確立」 に至ります。ビジネス文書は、この一連の流れの最後に位置し、「理論」や「洞察」について記述するものです。その前提として正確な「観察」が不可欠です。
 
「観察」の状況を明確にするためのチェックシートの項目を以下に示します。
 
  • 観察項目
  • 観察期間
  • 記録の間隔
  • 数値データの単位
  • 記録精度
  • 担当者と責任者
  • 観察者の意見欄
  • 記録媒体
 

5.文法の不正確さ

文法上の間違いを引き起こしやすいのが、同音意義語です。日本語には同音異義語が沢山あります。これを間違って使用することにより、意図した文章とは異なる意味の文章が作成されてしまいます。
 
誤用を避けるためには、辞書を参照されることをお勧めします。
 

文書を書く上でのマナー

法律上の制約やマナーについて以下の項目に分けて、簡単に紹介します。
 

1.著作権

著作権は、知的財産権(知的所有権)のひとつです。
著作権についての詳細な説明は、他の書籍やホームページに譲りますが、ビジネス文書を書く上での基礎的な知識ですので、是非勉強されることをお勧めいたします。
 

2.引用と転載

インターネット上のホームページの増加とともに著作権に関する諸問題が指摘されています。特に引用と転載についての話題が注目されています。
 
引用と転載についてですが、無断引用は合法で、著作権者は引用を拒否することはできません。逆に無断転載は複製にあたり違法になります。
 
違いは、引用」とは、すでに書かれた言葉の一部を引き合いにだして自説を補足する形で使用することです。「転載」とは、文の全体もしくは一部をそのまま自分の資料に移して記載することです。この両者の違いをしっかりと覚えておく必要があります。
 
 
以上、文書の基礎について、整理してみました。このような条件が満たされない文書は、「ビジネス文書として失敗である」と認識していただければと存じます。
 
次回以降は、以下の内容を予定しています。
  • 文書構成方法、構成案の具体的作成法
  • わかりやすい文書とは
  • 文書の内容を深めるためのテクニック、練習法
  • 文書レビューの方法
  • RFP(見積要求仕様書)の書き方、テクニック
  • 社内企画書の書き方、テクニック
  • 業務報告書の書き方、テクニック
  • 詫び状の書き方、テクニック
  • メールの書き方 テクニック

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筆者紹介

株式会社ビーエスピーソリューションズ

運用プロフェッショナルサービスグループ

佐藤陽一

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