現場で役立つ文書作成のポイント

第7回 文書レビューの方法

概要

現代人が社会生活を送るうえで(特にビジネス活動を実践する場面)、文書は「人と人とを繋ぐ重要なコミュニケーション手段」であり、時によっては、「意思決定手段」でもあります。
ビジネス文書を作成する際にも「文は人なり」と誤解し、自分の世界に埋没したような「文」を作成するケースが多々見受けられます。しかし、ビジネスの場面では、「文書」は上記のように重要な位置付けを担いますので、論理的に構成され、結論が明確に表記されたものを作成する必要があります。
当ページでは、社内現場で役立つ「文書作成」の基本をシリーズで掲載し、読者の皆さんが、ホンモノの文書作成力を身につけるポイントを提示いたします。

文書レビューの方法

ビジネス文書のレビューとは、文書を正確に分かりやすく書かれているかどうかを見直し、精査することです。
今回は、ビジネス文書のレビューをなぜ行うのか、どのように行うのか、それはどのような効果をもたらすかについて紹介します。
 

レビューの目的

レビューを行う場合には、その目的を理解しておかなければなりません。およそ次のような目的を念頭に置いておくべきです。
  1. 記述漏れや記述間違いを防ぎ、品質を向上させる
  2. 計画通りに作業が進むようにする
  3. (1.に関して)コストの増加を抑制する
  4. 参加者の認識ずれを合わせる
  5. 文書力を向上させる
    1.  
企業によっては、これ以外の目的をレビューに持たせることもあるでしょう。その場合でも、あらかじめ目的を書き出し周知徹底させておくことが必要です。
これらの目的をあいまいにしたままレビューを行うと
 
「レビューよりのその後の作業を優先したくなる」
「文書の作成者の人格を否定したような罪悪感にかられる」
「レビューが形式化する」
 
といった弊害が生じ、何のためにレビューを行うのかという疑問は、レビュー参加者の懐疑的な姿勢として現れます。結果としてレビュー自体の効率が落ちます。レビューの目的を当時者全員が理解しておくことは必要不可欠です。
 

レビューの具体的方法

1.レビューの範囲

レビューの範囲は、そのプロジェクトが開始されるきっかけとなった提案書・起案書等から始まり、実施計画書のレビューを経て、実際の実行局面までです。 
 
  • 提案書・起案書等レビュー
    提案段階を含むプロジェクト開始直前から実施計画までの局面で、提案書・起案書等の妥当性をレビューする
  • 実施計画書レビュー
    実施計画に矛盾がないことを確認し、計画の実現可能性をレビューする
  • 実行局面レビュー
    各局面における品質を確認し、問題の早期発見と的確な対応策が設定されているかをレビューする
 

2.参加者と役割

レビューに参加するメンバは、プロジェクトの規模によって変えるようにします。
 
 

3.レビューの視点

レビューの視点は次のようなものになります。 
 
  • 記述内容が正確であること
    a.必要な情報が漏れなく記述されていること
        書くべき項目について、漏れなくデータ収集しているか
        収集したデータについてを、文書の目的の観点から記載の要/不要を明確にしているか
        記述内容の範囲が明確になるように、目次も含め内容ないようの構成を構造化しているか
        参照した情報やデータの出典を明示しているか
        裏付けとなるデータや詳細な原始データを必要に応じ添付しているか
    b.必要な情報を正しく伝えていること
        内容は5W1Hの観点に合致しているか
        ワープロの変換ミスなど、誤字・脱字がないか
        数値データについては、その精度も含めて十分に確認しているか
  • 表現は分かりやすく簡潔にすること
    a.利用者の立場で読みやすく書くこと
        文書は短めにし、句読点の使い方も工夫しているか
        理解を助けるため、絵、図表、例を極力取り入れているか
        技術用語/専門用語について用語集を添付しているか
    b.記述方式が統一されていること
        構成、体裁は統一されているか
        項番の振り方を統一しているか
        文体を「である」または「です」調に統一しているか
 

レビューの効果

レビューの目的は、作成される文書の品質の向上です。従って、レビューの最大の効果とは、その後に実施される業務の品質の維持となります。
ただし、忘れてはならないのは、レビューの投資対効果です。
レビューには、資源が必要です。人的資源・コスト・会議室などの空間・紙などの資源を消耗します。
これらの資源が、どの程度の経済負担になるのかについて、念のため触れておきます
  • 人的資源
    レビューには高度の専門家が参加します。これらの人がレビュー参加しなければ、他の作業の推進に貢献できます。レビューに参加する分、作業は遅れます
  • コスト
    主に人件費です。平均的な時間単価を4000円とし、レビューに10人が参加して8時間を費やせば、32万円が投下されることになります
  • 設備・備品
    会議室は1日利用すると約5万円必要です。備品も紙などを含めて3万円ほど必要になります。
これらを合わせると、1日レビューを行うだけで40万円ほどの金銭的コストとなります。非金銭的コストを含めるとさらに大きくなります。これだけのコストを投下するわけですから、得ることが多い、レビューを実施したいものです。
 
 
 
次回以降は、以下の内容を予定しています。
  • RFP(見積要求仕様書)の書き方、テクニック
  • 社内企画書の書き方、テクニック
  • 業務報告書の書き方、テクニック
  • 詫び状の書き方、テクニック
  • メールの書き方 テクニック
  1.  

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筆者紹介

株式会社ビーエスピーソリューションズ

運用プロフェッショナルサービスグループ

佐藤陽一

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